イベントレポート詳細Details of an event

第96回AGC Studioデザインフォーラム 「空間のしきり」

2018年9月13日(木)
講演会/セミナー

 ガラスを用いた構造物には、今まで見てきたような様々なものがあります。そこで直面するのが加工と遮蔽の方法でして、その時の技術について、ご紹介しましょう。
 一般的なものとしては、先程もお話したLOW-E複層ガラス、合わせガラスなどがあります。また、ガラスだけでなく、組み合わせでソリューションを得るという方法もあり、その代表的なものが、2枚のガラスの間に空気層を作り、そこで熱処理をする方法です。これは日本での技術開発ではないのですが、振り返って考えると、日本の建築様式には、ガラスの内側に障子をつけるものがあり、似た発想のものを私たちは使用してきたとも言えます。

 

 2枚のガラスの間に空気層を作る方法としては、エアフローウインドウ、ダブルスキンなどがあります。ダブルスキンは海外でよく使われており、特にドイツでは一般的で、日本でも増えています。ただし、空気層を作るために面積をとられてしまう、二重にするのでコストがかかるなどの課題はあります。アウタースキン(外側の外皮)は意匠性の高いものにし、遮蔽性を特定して、内側は担うものが違うなどの役割分担をすることにより、新しい複合したカタチも可能になるだろうと思います。

 

 日射の遮蔽については先程お話しましたが、ガラスの間にメタルを挟むなど、様々な方法があり、挟むものの違いによって、いろいろなことを表現できます。ガラス以外の建築的な手法では、ブラインド、ロールスクリーンなどがあり、最近は庇やルーバーの使用が増えています。ただ、ブラインドやロールスクリーンは今でもとても効果があるものだと思います。
 遮蔽する際に問題となることに、火災に対してどう対処していくか、ということがあります。短時間に延焼が進むと、消防が間に合わないことにもつながるので、隠れた縁の下的なところも重要な課題です。

 

 こちらは、太陽光発電パネルをガラスの中に組み込んだものです。この施工の際に課題となったのは、電線をどうするかなどということでして、屋外での施工にすごく時間がかかる。今の世の中は、時間の制約が強く、早くできるということが可能でないと、存在しえないという側面もあります。そこで出てきた課題がユニット化です。工場で配線まで行っておき、現場でそれを迅速に付けていくという工程が求められている時代と言え、今後ますますこの傾向が強くなるだろうと考えられます。
 ちなみにこの案件は、私が旭硝子に在籍していた時に、最後に担当したものとなります。

 

 機能面で利用する一例としては、耐震・制振など地震に対してのガラスの力が挙げられます。地震が起きたらガラスが割れるから逃げろ、というのが普通ですが、それに対してのトライアルの事例があります。
 これも私が手がけた案件ですが、鋼製ブレースをガラスで補剛しています。建物の重さにガラスで抵抗することは無理ですが、役割を変え、鋼製ブレースが曲がらないようにガラスで押さえるという方法です。この力ですと、強いガラスだと耐えられる。耐震性を付与しながら、ガラスを使うことで、違和感なく向こう側が見えることを実現した事例となります。

 

 次の案件も私が関わったもので、丸ビルの事例です。
 丸の内の再開発計画で最初に着手されたもので、その際に、ガラスをどう使うかが大きなテーマとなりました。空間設計のデザイナーさんが、「何か面白いことをやりたい、開放された気持ちいい空間を造りたい」とのことで、それを実現した事例です。
 写真のように、椅子に腰かけて寝ている人がいますが、今でも、こういう光景が見受けられます。何が見えるかというと、正面に東京駅が眺められ、光の入り方もとても気持ちがいい。しかも、他にもいろいろな工夫があり、床にガラスとビー玉を仕込んで、それが虹のような色彩となって現れ、時間に応じて移動する仕掛けなどがあります。
 このように、ガラスは床にも使われることがあります。例えば、タワーの展望台で、一部の床がガラスになっているケースなどです。そういう場合、滑ると危ないので、ガラス表面に細かなひっかかりのような突起をつける技術が使われることがあります。
 内装の壁にもガラスは用いられ、このように中に照明を入れ、光る壁を造ることも以前から行われており、波型のモールドガラスが使用されます。こういうケースでは、光を邪魔しないかたちで留め付け、違和感なくガラスを収められるかどうかが課題となりました。

 

 建物以外でのガラスの「しきり」の話に移りましょう。
 この例は、パリ郊外のデファンス地区にあるガラス製の風避けフェンスです。郊外の高台にあり、風が強いところなので、このようなフェンスを設け、向こう側の景色が見えつつ、防風も行えるという機能を持たせています。
 こちらは、ガラスの上にスピーカーが乗っている事例です。ガラスの上にあまり重い物を載せると破損してしまうイメージがありますが、ここでは細い鉄の棒で補強することで、重いスピーカーを上に配置しています。時代的にはかなり前のもので、初めて見たときは強い衝撃を受けました。また、こちらは、ガラスだけで自立しているポスターケースの例です。

 

 この写真は、建物の前にあるキャヌピー(庇)です。ガラス製のキャヌピーは設計が難しく、何が一番たいへんかと言うと、汚れや水たまりです。それを防ぐために勾配を設けたり、透明ではないガラスを用いたりします。透明で行う場合は、いろいろトライアルしまして、一時期、防汚コーティングを施したものを使用したことがありましたが、本質的な意味での解決策は見つけられていないところかと思います。
 こちらは防風屋根の事例です。超高層ビル街では風が屋根を抜けて、路上にいる歩行者に弊害が出ることがありますが、屋根を配することで風を防ぎ、空間のイメージを高めるためにガラスが表に出てくる設計となっています。また、イベントスペースということで、フレームを設けて、いろいろなところにモノを吊るせるようになっています。

 

 先程、屋根にとって水はやっかいなものだという話をしましたが、使うこともできまして、これはガラス壁に水を流している水景の事例です。水景設計の専門家と一緒に進めるわけですが、「うまく泡を出したい」というようなリクエストをいただき、構成を考えて最終的にこのようなカタチとなりました。
 また、こちらは名古屋にある水を通して光を表した事例です。天気によって光の様子が変わり、面白い風情だと思います。
 次は、屋根にガラスを配した例で、施工技術を駆使して造られたバスシェルターです。一方、これはガラスだけで造られたエレベーターの事例です。また、こちらは私が設計したガラスの家具となります。私は外装に携わることが多かったので、その感覚で設計したのですが、内装の視点からのアドバイスをいただき、その後は、内装の仕上がりをより意識した設計も心がけていました。
 最後の事例は、「しきり」の究極かなと思って選んだものです。宇宙船に使われているガラス窓となります。こういう高度な領域のものもあり、ガラスは様々なところに使用されており、未来に向かってやれることはまだまだたくさんあると考えています。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

1 2 3 4 5 6 7