イベントレポート詳細Details of an event

第101回 AGC Studio Design Forum
「スポーツする建築」 ~展覧会「鏡と天秤」より、浜田晶則 x上林功

2019年3月14日(木)
講演会/セミナー

浜田晶則氏 建築家

上林功氏 追手門学院大学准教授

中崎隆司氏 建築ジャーナリスト、生活環境プロデューサー

*文中敬称略

 

中崎 今日のプレゼンターは、1階で開催されています展覧会のインスタレーションをなさった浜田晶則さんです。またインスタレーションで使用された素材がETFE(高機能フッ素樹脂)のフィルムであり、この素材を採用する建築にスポーツ施設がありますので、その専門家でもある上林功さんにも加わっていただきトークセッションを行います。私は、この展覧会のディレクションを担当した中崎と申します。今日は司会進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いします。それではまず、浜田さんに展示作品についてプレゼンテーションをしていただきます。

 

浜田 みなさんこんばんは。浜田晶則と申します。今回のETFEを使った展示に関連したトークのテーマですが、「Soft Architecture」というタイトルを付けています。僕にとって、やわらかさが、設計や物事を考える上での思想になっていますので、その背景も含めてご説明させていただきます。

 

 その前に、本日のテーマ「スポーツする建築」についてですが、すごく両義的だなぁと思っていまして、「スポーツするための建築」というようにもとれますし、もしかすると「建築がスポーツする」ような、そういう捉え方もあり得るのではないかと考えています。僕は「スポーツするための建築」が専門ではなく、これについては隣に上林先生がいらっしゃいますので、上林先生にお任せして、ここではもう一つの「スポーツする建築」についてお話しします。

 

浜田 僕はデジタルアートと建築、チームラボアーキテクツという組織、あるいは僕自身の建築事務所(AHA)で作品をつくっています。デジタルアートにもやわらかさという特徴がありますが、デジタルというのは非常に可変的ですよね。そのようなニューメディアを使ったものに関心があり、デジタルテクノロジーなどを駆使しながら設計をやっています。これは僕が大学院の頃の作品なんですが、ちょうど隈研吾先生が着任されて2年目だったんです。「デジタルに茶室を作ろう」というワークショップの話がありまして、東大とコロンビア大学で3つの作品を作りました。僕たち東大チームが担当した作品「naminoma」は、通常だと硬い合板をどうやってやわらかくできるか、というところをテーマにし、コンピューテーショナルデザインと、CNCルーターを用いたデジタルファブリケーションによって、複雑な形状を制御し、自ら組み立てまで行いました。その後、そのワークショップにチューターとして教えにきていたNoiz Architectsのメンバーのアレックスとstudio_01というデザイン事務所を共同設立したのですが、その作品を次に紹介します。エイブルさんのコンペでグランプリをとった「barcode room」です。ワンルームの部屋なんですが、壁がどんどん動いていきます。普通、壁は硬くて重いものなのですが、それが動いて、壁からテーブルやベッドが出てきてトランスフォームする、というものです。またこちらは2016年に竣工した「綾瀬の基板工場」です。ここでも建具や仕切りが使い方に合わせてどんどん変化させることができます。このようなフレキシビリティにずっと関心があります。今日は、ここに示す3つのアウトラインで進めます。「Soft Robotics」, 「Soft Architecture」, そして最後に今回の展示している作品の「Libra」です。

 

 まずは「Soft Robotics」です。皆さんはこの言葉を聞いたことがありますか?最近のロボティクス分野でも注目されている分野です。やわらかい素材「Soft Material」を考えた際に、ゴム、水や空気を使うことが考えられます。一方「Soft Geometry」を考えると、素材自体が固かったとしてもポーラスだったり、薄かったり、ファイバーみたいなものなど、形自体の特性でやわらかさを操作することもできます。そこで、やわらかさの機能とはなんだろうと考えると、やわらかさによってトランスフォームすることができるということではないかと考えています。低反発クッションとか、トランポリンとか、3Dプリンターで使われるPLAなどの素材の特徴である熱可塑性もやわらかさがもつ性質です。そして、ロボティクスの条件は3つあります。1つは機構、それから知能、そして知覚です。この3つの要素技術によってロボティクスはつくられます。しかし、Morphological Computationというものがありますが、これはコンピュータのような知能がなくても、素材特性を知能の代替として用いる考え方です。素材に知性を埋め込むという考えは未来の建築をつくるための、ひとつのヒントになるでしょう。(*細かく砕いたコーヒー豆と空気圧を利用してものを掴む機構を動画で紹介。その他の事例も動画で複数紹介)

 

 ロボットは「我々のために何かの行為をしてくれる」というイメージがありますけれど、最近、何もしてくれないロボットが出てきたのを、皆さんご存知ですか?(*感情表現をする「LOVOT」の動画を紹介)。これは何かの行為をしてくれるわけではないのですが、愛情を表現してくれるんですね。こうやって抱くと暖かくなる(笑)。こういう愛したくなるようなロボットです。ロボットというと機械的なイメージがありますが、こういう方向性もあると思うのです。ここでも重要となるのがやわらかさです。機構として、触覚として、感情として、様々な観点からソフトネスを考えていくと、人間と機械がうまく共生していけるのではないかと考えています。

1 2 3 4 5 6 7 8