イベントレポート詳細Details of an event

第99回 AGC Studio Design Forum
「Like living ~ガラスは生命体の夢を見るか?~」

2018年12月20日(木)
講演会/セミナー

青木 竜太 氏(VOLOCITEE Inc.代表・コンセプトデザイナー)

 

青木:青木と申します。僕はもともとテクノロジーの分野にいまして、二十歳で自分のWebのスタートアップを始め、その時にプログラミングにのめりこみました。
 まず、名刺管理システムを作り上げ、当時は先進的だと思っていましたが、営業努力がなく、1ライセンスだけの契約でした。それで、僕はビジネスのセンスはなさそうだと思い、プログラミングに集中し、OSの開発やコンピューターの機能を最大化する仕事に携わっていました。

 

 その後、病気を患い、今後どうやっていこうか、子供たちに何を伝えていこうか、ということに直面して考えたのが、幼い頃に好きだった「ディスカバリーチャンネル」を見せられるような環境づくりでした。その時に出会ったのが、TEDxという活動です。そうして、TEDxKidsという、価値あるアイデアを広めるカンファレンスを行うようになりました。

 

 その活動を継続的にやるために、どういうビジネスがあるのかを考え、当時、自分の強みであったプラットフォームの開発とコミュニティ運営を仕事にしたいという思いがあり、2011年にデザインファーム「VOLOCITEE Inc.」を立ち上げました。デザインといっても、グラフィックデザインのようにカタチがあるものをデザインするというより、仕組みや仕掛けなどのプロセスをデザインしています。わかりやすく言うと、イベントやプロジェクトのプロデュースです。

 

 2014年には、「Art Hack Day」というアート集団を生み出す場を創りました。日本ではアーティストの価値が低めですが、それをどう高めていけるか、という考えから生まれた仕組みです。アーティストの価値が低め、ということをシンプルに言うと、報酬の面が大きい。年収200、300万円で自分の材料費を賄いながら、家庭を養っていくのはなかなか難しい。そういう状況が生まれているのは、単純に、アーティストに対するリスペクトや理解が薄いのであろう、と。

 

 そこで、テクノロジストやデザイナーなど外部の人たちとつなげ、アーティストの考え方や思考を織り交ぜながら、新しいアート作品を創る。そのモノを通して、アーティストのコンセプトや考え方の素晴らしさを、同じようにモノづくりをするテクノロジストやデザイナーが理解し、それを世の中に広めていく。また、創られたアート作品が街に広まっていくことで、さらにストーリーが広がっていく。そういうストーリーを期待してやっています。

 

「Art Hack Day」は、中学校をリノベーションした文化施設「3331 Arts Chiyoda」の人たちと始めたもので、今は独立したかたちで続けています。毎年1回行っていて、アーティスト・エンジニア・デザイナー・研究者が60人ほど集まり、1カ月半ほどかけてアート作品を創っています。そこで出てきたアートとしては、六本木アートナイト、ICC(メディアアートの文化施設)、日本科学未来館などで展示される作品などがあります。

 

 2016年には、人工生命の研究者たちと他分野をつなぐコミュニティ「ALife Lab.」を設立しました。人工生命研究について話すと長くなってしまいますが、簡単に言うと、生命とは何かを研究する分野でして、コンピューターシミュレーションを使って行っています。基礎研究については他分野の人にあまり知られていないので、コア技術や考え方を、外部の人たちとコラボレーションしながら理解してもらう、ということをやっています。

 

 今年の夏、「ALIFE 2018」という国際学会を開催し、国内外から400人ほどの研究者に集まってもらい、さまざまなディスカッションを行いました。『作って動かすALife』という本も出版し、啓蒙活動もやっています。
 また、昨年、人工生命を研究している東京大学の池上高志先生、筑波大学でウェブサイエンスを研究している岡瑞起先生と一緒に、「オルタナティヴ・マシン」という会社を立ち上げました。先程述べた、生命の仕組みの成り立ちを応用した、いわゆる実在人工知能を開発する集団です。

 

 不動産情報サイトを運営する会社LIFULLと共に、「家族になる家」という提案も行っています。今後、空き家が増えていくなかで、各地域に適応する家づくりを考え、コンピューターシミュレーションを使って作っていくプロジェクトです。
 また、東京大学のT-ADS(University of Tokyo, Advanced Design Studies)と提携して、街の活性度や賑わいをどう見ていくかについて、人工生命のアルゴリズムを使って研究しています。回遊率、つまり寄り道する率をどう見るか、についての活動となります。

 

 加えて、自動車部品メーカーDENSOとの共同研究も行っています。テーマは「新しいモビリティのあり方」でして、例えば、ラストワンマイルにおける市民主導の協調物流システムとでも言いましょうか、要は、皆で渡し合って運ぶことをどうやって実現し最適化できるか、について研究しています。

 最近やったものとしては、先程の東京大学の池上高志先生、マツコ・デラックスさんのアンドロイド「マツコロイド」を作った大阪大学の石黒浩先生、音楽家の渋谷慶一郎さんとのコラボで、アンドロイド・オペラ『Scary Beauty』を上演しました。そのアンドロイドのなかで動く自律エンジンを、オルタナティヴ・マシン社で作っています。最初に動きを規定せず、環境とのインタラクションを通して自動で生成する動きを生み出すエンジンを開発し、企業に提供しています。

 

 また、来年は幕張メッセ竣工30周年にあたり、その記念プロジェクトで、「ありえる都市」のカタチを探求するプロジェクト「METACITY」が行われ、それにも参加します。そのキックオフ・カンファレンスに、千葉市長をはじめとする関係者、多くのクリエイターさんたちが登壇するので、ご都合が宜しければ、ぜひ遊びに来てください。
 以上です。ありがとうございました。

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