イベントレポート詳細Details of an event

第97回AGC Studio Design Forum
「アートでつくる都市スケールの “ラウンジ”」

2018年10月18日
講演会/セミナー

矢野 これまでお話したプロセスをまとめたものとして、2017年9月にエリアマネジメント協議会設立準備委員会という名称で「未来を考える京橋プロジェクト・ブック」が製作されました。日建設計はその本を作るお手伝いをさせていただきました。最初に私が申し上げたように、都市計画の告示を受けた後に私たちはそこでもう一度立ち止まって、「まちに開かれた芸術・文化拠点の形成」とは何だろうか?ということを今一度振り返り、街づくりを成功させるたに本質を見直す作業からはじめました。この「想いを見える化するプロセス」が、これまでお話ししてきたプロセスのことです。

 

歴史調査も含めたフィールドワーク、インタビューやアナロガスツアーなど豊富なインプットを行い、社会動向調査やビッグデータによる京橋のポテンシャル調査も行い、5つの望ましいユーザー経験を設定しました。次の画像で「成熟社会における都市」という言い方をしていますけれど、世界中の都市で2020年以降にどうなるかを分析しています。左上の写真は、都市計画をやっている人にはおなじみの場所と思いますが、ニューヨークのハイラインです。鉄道廃線跡の高架橋をリノベーションして、全長5キロに渡って公園にしています。ここでは年中パブリックプログラムが多彩に開催され、世界中から観光客が押し寄せているプロジェクトの成功例です。一方、下の写真はタイムズスクエアですが、ブロードウェイにつながる道路をすべてパブリックスペースとして歩道にし、道路を車から人に取り戻すことを行った事例で意外と知られておらず、今皆さんがTVなどで良く見るタイムズスクエアはこの新しい状態のものです。このような事例を見ると成熟社会における都市の在り方は、日本ももちろん取り組んでいますけれど、世界の街のほうが進んでいるなと自戒も込めて思います。

 

さて、最後に5つの「望ましいユーザー経験」ですが、「多様なオーナーシップを楽しみながら、まちを散策したくなる」というキーワードが一つ。こういったイメージ図を描きながらパブリックリーディングストリートとか、アンバサダーコレクション、といったような想定されるストーリーをつくって場所の使い方がイメージできるようにまとめています。「まちに関わるきっかけがあるから”日常”がちょっと楽しくなる」というのが2つ目のキーワードで、例えばミュージアムコンサートが開催されるなど。3つ目は、「まちの”物語”に様々な角度から触れられ、新しい価値観に出会える」です。これは前回の東京オリンピックの時の写真ですが、我々自身が京橋一丁目の東地区というところでオリンピックを迎える時に何ができるだろうかを提起しています。また4つ目は「別な顔があるから昼も夜も楽しみたい」で、昼限定のまちづくりではなく、夜のまちづくり、どうやって夜を過ごすのか、というストーリーをつくっています。5つ目は、現在では一番重要かもしれないと思っていますが、「伝えたくなる経験があるから、つい立ち寄りたくなる」で、ある場所に行き体験することが、写真を撮りアップすることが1つのシークエンスになっていて、それは本質的には誰かに何かを伝えたいから来るのではないかということです。

 

京橋一丁目東地区のエリアマネジメント活動の現在の進捗ですが、「未来を考える京橋プロジェクト・ブック」をベースに、エリアマネジメントの全体構想やコンセプトができ、来年には法人化する流れになっています。今日お話しした内容よりもう少し進んでいるのですが、現時点で公開できる内容は以上となります。

 

 「アートと都市」という切り口だけで考えている訳ではありませんが、すべてがアートにつながっていく、すべてが都市につながっていくという意味で、この京橋で起きるであろう芸術・文化の新しい都市との関係を、継続して考えていきたいと思います。
*最後にブリヂストン美術館から2019年7月から名称変更をして「アーティゾン美術館」となる新美術館について、イメージCGを用いて紹介。

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