イベントレポート詳細Details of an event

第101回 AGC Studio Design Forum
「スポーツする建築」 ~展覧会「鏡と天秤」より、浜田晶則 x上林功

2019年3月14日(木)
講演会/セミナー

中崎 浜田さんにもお聞きしたいのですが、ETFEフィルムを使う場合、テンションタイプとクッションタイプの2つに分けられると聞いています。浜田さんは最初に3案を考えられて、実現可能性からテンションタイプになったのですね。テンションタイプってできることが限られると思うのですが、どのような検討をされましたか。

 

浜田 色々考えている中で、アウトドアに使う折りたたみ式の椅子がありますよね、帆布などでできたディレクターチェアみたいな。布は薄くてやわらかいのに、人間が乗れるじゃないですか。あれは張力と圧縮力がうまく均衡しているからなんですよね。下向きにかかる重力を、張力と圧縮力の関係を整えることで、軽量で強くやわらかい構造で支えています。

身の回りにある身近なものですが、すごくうまくできているなと思ったんです。その長いものができないかと考えたんです。椅子のテンションを支える足はハサミのようにX状になっているんですが、それを分離させて、力の流れが明確に形として見えないような構造を作れないかと考えて、あのような形状が生まれました。

 

中崎 今回は、複数のマテリアルを使うのも条件としてありましたけれど、フィルムにガラスを組み合わせたのはなぜでしょうか。

 

浜田 フィルムに張力をはるため、脚には摩擦力をつくるための重さが必要だったので、鉄でもよかったかもしれないのですが、ガラスも比較的重い素材なんです。かつ透明であることで、一見重く見えないのに、実際はかなり重い。その違和感というか両義性という性質を使いたいと思いました。ETFEも透明なものがあるので、圧縮材も引張材も透明素材として統一し、透明なのに力の流れが感じられる構造体にしようと考えました。

 

中崎 上林さんの大空間の話で出た、水晶宮はガラスですね。

 

上林 はい、ガラスです。あの頃というか、それよりもっと前、ロマネスクの頃は大判の板ガラスがなく、ガラスを溶かした塊をロック状に削り出して、石のように積んでいたと聞きます。そのうち、円筒形にしてから削ぐ「丸ガラス」が生まれて、それらを組み合わせてステンドグラスのご先祖様みたいなものを作ったりしたようです。一方、先ほどのグレートストーブの写真をよく見ると、非常に細かい筋が入っていることがわかります。つまり、大判ガラスではなくて細かなガラスの組み合わせだった。その後も、例えばミュンヘンオリンピックの頃のものでも、できるだけ規格品のガラスを使えるような工夫をしている。それが当時の技術の限界だった。だから、今回の浜田さんのLibraを見せていただいて、これって、フィルムなんですけれど、(透明素材なので)ガラスがここまで来たか、という感慨も受けます。

 

中崎 スポーツ施設に使われているETFEフィルムは、クッションとテンションのどちらのタイプが多いのですか。

 

上林 どうでしょうか。僕の印象ではコンプレッサで空気を入れて膨らますタイプが多いという印象を持っています。チャレンジングな人があまり出て来ていないと思います。浜田さんのように新しい使い方が提案されると、今後は新しいチャレンジも出てくると思います。

 

中崎 浜田さんは今回、ガラスやETFEフィルムに加え、さらにコケを使われましたね。いわば、二つの乾燥した人工的な素材にウエットな自然素材を加えている。その意図は?

 

浜田 AGCさん的な立場でいうと、これらの素材を使えば屋内でも植物が育つよ、という意味合いが一つ(笑)。あとは、室内に苔があるという異化効果を狙っています。日常に非日常が挿入されることで、今回のハレとケのテーマを感じられるものにしました。また、ガラスも膜も透明でスケールを感じにくい素材だと思います。仮に床に真っ白なリノリウムを敷いたとすると、やや抽象的すぎるんじゃないかと。そこで苔の自然物によるスケール感を入れることで、より構造体の抽象性を際立てようとしました。人工芝では出せない、複雑性をもつ自然の苔があった方が人口的なガラスや膜が余計に引き立つんじゃないかと考えたのです。

 

中崎 今は天然芝と人工芝をうまく合わせたスタジアムが増えて来ているのですか。

 

上林 そうですね、ハイブリッド芝というのが出ているんですが、理想はやはり天然芝とされています。アストロドームをきっかけに、ドーム球場がたくさんつくられたのですが、結果として、人工芝で選手の故障が増えて問題視されました。ただ、これは技術的な問題であり、現在の人工芝は性能が上がり、そういう批判に耐えうるようなものになっている。一方、アメリカのメジャーリーグのスタジアムは1992年の段階から、もうドームをやめよう、という流れになり、やはり青空の下、天然芝で、ということから、(スタジアムというよりも)ボールパークという呼ばれかたに変わっています。

 

*この後、会場からの質疑を受けて終了。競技の現場ではなくメディアを通して観戦する人を考慮したスタジアムの工夫、騒音対策も含めた街と競技場の関係などについても言及があった。

 

 

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