イベントレポート詳細Details of an event

第77回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.19「新しい建築の楽しさ2016」展連動企画
「プライベートスペースをパブリックに開く」

2017年2月16日(木)
講演会/セミナー

落合正行氏
(PEA…/落合建築設計事務所)

 

「いこうファームのキッチン・ラウンジ」(東京都足立区)

 

落合 みなさんこんばんは。落合といいます。私は建築設計事務所を立ち上げた後、現在は日本大学理工学部まちづくり工学科で教鞭をとりながら、建物を少し俯瞰して、まちづくりという観点から建築をつくっていく、という活動をずっとやってきています。今回、出展させていただいたのは「いこうファームのキッチン・ラウンジ」というタイトルですが、「あだち農まちプロジェクト」という大きな枠組みの中でのプロジェクトの展示になります。名前の通り、東京都足立区で計画していまして、足立区は東京の東北エリアの端にありますね。ちょっと行けば草加市など埼玉のエリアに近く、東京の中でもベッドタウンというか、それ以上に東京の中でも田舎を感じられるエリアです。足立区ではもともと農業が盛んで、江戸のコメどころとして機能していた歴史があります。その一方で、近年は農地がどんどん宅地化していき、建売住宅や小規模なマンションの開発が進んでいる。そういうエリアでもあります。

 

そういう中で、昔から住んでいる方と、新たに入ってこられた住民の、ご近所付き合い、つながりが希薄化している中で、このプロジェクトのオーナーさんと一緒に、この足立区の地域的な課題を踏まえて何かできないか、と取り組んだものです。プロジェクトとしては、展示した「いこうファーム」という、いわゆる貸農園、体験農園などの施設に加え、それに先立ってもう竣工している「ワカミヤハイツ」という、木造賃貸アパートの改修リノベーションというものを、ひとつのパッケージ、地域の問題としてとらえて取り組んでいます。実際には2014年から始まり「ワカミヤハイツ」は1年前に竣工し、人が住んでおられます。

 

 プロジェクト全体のことも含めて話をすすめていきます。まず「ワカミヤハイツ」は築40年の、こういう2棟に分かれた木造賃貸アパートです。もとは計8戸の住戸があったのですが、そのうちの1つを共用部に変えるということを提案し、オーナーさんと一緒に考えてきました。つまり、この7戸の人たちがこの共用部分をみんなで使い、かつ、この南側に菜園をつくって、ここで採れたものを、この共用キッチンで料理して食事をするなど、そういう使い方をし、アパートの住戸だけに完結せず、もう一つの部屋をみんなで持てるというものになっています。先ほどの馬場さんの長屋と同じく、型が決まっておりまして、本当に反復されるようなプランなんですね。

 

ただ、住戸の中身は、部屋の配置を変えたりしながら、キッチンが土間で南側に面してつくってある部屋もあれば、奥まってあって寝室が手前に来ているだとか、そういった改修も併せてしております。この図に示す、1階の住戸Cだったところをコモンルームというかたちにして、みなさんがくつろぎながら、ここの部屋の運営自体も居住者たちでやっていきます。既存はこういう、この近辺によくある建物なのですが、1階のこういうところにバルコニーや腰壁があるところを、どんどん開いていき、直接菜園に出入りできるようになっています。で、2棟の間の部分も、ずっと路地から入って来て、その延長として入って来られるような菜園になっています。ここの樹木もすべて、採って食べられるような実のなる樹で設えをしてあります。この共用のキッチンで料理をしていて「何か足りないな」と思えば、ここから採ってきて食べるとか、そういった運営がされます(多数の写真を紹介。キッチンが業務用の設備だったり、入居者の募集のやり方、建物の考え方の説明をした際に、食事会が始まったことなども紹介)。共用部の管理の当番制、菜園の区画化や共有化など運営の仕方を話し合って、今は居住者組合の結成に向けて打ち合わせやワークショップを開いている段階です。

 
 そうこうしているうちに「おやこ食堂」というものをやっているNPOの人などが来られて、「こういうコモンルームを使わせてもらえないか」という話が出てきました。オーナーさんもせっかくだからと了解し、居住者の人たちもディベートをするなどの動きが出てきて、まさに今日のテーマとつながってきたのです。もともと私有地だったところ、もともとこういうアパートの居住者が、地域に開かれ始めている、という現象が起きている。こういう住戸とまちの関係を紐解きながら、やっている当時はそういうことは考えていなかったのですが、改めて「この設計はどういうことだったののだろう」ということを模式化してみよう、と、こういう図をつくりました。プライバシーの高い、いわゆる専有部と、まちの間にいろんなクッションが普段からあると思うのですが、そういったところに付加価値があるのではないかと、ここに住んでおられる方々を見ながら、いま、実感しております。こういうところをデザインするのが今後重要になっていくと考えながらいろんなことをやっておりまして、「ワカミヤハイツ」の設計が終わった時、「いこうファーム」にも共同のキッチンを計画しようという話をいただき、引き続きプロジェクトを進めています。

1 2 3 4 5 6 7