イベントレポート詳細Details of an event

第96回AGC Studioデザインフォーラム 「空間のしきり」

2018年9月13日(木)
講演会/セミナー

 次に、点字ブロックがなぜ黄色いかについて、お話したいと思います。
 よく聞かれる質問に、「点字ブロックは視覚障害の人のためのモノなのに、なぜ、派手な黄色なのですか?」ということがあります。目が見えないのであれば色は関係なく、地面と同じ色にするほうが景観とマッチしていいのでは、というような考えの人がいます。
 しかし、点字ブロックは黄色い。なぜかと言うと、視覚障害の人のなかにはいろいろな方がいらっしゃり、かなりの割合の方が、残存視力が残っている人が多い。例えば、視力が非常に弱いロービジョン(弱視)の人は、ぼんやりとモノの形がわかったりします。そういう方には、地面とのコントラストが高い黄色が見えるわけで、黄色の線をたどっていけば、道をまっすぐ歩くことができる。そのため、点字ブロックは黄色になっているわけです。
 また、全盲の方のなかには、「手動弁」や「光覚」という能力が残っている人がいます。手動弁は、目の前で手を動かしたときに、手の動きがなんとなくわかる状態を言います。光覚は、あちらの方向のほうが明るいな、と光を感じる能力です。そのため、光を上手に使ったガイドや、コントラストをうまく使ったガイドがとても重要だと思います。

 

 ご覧いただいているのは、新潟のバスターミナルにある点字ブロックですが、とてもアーティスティックです。ちょっと迷路のようになっていて、どこに行けばいいかわからなくなるので、良くない例と言えます。
 点字ブロックがなぜ黄色かという話をしましたが、実は、黄色である必要はありません。先程言ったように、コントラストが高ければ、ロービジョンの人も、それをガイドにすることができます。例えば、横断歩道や、歩道と車道を区別するために白線がひいてあり、アスファルトのグレーと白線のコントラストが際立っています。そこで、ロービジョンの人は白線を頼りに歩くことができる。色にこだわるのではなく、実はコントラストの高さが、視覚障害者にとって重要な情報になっているのです。
 これを知っておくと、色で困ったときに、別の方法を考えるヒントになると思います。バリアフリー対応や点字ブロックを設ければOKだろう、と考えている建築家の方もいるのですが、そうではなくて、どうして色が黄色なのかを知ったうえでブロックを設置しないと意味がないので、こういう情報も覚えておいていただければと思います。

 

 視覚障害の人をナビゲーションするときの注意点について、お話しましょう。 
 大切なのは、視覚障害者が頭の中に地図が描けるような動線を示すことです。例えば、コーナーをどこでどれくらい曲がるかという情報があると、頭の中で地図が描けます。加えて、できるだけ直線で移動できるようなレイアウトをしてもらえると、助かります。ブロックが曲がっていたり、ゆるいカーブになっていたりすると、どこに向かっているかがわかりにくくなります。
 視覚障害の人は、一人で移動できるように歩数を数えて、何歩歩けばどこにたどりつけるかという距離をはかっている方がいます。そのため、距離がわかりやすいように、ブロック単位で印があったりすると、それが目安になり、移動しやすいと思います。一方、動線上にグレーチングを配するのは、できるだけ避けてもらいたいです。水を排出するために設置されるものですが、グレーチングに杖の先がひっかかり、溝にはまって折れてしまうことがあります。

 

 また、「触覚」、触った感覚も大切です。視覚障害の人と話していると、「杖のすべりがいいよね」という声を聞くことがあります。杖の先の素材としてはプラスチックやテフロンなどがあり、よくすべるようになっています。問題は床材のほうでして、杖を使っていると指先が敏感になってきて、床の状態が杖をつくだけでわかってきます。
 足の裏の触覚も敏感になるので、床の摩擦係数が変わると、それも察知することができます。先程、地面や床の色の話をしましたが、床のすべり具合を変えるだけでも、視覚障害の人には役立つ情報となります。棒が並んでいるタイプの誘導用点字ブロックは、足の裏で踏むと、それとわかるようになっていますが、加えて、棒と棒の間に杖の先を突っ込み、溝をすべらせて歩く目印にもなっています。その際に、すべりがいいかどうかが関わってきます。
 そのため、床の状態もナビゲーションの情報になります。例えば、点字ブロックを設置するのが難しい状況でも、異なる摩擦係数の床材をうまく組み合わせると、それを頼りにまっすぐ歩くことができます

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