イベントレポート詳細Details of an event

第72回AGC Studioデザインフォーラム
「おおきなまちのちいさなリノベ」連動企画
「リノベーションの姿を考えよう -リノベーション市場の動向、事例紹介とその検討プロセスのありかた-」

2016年9月29日(木)
講演会/セミナー

「日建設計におけるリノベーションの考え方と事例紹介」

 

村尾 忠彦 氏
(株式会社 日建設計 執行役員 設計部門 設計グループ代表 兼 LCD推進センター代表)

 

村尾 村尾でございます。まず、自己紹介をいたします。私は1988年、バブル経済の絶頂期に日建設計に入社し、建築の設計をやってまいりました。最初のころは横浜のクィーンズスクエアの設計、さいたまスーパーアリーナ、東京ではパシフィックセンチェリープレイスなどの設計を担当してきました。今日、ここに来たのは、去年からライフサイクルデザイン推進センターの部署、いわばリノベーションを担当することになったということから、林先生からお声掛けいただきました。本日はゲストなのでくだけた話をします。

 

1つは、青森県庁舎の改修です。これは築55年の建物です。調べてみると谷口吉郎先生が設計をされていました。東宮御所などを手掛けた方ですよね。また日建設計も関わっていたことが分かり、自分たちの先輩のプロジェクトだったということで気合が入りました。もう一つはカンプノウの改修です。ご存知と思いますが、スペインのFCバルセロナの本拠地ですね。ヨーロッパ最大、10万席のスタジアムの改修コンペを今年の春に取りまして、これの詳細については、まだ公では喋ったことがありません。FCバルセロナからは「あまり詳細には話さないように」(笑)と言われておりますけれど、今日は少しご紹介します。

 

その前に、日建設計がどのようにリノベーション設計をするのかについてお話しします。それは建物を人間の一生のような、流れの中でとらえる、リノベーション設計をLCD(ライフサイクルデザイン)ととらえることから始まります。そういう視点で調査をして、ブリーフィングをして、設計をします。リノベーションでは、ライフサイクルコスト、どのくらいのお金がかかるかを、最初に考えます。次いで、コンプライアンスです。設計をしていて一番困るのは、法規がよく変わることです。今、建っているものに遵法性があるとしても、次の年には違法状態になっていることがあります。いわゆる既存不適格の問題です。それを改修しようとするなら、更新された法規に合わせて直さなければならない。これが非常に大変です。3番目がBCPです。それから環境ですね、省エネ化をどう図るか。また、バリューアップ、資産価値をいかに上げるか。そしてメンテナンス。さらにテナントのあるビルならば、テナント様、オフィスであれば快適性が、商業であれば、売れる場所であるかどうか、と。最後が保有資産の有効利活用。こんな視点で設計計画を進めています。これは、デベロッパーさんに向けに私たちがご説明に行く際に使っている資料からの抜粋です。

 

先ほど林先生から「気付き」の話がありましたけれど、まずはお客さんとの間でコンセプトを共有することが一番大事になります。後に紹介する事例でも同じで、何をどうするかを調査したうえで、先ほどの評価指標なども使ったうえで、あらゆる知識を総動員しないといけません。これは私たちの組織図です。新築の場合、日建設計だけでやりますけれど、リノベーションになるとそうはいきません。先ほど出てきた「世の中の動向」ということであれば研究所を使ったり、インテリアであれば専門の事務所を使ったりします。日建設計は、たまたまそういう部門を社内に持っていますが、普通は、いろんな人とアライアンスを結びながら進めていくことになります。

 

一方、これまでの建物の管理運営を見てみますと、悪い例では、きちんとした戦略を持たずに設計してしまい、管理もできていないという物件があります。例えば、貸方基準ができておらず、いろんな問題が発生します。そいうケースでは悪いことが連鎖していき、建物の寿命を待たずして建物が壊されることにもつながってしまいます。だから、最初に「戦略的リノベーション」を位置づけて、先に挙げた8つの項目をお客さんと共有しながら、建物ができたところで、50年、100年後を話し合う。そういうことが必要です。

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