イベントレポート詳細Details of an event

第77回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.19「新しい建築の楽しさ2016」展連動企画
「プライベートスペースをパブリックに開く」

2017年2月16日(木)
講演会/セミナー

落合「いこうファーム」の敷地は、「ワカミヤハイツ」から1.4キロ、歩いて15分くらいのところにオーナーさんのご自宅があります。そこの半分くらいの敷地にビニールハウスが建っていたのです。こういう大きな土地をどのように活用しようか、と考えておられて、最初はアパートをつくろうか、と思っておられたのですが、そこに疑問があった、と。「他に使い道はないか?」と考えたところ、先ほどの「ワカミヤハイツ」と同様に「農」というキーワードで、貸農園をやってみようと話し合いになって、いま進めています。これも約1年前に、農園の計画からスタートしています。45区画くらいに区切って、ここを借りた人たちが入って農作業をして、野菜をつくる、と。そこにもともと付属してあった納屋なんかが、こんなセルフリノベーションみたいな形で、図書室にして、自然農法を学んだり、指導員の方が毎週1、2回来て、栽培の相談などもできるサービスも加えながら展開しています。私たちもその収穫祭に呼んでいただいたので、ワークショップの企画をしたりしています。ただ単に場所を貸すのではなく、ここで一緒にマルシェを開いたり、風鈴の絵付師を呼んでワークショップをしたりなど、菜園にまつわるいろんなコトを共有していくようにしています。

 

そんな中で、「いこうファーム」の中に、みんなで集まって、採れた野菜を調理するというキーワードで計画したのが「いこうファームのキッチン・ラウンジ」です。建物自体はシンプルで、ここに母屋と書いてある自宅があり、その増築という形式をとりながら計画しています。1階に関してはパブリックに開いたかたちにして、この建物をどういう風に運用しようかと試行錯誤しながら考えたのですが、2階が自宅からもアプローチできる個室みたいなものになっています。お子さんが成長したら、ここに部屋を持つなどできます。ただ、1階は菜園に対して貸し出し、キッチンラウンジにするのですが、将来的にご家族の利用形態が変われば宿泊場所に転用しようか、など多様に使えるようにしておこうとしています。土間があって上りがある、と、そういう計画にしています。ギャラリーの展示では、この「いこうファーム」と「ワカミヤハイツ」のプロジェクトを一つにまとめて出展しました。

 

 今回のプロジェクトで2つの共通点を改めて整理してみたのが、これです。付加した機能がキッチンとラウンジです。それから外部空間の農的なもの、そういったものを付加しています。ただ単に付加するのではなく、もともと住戸だったところを共用部にしたり、もともと車の駐車スペースだったところを菜園にしたり、と。またもともと私有地だったところを敢えてそのような貸農園にし、どちらも私有地をパブリックに開放していくというようなコンセプトでやっていったわけです。それを説明する時に「4つのエレメント」というものを私たちは共通項として持っております。それは本当に気軽に入って来られる土間空間もしくはそこから少し上がった休めるスペース、それを開放できる引き戸であるとか、農的な空間を活用できるキッチン、そういったものを、いろんなエレメントがある中で、そういう使い方に配慮しながらつくっていくことを意図的にやりました。

 

 時間もないと思うのですが、この延長として考えている自分の自宅で実践している事例にも触れます。大田区の上池台というところに私が設計した自宅があります。この1階の部分を普段はアトリエとして使っています。ただ、それを週末だけ違う形に運用しようと考えまして、これも先と同じで、土間があって、くつろげる上がりのスペースがあって、ここに流しがあります。夫婦2人ともコーヒーが好きなので、コーヒーを入れて販売してみたりなど、この場所を運営しています。1月に私たち夫婦の自己紹介をするというイベントも開催しまして、豆の販売をしたり、コーヒーを入れてご近所さんと交流するということをやっています。これまでの建設過程を展示したりとかしていると、段々、ご近所の方々も近づいてきてくれて「なぜここに棲み始めたの?」とか「近所だから、何かあったら声掛けて」だとか、そういうコミュニケーションが広がっていっています。こういう軒をつくり、カウンターを作りながらやっています。

 

こういう空間をどういう風に呼ぼうか、と考えフェイスブックで友人と議論している中で「公私混同空間」という表現が出てきたのです。それを使わせてもらうと、いわゆるパブリックな部分と、プライベートな部分を混同し始めていて、そこの境目をなしにして行ったり来たりするような現象が起きている。これはどんなことを意味するのかと考えると、今、自由に使える公共空間が実はないのではないか、と。公園や学校などでもいろんな制約があり、私もみなさんももどかしく感じているだろう、と。後はもう少し、私有地の活用の可能性を、建築家を含めて考えていったほうがいいのではないかと思います。もちろん、それは空き家や空き地みたいなものの可能性もありますし、できれば事業として回っていくような仕組みを、建築家も含めて一緒に考えていかないといけないと思っています。

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