イベントレポート詳細Details of an event

第100回 AGC Studio Design Forum
「日常の体験を変えるガラスデザイン」

2019年1月17日(木)
講演会/セミナー

金森 香氏 株式会社ロフトワーク AWRD編集長

 

江藤 太郎氏 Wemake応募クリエイター 造デザイン代表

 

藤原 真紀氏 Wemake応募クリエイター マーケティングプランナー

 

三宅 徳顕氏 AGC株式会社商品開発研究所主幹研究員/協創アクセラレータ

 

ファシリテーター
磯村 幸太氏 AGC株式会社

*文中敬称略

 

磯村 みなさんこんばんは。今日はAGC Studioデザインフォーラムの、何と100回目になります。たまたまそういうタイミングになったのですが、長く続けていると、こういうこともあるのだという感慨があります。
 さて、今回のテーマは「日常の体験を変えるガラスデザイン」であり、「ユーザーイノベーションを考える」という副題を付けています。新たに取り組んだプロジェクトでできたプロダクトというよりも、それをどうやってつくっていくのか、というプロジェクトの話が中心になります。もちろん、そのプロダクトについても、ご要望があれば紹介したいと思います。

 

 まず、このイベントの背景をお話しさせていただきます。ここの絵にあるように、「ある日、AGCの開発者・三宅は思った……」。三宅というのは、その左端にいる者です。三宅は「日常の体験を変えるガラスを作りたい」と。なぜかはわからないけれど、突然、思ったらしいのですね。この「日常の体験を変える」とは、どういうことかをよく考えると、「ユーザーと一緒に作るのが一番だろう」と思い当たります。そういう考えから「GLASS INNOVATION CHALLENGE」というプロジェクトが始まったのです。これは、新製品のアイデアをユーザーから募集して協創する、というものです。今、AGCは色々な方たちとコラボレーションをしておりますが、その中でも「ユーザーの方々と一緒につくって行こう」という、ワクワクする取り組みです。

 

 さて、このプロジェクトを終えてまた三宅は思いました。「ユーザーとのより良い協創のやり方、進め方は、どうなんだろう?」と。今回の活動について、非常に良かったと感じており、それをさらに良くするにはどうすればいいのか、と思い、みなさんと一緒に考えてみたい、と。おそらく、みなさんも、今の自分や、自分が属する組織と異なる立場の人たちとコラボレーションする機会が結構増えているのではないかと思うのです。どうですかね? 抽象化すると(画像を提示しながら)、こういうことかなと思います。今日は、ユーザーの方々と一緒に、協創について考えていこうと思います。

 

 さて、「日常の体験を変えるガラスデザイン」と言いながら、今日のテーマは「みんなで考えるユーザーイノベーション」としています。「ユーザーイノベーションって何?」と思うかもしれませんが、簡単に言うと「ユーザーと協創すること」です。フォーラムの進め方として、本日は立場の異なる3者が出てきます。企業と、ユーザーと、それを繋ぐプラットフォームです。まずは、この3者の視点で話を聴いていきます。それから「ぶっちゃけトーク」と記していますが、今回の具体的な例を通して、裏話や大変だったことなどまで話し合って共有したいと思います。

 

 冒頭に申し上げましたが、今日はプロダクトの中身というよりは、プロジェクトの進み方の話になります。まずは「ユーザーイノベーションとは何か」について少し触れておきます。ユーザーイノベーションというのは、ユーザーの課題に対して、製品サービスを、ユーザー自らが改善して改良する、という活動になります。いろんな活動があるオープンイノベーションに対して、ユーザーと取り組むオープンイノベーションという位置付けになります。これがなぜいいのかというと、多様なユーザーは専門家とは異なる問題や解決法を持っている。視点が違いますので、そこから見える風景が専門家と違う。そこから新しい価値が出てくるかもしれない、と。そんなところに可能性があるのだろうと思います。これに関連する研究「ハーバート・ビジネス・レビュー」にある、2004年の研究ですが「多様性はイノベーションの源泉」というタイトルになっています。この図にあるように、縦軸がイノベーションの価値、横軸が参加者の専門分野の多様性です。黒い点々が、出てきたアイデアをプロットしている図です。右へ行くほど、つまり多様な人たちの数が増えるほどに価値あるイノベーションが出てくる可能性が高まる、ということです。ただ、この赤いラインに注目して欲しいのですが、価値の平均値は、多様性が増すほどに下がって行くのです。一方、左側は専門家集団なので、専門知識を持ち、(多様性が乏しくても、)それなりの知識もあり、それなりのアイデアをたくさん出せる。しかし、多様性が上がると、ばらつきが生じてきて、(イノベーションの価値の)平均値としては下がってくるのです。そういう研究でした。ただし、右上の丸で囲んだところに注目して欲しいのですが、(可能性として、数は少ないのですが)非常に高い価値のイノベーションは、多様性が高いほど出てくるわけです。この右上のところにいかに持って行くかが、この協創の課題なのだろうと、この研究から見えてきます。ユーザーイノベーションがなぜいいのかというと、私たち企業の人間だけでは思いつかないようなアイデアを得られる可能性が出てくる、そういうことですね。それを裏付けるようなデータもあります。こちらの図は無印良品の、家具のデータです。無印良品さんもユーザーと協創するという取り組みを積極的に行っていらっしゃいます。初年度の売上高を製品別に並べてあります。この黄色の帯がクラウドソーシングによってユーザーから出たアイデアを元に開発した製品の売り上げです。一目瞭然で、売れ筋のトップ3が、ユーザーと一緒にクラウドで考えた商品です。トップ3以外にも、右のほうにクラウドによるヒット商品が出ているとわかります。このデータが示すように、ユーザーイノベーションには大きな可能性があります。

 

 ただ一方、少し前のMITの調査なのですが、日本には(ユーザーイノベーションにつながるようなアイデアを出せる)リードユーザーが少ない、と。日本ではリードユーザーが 3.7%、100人に4人未満である、と。しかも、そのリードユーザーというのは、必ずしも自社のビジネスに関連するアイデアを出せるとは限らない、と。実際には100人に3人もいないのではないか、と。では、そうしたリードユーザーをどうやって見つけるか、と考えた結果、導かれるのがクラウドソーシングです。クラウドソーシングがリードユーザーを見つけるのに有効な手段だとして、今日はそういう事例も紹介させていただきたい。

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