イベントレポート詳細Details of an event

第101回 AGC Studio Design Forum
「スポーツする建築」 ~展覧会「鏡と天秤」より、浜田晶則 x上林功

2019年3月14日(木)
講演会/セミナー

浜田 次のセクション「Soft Architecture」に移ります。
これは、最近プリツカー賞を受賞された磯崎新と彫刻家アニッシュ・カプーアが共作である、移動型のシアター「アーク・ノヴァ」です。このような軽やかでやわらかい仮設的建築も、これからの建築「Soft Architecture」の一つの可能性としてあると思います。次の事例は僕らが以前提案した、グッケンハイム美術館のコンペ案です。巨大な気球のようなものが大地の広場に浮いています。この中が巨大な展示室になっているというものです。ここでは、ニューメディアを使ったアートを展示する美術館を提示しました。例えば光を用いるデジタルアートや、自然現象を扱うアートなどです。光を扱うことが前提となると、質量をもつものより容易にスケールを大きくすることができます。そうすると大きな気積をより軽やかにつくることが価値になるのではないかと考えました。どうやって軽やかに大きな空間を作ることができるかを考えたときに、熱気球のような仕組みを使えないだろうか、と考えたのです。夏や冬、環境に応じて熱と気圧を与えることで、環境に適応しながら大空間を維持する、やわらかい建築のプロジェクトです。

 

 一方、こちらの動画はチームラボでつくったプロジェクトなんですが、静岡の駿府城講演で実施した作品「Ieyasu and teamLab: Night Sumpu Castle Ruins and Tower of Floating Light」です。ヘリウムガスの入った108個の球体をトラス状にワイヤーでネットワークを組み、ヘリウムで上向きの力を発生させ、下からワイヤーでテンションを張ります。そうすると圧縮力が引張力に反転したテンション構造で軽やかにピラミッドが構築できるのです。さらに球体の中に配置したLEDの光をコントロールして、人が地上の球体を触るとインタラクティブに光が変化します。次の事例もチームラボでつくった作品「Floating Flower Garden; 花と我と同根、庭と我と一体」です。(動画を見せながら)2300株の蘭の花が空中に吊られており、人がそこへ入っていくと蘭がゆっくりと動き、人の周りにドーム状の空間ができます。通常我々が生活する空間では、床、壁、天井という基本的なエレメントがありますが、空間に立体的に充填されている花の世界に入り込むと、人のまわりにドーム状にくり抜かれるようにどんどんヴォイド空間がつくられていくのです。そのような、花が人に適応して動き、花の速度に人が適応してゆっくりと動く、鑑賞型ではなく花と人が一体の存在として感じられるような新しい体験型の庭園をつくりました。次の例は、気候に適応し、反応する建築です。これはシュトゥットガルト大学のアキム・メンゲスのパビリオンです。先ほども紹介したマテリアルが知能を持つMorphological Computationの応用事例です。この特殊な木の板が湿度によって反ることで湿度や光を調整する弁のような機構がつくられています。こういった実験的建築は、例えば電気が使えない場所での建設や、より持続可能な建築や環境をつくる上で、湿度や光の調整を動力を使わずに行う可能性を示唆してくれます。一般的な建築は、その空間内で人間がその固い環境に適応するというものですが、もしかすると、未来の建築は、建築そのものが人や環境に適応していくというものになるかもしれません。

 

 最後に今回展示した「Libra」という作品についてご説明します。Libraは天秤宮や単位としての意味をもっています。力の均衡や、ものの意味や重さの関係、主体や客体の存在をテーマにした作品です。屋根のようにガラスに覆いかぶさっている部分、これがETFE「アフレックス」という高機能フッ素樹脂フィルムになっています。0.15ミリ厚で透明でかつ強度と撥水性が高い素材です。19ミリ厚の大ガラスは、ほぼ45度に傾いており、何もなければ自重で倒れてしまうのですが、この膜に張力をかけることによって、大きなガラスが自立し、ガラスにはほぼ軸力のみ発生する、そんな構造体になっています。フィルムの先端には約100kgのガラスの重りが吊るされています。張力構造というのは力を与え続けないと、経年で緩む可能性があります。しかしここでは動力を使わず、重力を使って張力を張り続けています。つまり重りが浮いていることで、常に下向きの力を発生させることができています。*試作中の動画や、施工中の画像も紹介。

 

 冒頭にお話ししたソフトネスの条件は「Libra」にも当てはまります。膜とガラスによる形態の「Adaptability」が第一です。このETFEの膜に張力を張ることで、振動させると音が出るんですね。太鼓のように音が出て、本当に雨が降ったかのような音がつくられています。これが第二の「Resonance」という要素です。ETFEの素材特性である熱可塑性が、第三の「Plasticity」という要素です。このようにソフトネスの三条件を兼ね備えた構造装置であると考えています。最後に今日のまとめですが、ソフトネスによって人と機械は豊かに共生できるのではないかと考えています。スケールが大きくなれば建築にもそれが当てはまっていくと思います。そのための一つの試みが今回の「Libra」です。今回の張力構造であり、ETFEの膜を使い、さらに振動スピーカーなどを使うことによってやわらかな構造装置ができていますが、こうしたソフトネスがもしかすると生命体のような未来の建築のビジョンをつくっていくのではないかと考えています。最後に、この作品をつくるにあたり、手伝っていただいたり、加工でお世話になった方々に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。僕からの発表は以上です。

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