イベントレポート詳細Details of an event

第72回AGC Studioデザインフォーラム
「おおきなまちのちいさなリノベ」連動企画
「リノベーションの姿を考えよう -リノベーション市場の動向、事例紹介とその検討プロセスのありかた-」

2016年9月29日(木)
講演会/セミナー

村尾 では具体事例に入ります。まずは青森県庁舎の改修です。プロポーザルで弊社が選ばれた物件でありますが、こちらが改修後のイメージパスです。何をやったかというと、大きなところでは外観ですね。こちらが昔の庁舎ですけれど、最上階に展望台がある。でも、この展望台はもはや、利用する人がいない。見て分かる通り、何よりも画期的なのは、こういう部分を減築してリノベするということです。最上階の一部を取ってしまっている。これが示唆的であるのは、今後、日本の社会は縮小するということです。今後の日本を考え、身の丈にあった改修を考え、減築して改修するのも必要ということです。公共建築で減築した良い先例になる。この減築で良かったのは、こういうビルは高ければ高いほど耐震性が厳しくなる。昔の建物は現行法規に照らしても、また実際にも耐震性が不十分だったりします。現状の建物のままで耐震改修をするなら、非常に多くの耐震壁をつくる必要性が生じます。ところが、減築して、この一層が減るだけでも、かなり耐震壁を減らせるわけです。建物の機能を維持しながら、しかも安く改修できる。

 

一方、この外装はもともとタイル張りでした。でも寒冷地なのでタイル落下の問題があり、メンテが難しいわけです。そこで今回は、ガラスを貼ってしまいましょう、ということにしました。まるで、旭硝子さんのためにあるような(笑)プロジェクトですね。このタイルの貼ってあった外壁の外にガラスを張ってしまおうということでした。ご存知かもしれませんが、実はガラスは耐久性が高い。きちんとメンテナンスをすれば、鉱物なので耐久性が非常に高く、一番もつのです。何が簡単かというと、この外にアンカーを打ちガラスを付けてしまう。こうすれば簡易にできます。同時に、こういう場所は引き戸にしてしまい通風を確保します。従来の開口部のガラスを、断熱性のある高機能なガラスに替えてしまうということでした。それ以外で面白いのは、天井も取っ払っている。天井落下をさせないという狙いです。災害時に役所の天井が落下してしまうと仕事になりません。7メートル以上は特定天井と言いますが、いっそ天井をやめてしまおうということにしました。実は、日建設計のオフィスにも天井はありません。こういう庁舎さんは、こうすることによって大きな空間を確保できるとともに、機能維持を図れるのです。

 

次はカンプノウのプロジェクトです。FCバルセロナは、近年、世界一のサッカークラブと言われていますよね。その本拠地のスタジアム改修です。日建設計の中に、このコンペがあると聞いたサッカー好きの役員がいまして、「やるよね」と言われて(笑)、参加することになりました。このコンペがサッカーの大会と同じで、1stステージと2ndステージに分かれておりまして面白いのです。1stは資格審査で26社が参加しました。2ndに進んだのは8社で、ここで具体案を提示して競うわけです。この2ndがチャンピオンズリーグと似ており、ノックアウトのトーナメント制で、8社が4社になり、4社がセミファイナルの2社になり、最後はファイナルで決まる、と。彼ら自身がチャンピオンズリーグのように楽しんでコンペをやっているのです。

 

コンペでの要求事項の大枠は、9万9000席ある観客席を10万5000席に増やす。それから全席を屋根付きにする。デザインについては縦導線を含めた新しいファサードを提案してイメージアップを図る。それから、観客のための空間を、VIPルームやラウンジなども含めてですが全面更新する。これは先ほどのオフィスの話でいうと「知的生産性の向上、快適性」などにあたります。そして、改修期間中も8万席以上を確保するように、ということでした。ソシオと呼ばれるサポーターたちのために8万人分の席は、工事中も確保しておきたいということでした。これは「居ながら改修」とか、東京駅に代表される駅舎の改修と同じです。工事費は360ミリオン・ユーロ、日本円で400億円くらいです。これを日本でやったら、たぶん倍以上します。工事価格が日本の半分くらいで、設計フィーも半分(笑)。日建設計にとって、おそらく儲からない仕事ではないかと思います。コンペに勝って、ニュースになってから「そんな仕事!」と、私は責められました(笑)。面積の規模としては延べ23万平方メートル。リオネル・メッシのクラブとの契約が2021年まであるらしく、それまでにつくりたいと、工事期間は2017年から2021年になっていますが、スペイン、バルセロナなので(笑)、それまでに本当にできるかどうかわかりません。現在のカンプノウは築60年ほど経っており、これまでも増改築を繰り返しています。老朽化が激しく、そこに屋根をかける問題や座席の狭さ、周囲との関係など様々な課題があります。またカタルーニャの文化、歴史、気候、土地柄などを非常に重要視した改修をしないといけません。
*ここからCG、断面図、動画などをたくさん使い、改修計画を細かく説明。FCバルセロナがマーケティング用に作った動画も使って改修後のカンプノウとバルセロナの街のイメージも紹介した。

 

まとめますと、先ほど申しましたように、大きな物件であっても、小さな物件であっても、さらに新築物件であっても、建物の長い一生という観点から戦略的に考えないといけないと思います。またリノベーション設計の立案プロセスは、具体例で見ていただいたように、また林先生や恵良さんがお示しになったように、基本的に建物の種類や大きさなど関係なく、日本も海外も関係なく、同じようなプロセスで進んでいくのだと、今日、ここに来て改めて感じた次第です。どのような価値の向上を図るのかを、そのコンセプトを関係者間で共有して進めていくと最終的な成功につながります。先ほど紹介されたハンドブックなども上手に活用しながら、日本のリノベーションレベルを高めることに貢献できれば、と考えています。

 

*この後、旭硝子のリノベーション関連製品の短いガイダンスがあり、質疑応答を経て終了。

 

※資料ご提供いただきました下記の団体様、企業様に御礼申し上げます。

 一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構 様
 一般社団法人日本サステナブル建築協会 様
 スマートウェルネスオフィス研究委員会 様

 

 (株)ザイマックス不動産総合研究所 様
 (株)日建設計 様
 (株)野村総合研究所 様

 

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