イベントレポート詳細Details of an event

「おおきなまちのちいさなリノベ」連動企画 トレンド・新技術セミナー
「本当に大丈夫? リノベーションマンション」

2016年10月27日(木)
講演会/セミナー

久保依子氏 
大和ライフネクスト株式会社 管理企画部

 

*2016年10月27日に開催。

 

久保 大和ライフネクストの久保と申します。よろしくお願いします。最初にみなさんにお聞きしたいのですが、エレベーターに乗る時、どこを見ておられますか? たぶん、フロア表示を見ていられる方々がほとんどと思います。一方、私が見ているのは、その階数表示の上の、点検表やメーカーさんの表示です。メーカーさんの名前や点検企業の名前、そして点検の日付などです。それを見ると、その建物がエレベーターにどの程度お金をかけているかが分かります。職業病として、そういった見方をするようになっています。そのような建物の共用部分の仕事をしているのが、マンションの管理会社ということになります。きっと、みなさんもそれぞれ専門分野で職業病的に注視してしまうところがあると思います。私は、そういうところが気になる業種です。
 マンションの管理会社は、こうしたマンションの共用部分の設備の保守点検や清掃などを行っています。また、マンションの管理費の引き落としなどもやっています。マンションは経年によって当然、劣化していきますが、大規模修繕工事や日常の簡単な修繕工事などを請け負っています。これは当社の売り上げ内訳ですが、管理がおよそ半分、工事に関するものが30%、その他にビルの管理なども行っています。
*図を用いて、管理会社の業界環境、営業状況等を紹介。

 

 今日は、管理会社としてリノベーションマンションを見るポイントなどをお話しします。リノベーションというと、部屋の中だけを見られる方も多いのですが、マンションは1棟丸ごとリノベーションすることもあります。単なるリフォームではなく「建物全体をリフレッシュして新しい付加価値を付ける」というものをリノベーションと呼びます。ですので、部屋の中の内装工事を行うという次元ではなく、共有部分も丸ごと入れ替えちゃうという事例をご紹介します。今日、ご紹介する実例は千葉県津田沼の物件です。だいぶ前に分譲したのですが、ここの物件だけ紹介する許可がとれました。他にも多くの事例がありますけれど、ビフォーとアフターの、ビフォー、つまり汚い時の写真をどのマンションも見せたくないのです。ここだけは許可が出ましたのでご紹介します。
 一棟丸ごとリノベーションするには、建物の構造がきちんとしていないといけません。そこで、建物を買う時に修繕工事の履歴をみます。これは大手企業の社宅に使われていた物件ですので、その記録がきちんと残っていました。もちろん大手が所有していたからといっても、築20年くらい経っていましたので、全部調査しました。これからお見せするのは、ビフォー・アフターの写真ですけれど、これをきちんと公開しているマンションの販売会社さんは非常に少ないと思います。みなさんきれいになったアフターの写真しか見せたがりません。ですから、リノベーションマンションが大丈夫か? と真剣に考える際は、ビフォーをきちんと確認してください。そこを公開できるのは相当自信があります。信用できるのはビフォーを見せているところではないかと思います。ここの物件でやったのは外壁のタイルのチェックです。また屋上防水もきちんとチェックします。あとは錆があるかどうか、それから天井部分の補修などを判定しています。また躯体のコンクリートが中性化していないか、鉄筋のかぶり厚さなどもきちんと検査しています。コアを抜いて圧縮検査などもしています。配管も内視鏡ですべてチェックし、給排水の状態が良好であることも確認しています。ただし、排水管は汚れがあったので、きちんと清掃をしました。
*ビフォーの写真、検査の写真をいくつも見せながら解説。また火災によって中性化するコンクリートの性状なども話す。

 

 一番お金がかかったのが、これです。機械式駐車場が錆びて劣化しており、全て撤去して新品に交換しています。これら全部をやってハードの部分をきれいにしました。こういうことはなかなか公開してくれないので、どんなに内装をきれいにしても建物自体がダメだと危ないので、こうしたことはすべて確認すべきだと思います。なお、部屋の中だけをリノベーションする物件を買う時も、管理組合としてどれだけ全体を修繕してきたのかを見る必要があります。きちんとした管理組合であれば、大規模修繕の履歴がきちんと残っていますので、いつ、何をしたのか、そういう共用部分を見る必要があります。部屋だけの見栄えにごまかされないようにしないといけません。
 この物件は、大規模修繕を行った際に、長期修繕計画を新たに立てました。中古マンションですから、販売した後に、管理組合にどこまでやってもらうのかをきちんと明らかにしてお客様に売ることが大切だと思います。この物件は、この時にやらなかった工事をいつやるのかを、お客様に提示して販売した物件です。ちなみに、ここではエレベーターもすべて取り換えています。

 

 ではここで問題を出します。長期修繕計画は竣工の販売時に計画されたもので、30年計画のものを提示しました。その長期修繕計画がそのまま運営されていると思う人、あるいは違うと思う人、挙手してください……。この答えは×です。長期修繕計画は定期的に見直しをします。修繕が終わった後、毎回見直しをします。また新しい工法や新しい材料が出てきた場合、それも考慮して修繕をしたほうがいいので、だいたい5年おきくらいに見直しをするのが普通です。ちなみに、長期修繕計画で一番大きな金額がかかるのは何だと思われますか? (会場からいくつか意見が出る) 実は、足場の費用です。建物本体よりも足場にもっともお金がかかります。もし、この足場が不要になれば、修繕費用が一気に安くなります。そういう技術が開発されると、修繕積立金はかなり安くなるはずです。

 

 続いて2問目です。「長期修繕計画の工事費用は、工事ごとに見積書を取得して金額を算出しているものであり、いわば工事費用の見積書の集大成と言える」、これは〇か×か? ……。 答えは×なんです。数量と工事単価を掛け合わせているだけで、見積書なんて取ってないです。あくまでも目安で、長期修繕計画に記してある工事費用と、実際にかかる工事費用は、まず一致しません。

 

では3問目です。長期修繕計画におけるサッシまわりは、12年に1度の割合で予定されている。どう思われますか……。これは×です。窓ガラスの修繕工事は36年に1度の予定で計画が立てられています。ということは、旭硝子さんは、日進月歩で非常にいいガラスを開発されていると思うのですが、こういう長期修繕計画のままですと竣工してしまった物件では36年間、その技術を生かすことが難しくなってしまいます。続いて、長期修繕計画の見直しを進めていますが、60年になってしまいました。60年先の計画では建て替え費用を見込んで計画するのが一般的である。〇か×か? ……。これは×です。長期修繕計画はあくまでも修繕の計画だけです。ただし、本当に建て替えようということになった際、積み立てられた修繕金を使うことはできます。

 

 今、申し上げました長期修繕計画の仔細については国土交通省が「長期修繕計画ガイドライン」というものを出していまして、詳しく記載があります。国交省のホームページでもダウンロードできます。今言った考え方や指針などが書いてあります。この画面にあるように、ガイドラインでは修繕積立金を「均等積み立て方式」と「段階増額方式」の2種類の方法で設定するとなっています。また、国交省は他にも階層および面積別の、修繕積立金ガイドラインを提示してありますが、このガイドラインにある金額はあてになりません。というのも、これは集計の基にした事例数が少ないので、実態を正しく反映したものになっていないのです。ですから長期修繕計画のガイドラインは参考になるものですが、積立金のガイドラインはそうでないと考えてください。

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