イベントレポート詳細Details of an event

第97回AGC Studio Design Forum
「アートでつくる都市スケールの “ラウンジ”」

2018年10月18日
講演会/セミナー

矢野ここからは、フィールドワークやワークショップの写真を見せながらお話をしたいと思います。フィールドワークやワークショップは各社関係者が40~50人集まって、事前に京橋のまちを調べて写真を撮ってきてもらうことを依頼し、付箋などを貼りながらある程度ジャンル絞っていくということをやりました。このワークショップには私は参加しておりません。同じ場にはいたのですが、設計者は設計者としての思いも理解も深くて逆に純粋に、何かを発見する場にはふさわしくないとNADチームに言われてしまいました。皆さんが撮った写真を紹介すると、多くの人が細い路地の写真を撮ってきてくれました。一方、京橋界隈には「実は入ったことないけど……」と書かれていますが。京橋は実はギャラリーや画廊が非常に多いエリアで写真を撮ってこられるんですが、実は誰も入ったことがない。入りづらい、と。でも、あるのは知っていて、気に入っているという話をよく聞きました。また面白い発見として京橋なのに名称が「銀座」か「八重洲」というのがありました。銀座や八重洲と名付けた方がとおりもいいしかっこいいのかもしれません。また、「見るだけでも楽しいプロの技」と書いていますが、例えば金物屋さんの仕事など伝統的な特長ある店も多数ありました。

 

アナロガスツアーで訪問した場所を1つご紹介します。こちらは、南池袋公園といいまして、2016年に池袋の繁華街の真ん中にできた豊島区の公園です。開放感のある都市公園の風景とさまざまな場の過ごし方があるとの予測の下でツアーに行ったのですが、「開放感のある風景」・「みなさんが思い思いの過ごし方をしている」・「お互いに視線を合わすことなく座っていられる場所がある」・「決めつけ感がない」・「階段もベンチになる境界のなさ」のような体験的なキーワードをこの中から拾い上げることができました。他にも「好きなように使える椅子のようなテーブル」・「手作り感あふれる雑なところがのんびりした印象を与えている」・「好きなように移動して使うことができる家具」・「カフェのある公園」・「カフェのある店先に毛布がある気遣いがある」・「パレットのようなもの、仮設性に決めつけ感のなさ」・などもその場の議論を通して発見をしています。気遣いとか決めつけ感のなさなどは、通常会議で話しているだけだと、絶対に拾えないキーワードなんですね。こういった実際の体験からヒントを得るべくようと、数十事例調査に行っています。

 

 ツアーの最後にまとめとして、これらキーワードでこの公園から何が得られるかを書き出しています。右上に示していますが「アナロガスツアーからの気づき」というものを一つ一つ事例毎に紐解いています。参加者全員とツアーを行っていると、各社なりの考えがあって当初は少し距離感があるのですが、あえて所属や役職関係なくシャッフルしながら小さいチームで行動し、発表してもらうようなことを繰り返すと、だんだん一体感ができてきました。異なる会社の集まりでも、こういった体験型プロセスを共有すると、組織をつくっていく土壌が生まれるという意味で面白いプロセスだったと思います。

 

ここからは、先にご紹介した「KEYUX/キーユーエックス」として京橋1丁目東地区のエリアマネジメント組織で導き出した5つの望ましいユーザー経験をご紹介したいと思いますが、プロセスとしてその前にさらに追加調査を行った関連事例探しのいくつかをこの場でご紹介しておきたいと思います。

 

 これは小布施の「まちじゅう図書館」です。街自体もすごく綺麗に街並みを整備が行われている場所ですが、例えば酒屋さんですと、酒の肴の本が陳列してありそれを目の前に酒を飲めるといった具合に、街全体が図書館になっていくような企画をまちづくりとして実施されていて、フラフラと街歩きしながら街自体を楽しめる事例です。

 

カナダのトロントには、写真のような木のボックスが設置され地域のランドマークとして住民に愛されているそうです。これが面白いのは、実は図書館になっているそうです。最初は企画として本を設置したそうですが、今は利用者が自主管理して自分たちで本を自由に置いて交換をし運営をしている理想的な善意の体系で成立している街と図書館が一体化した事例です。サンフランシスコには写真のような、使われていない駐車スペースを活用して歩行者がくつろげる空間に変えていこうというアイデアで、地域の活性化にもつながっている事例です。一方、少しスケールを変えますと、ニューヨークにブライアント・パークという大きな公園があり、ここは夜に屋外シアターとしてみ映画鑑賞をしている事例があります。この公園が非常に面白いのは、運営が公共投資を頼らず公園自体で収益を上げて自分たちで運営している点で、世界中が今注目している公園のひとつです。こうしたパブリックスペースで何かをする際に行政からの資金や、企業援助、ボランティアなどに頼っていたのですが限界もあるため、さらに魅力を上げるためにどのように収益性を上げるかも非常に重要な視点になっています。

 

 先ほどコ・ワーキングスペースの話もありましたが、これは昼間は稼働してないレストランをコ・ワーキングスペースとして使い、夜はレストランとして営業する経営スタイルに取り組んだ事例です。もちろん利用時間は限られていますが、使われていないスペースで手間をかけないで活用しながら店の認知度を上げられ、地域のワーカーにも喜んでもらえ、フロントエンドサービスにも使えるそうです。これは後にも紹介しますが、昼と夜を別の顔で楽しみたい、という気付きの一つです。一方で、道路でオペラを観賞しようというのがこちらです。ニューヨークの「メトロポリタンオペラズ・オープニングナイト」という催しです。こちらも都市の中でイベントを起こして昼と夜のイメージを変える、と。タイムズスクエアでやられている事例です。また、こちらはみなさんよくご存知かもしれませんが、有楽町の東京国際フォーラムの「ネオ屋台村」です。ネオ屋台村は、ケータリングカーで広場に乗り入れてフードトラックを出すものです。これが好事例なのは、売り場を提供したいビルオーナーは、これによってビルの価値自体が上がりしかも、一応家賃収入も得られます。利用者はいつも楽しいランチを食べられる機会を提供され、営業したいフードトラックの方は、場をもらえる、と。三者それぞれがWin-Winの関係を築ける仕組みづくりができた点です。最近では、「アーツ千代田3331」というのも有名です。旧練成小学校を改修していろんな人がアートの場として利用でき、アーティストにも場を提供するし、地域の子供も入って来ることができる事例です、今回の私たちのプロジェクトに通じるものがあるかもしれません。

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