イベントレポート詳細Details of an event

第100回 AGC Studio Design Forum
「日常の体験を変えるガラスデザイン」

2019年1月17日(木)
講演会/セミナー

藤原 そうですね(進め方や考え方の違いを感じた)。私は当初、特殊な性質を備えたワインボトルを提案して、それを採用いただき協創プロセスに進むことができました。ワインのボトルにその性質を持たせるのは、ワイン特有の消費行動に基づき、ワインユーザーが求めるはずだ、とワインの消費者の目線で発想したもので、ワインのボトルとして実現するからこそ意味があると思っていました。一方、AGCさんからは「ワイン瓶でのニーズは確かめますが、他に広がりはないか、まず調べてみましょう」というメッセージが来たわけです。そういうやり取りをテキストのチャットでしていました。一旦は「ああ、開発の発想というのはこのように進めるものなのか」と納得した気になりました。ですが、先ほど「文字だけだと深読みしてしまう」という話もありましたけれど、私も文字面を何度か読み返しているうちに深読みし「AGCの担当者がこういうことを仰るのは、ワイン瓶だと市場規模が小さすぎるから、例えば医薬品とか違う飲料など、より大きな分野に広げたいと考えてのコメントなのではないか」と勝手に想像して悩んでしまいました。そのような意図ではなく、「この特性は、多様なガラス製品の中でどこにニーズがあるかな、どこなら売れるかな」と一度広く考えた後で深掘りしていくのが開発の方々の通常の考え方なのだ、と改めて納得するまで時間がかかりました。

 

会場にいた藤原さんのAGC担当者 この時は、Wemakeさんから「藤原さんは、もっと転がしたら、より違うヒットを出してくれるんじゃないか」みたいな提案があり……。

 

藤原 そうとも知らず、私自身は「このワインボトルはいける!」と意気込んでいたところ、「もっと広く洗い出して、どこに可能性があるか考えてみましょうよ!」と言われて「つまり、ワインボトルじゃダメってことかな」と勝手に思ってしまった。どんどん深読みした挙句「ということは、私は辞退させてもらったほうがいいのでしょうか」とメールしてしまい「いやいや、やる気がなくなったのでなければぜひ、やってください」と返信がくる。そういう(異なる思考プロセスの人同士が文字のみで意思疎通してかみ合わないという)不毛に思えるようなやり取りで1ヶ月を費やしてしまいました。一次審査から最終審査まで2ヶ月しかないにも関わらず!(笑)。そうやって(アイデア自体の議論以前に、主に考え方や進め方について議論を重ねて)1ヶ月経った後に「いよいよ、ワインボトルのニーズをきちんと確かめよう」となって、結果「ニーズはいまいち」、実現方法も「ちょっと難しいかなぁ」となって、頓挫。残り1ヶ月で別のアイデアをゼロから考えなくてはいけなくなったのです。その後の大変さも貴重な経験になりましたが(笑)。

 

磯村 最初はどのような考え方の違いがあるのかすらわからなかったのが、違いがわかるようになって、最終的には、ある程度同じような考え方をするようになったのですかね?

 

藤原 どうでしょうかね。(違いに気づき理解するまではその通りだが)同じ考え方はやはり持てないと思います。ただ、目指すべきゴールに向けて、コミュニケーションを密にとるようになったので、進め方に関しては合意できました。毎週のように1時間のディスカッションをして「こういうふうに進めていこうね。何故ならば、こうだから」と話し合うようになったおかげで後半は同じような目線合わせができたような。ただ、同じ考え方やものの見方に立てるかというと、そこは、むしろ違ってないといけない部分もあると思います。(それを感じた出来事として)「来週までに新しいものを出さなきゃいけない」「せっかく7人の候補に選んでもらったのに、降りてしまっていいのか」というプレッシャーや「私が諦めると、社員さんは私に付き合った結果1ヶ月の貴重な時間を費やしたことになってしまう(笑)」という責任感で、切羽詰まって1000本ノックみたいに「こんなガラス」「あんなガラス」とアイデアを出し続けた時期があった。すると「これは既に世の中にあります」「発想はいいかもしれないけれど、技術的に実現できません」などと答えられてボツ(笑)。ガラスの知識が全くないのに、やみくもに「ガラス、ガラス」と考えても、当然(そのようなガラス起点の発想にかけては)社員さんには及ばないのです。(知らず知らずのうちに自分がガラス起点の発想に寄ってしまい)、最初に「任せて!」と言っていた時の消費者目線が完全に吹っ飛んじゃって、(これではオープンイノベーションの)意味がなくなる。「ガラスの冷蔵庫どうですか?」「ガラスのトイレどうですか?」「ガラスのリモコンは?」と、そんな感じになってきてしまうのです(笑)。出してはボツ、出してはボツの繰り返しでした。その時に「そもそも何でワインボトルを思いついたのか?」と指摘されたんです。それによって再び、消費者目線に立ち返り、ガラス発想から離れられた。消費者目線という自分の立ち位置をしっかり維持すべきだったと反省しました。

 

磯村 すごいドラマがあったんですね。違いを生かしながら同じものを作る、というのが大事なんですね。ということで、一次審査からそれを改善していく、ブラッシュアップしていく過程でいろんなご苦労があったんですね。江藤さんの心情にも「自分もAGC」と書いてありますけれど、これはどういうことなんですかね?

 

江藤 それは先ほども話したように、テレビ会議で親近感が生まれ、自分もAGCの社員みたいな気持ちになっちゃうんですね(笑)。だから、しっかりと責任を持って提案しないといけないと、洗脳されました(笑)。

 

磯村 そういう会社じゃないんですけれど(笑)。一緒にやっていくとアイデンティティが変わっていく部分もあると思いますよね。あと、最終審査の段階のところで三宅さんの「これでいいの?」という心境が書かれていますけれど、ちょっと詳しく話してもらえますか?

 

三宅 最終審査ではCTOとか、そういうお偉いさんに審査してもらうわけです。そうやって上層部で決めたのだから(きちんと開発する)お金をください、と(笑)。僕らは、江藤さんや藤原さんと一緒に考えて「このアイデアだったらいけそうです」とか報告して、やっている自分自身が「偉い人たちはこれで、うん、と言うのだろうか?」と半信半疑なんですよ。と言うのも通常の仕事でいろんな提案をしているのですが、「ボロカスに」(笑)、ダメ出しされて潰されるのがほとんどです。だから、本当にいけます、いいですよ、と言って置きながら、本当に通るのか、と(笑)。

 

磯村 そんなにボロカスに言う会社じゃないんですけれど(笑)。それは結構重要な話だと思います。なぜなら、自分たちの会社の内部からは出てこないアイデアを欲しいから、やっているわけですよね。一方、最終的にそれを審査するのは、会社の価値観を代表するような人たちなんで、それでいいのかと思っていたんですね。どうなんですかね、審査する人が、これまでのAGCの価値観で審査、判断するというのが、本当にいいのか。

 

三宅 ねぇ(笑)。良くないかもしれないと思ったところで、やっぱり会社員ですし(笑)、お金出すの会社だし(笑)、できないというなら、そのアイデア持ってベンチャーを立ち上げればいいじゃん、みたいな気持ちで、実はやっていたんです(笑)。

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