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第96回AGC Studioデザインフォーラム 「空間のしきり」

2018年9月13日(木)
講演会/セミナー

ガラスを用いた「しきり」

 

舟岡 努 氏:舟岡技術士事務所 代表

舟岡 舟岡と申します。宜しくお願いいたします。
 今日の題目は、「ガラスによる『しきり』のいろいろ」ということなので、ややとりとめのない話になるかもしれませんが、多種多様な事例をご紹介したいと考えています。簡単に自己紹介をしておきますと、私は旭硝子(AGC)に勤務後に独立し、今は舟岡技術士事務所で技術関連の仕事に携わっています。

 

 ご覧いただいている表は、ガラスの長い歴史を年表にしたものです。一説には、ガラスは紀元前7000年頃から使われており、古代ローマ時代に、窓に用いられるようになったと考えられています。最初は玉のような装飾ガラスだったようで、それを壁にはめてみると「光が入る」特性に気づいた、ということが推測できます。ただ、窓というものは、ある程度広く使わないと光が入ってこず、透明でないと外が見えにくい。そういうニーズが出てきて、それに技術が追いつき、あるいは技術が進んで実現できることが多くなり、古代ローマ時代に窓が使われるようになり、さまざまな変遷を経て、今日に至っています。
 とくに製法の発展によって大きなガラス製作が可能になり、それに応じて使用法も変化してきた、ということが言えます。その変遷を振り返ると、私が生きてきた年代においては、ガラスに大きな変化がありました。
 まず、フロート法という製法ができ、平滑で均一性のある大きなガラス製作が可能になりました。また、ガラスの材料に加え、加工法、組み合わせ方や取り付け方など、さまざまな技術が発展しました。私が生きてきたなかで携わることになった「ガラスを用いた『しきり』」には、このような背景があります。

 

 私が生まれたのが、1960年代よりちょっと前で、定年を超えた年齢でして、現在は事務所を構えて仕事をしています。旭硝子に入社したのは、1990年のことで、この間は先程述べたガラスの加工法が劇的に変わった時代で、幸いにも旭硝子に在籍し、いろいろな案件に携わらせていただきました。
 一方、今は様子が変わってきていて、ガラスだけではなく、他の材料との複合化が進んでいます。例えば、ファサード(外装)がそうで、より難しくなってきている。“難しい”というのは、逆に”面白い”ということになり、手段がいろいろ増えてくる、あるいは増やさなくてはならないという時代に入っているかと思います。
 私が旭硝子にいた時代は、ガラスそのものをどう使うかに主題があったと感じますが、それが今後の建築分野でどう変わっていくかは、とても楽しみです。そういうなかで、一つの目標にしていたことに、「スマートウィンドウ」がありました。何十年も皆がそれを合い言葉に研究し、いろいろなことを試み、それに深く関わっていたのが、調光・遮光などの技術です。今のAGCの商品を見てみると、そのような技術が使われているものが多くなっている印象があります。

 

 先程、フロート法によって大きなガラス製作が可能になったと述べましたが、それによって、ご覧のような空間を造れるようになりました。「しきり」という言葉で表すと、透明な面で大きく仕切ることができる。そうなると、外にあるものを中に取り込みやすくなり、目線が広がる空間を望めます。
 ご覧いただいている建物のこの部分は、ほとんどガラスしかないように見えます。今日は技術的な話は控えますが、我々技術者はこのような空間をどのように造るか、「しきり」をどう配するかに頭を悩ませ、ご依頼に対してどういうソリューションを提示するかに心血を注いだわけです。そういう時代でした。
 それに対する一つの回答と言いますか、”刺激物”がDPG工法でして、1990年代の初め頃に日本にもたらされました。
 ガラスに穴を開けて、ガラスを組み付ける方法です。他の建築素材は釘を打って止めたりするので、まあ当たり前なのですが、ガラスはそうはいかない。普通にガラスに穴を開けると割れてしまいますが、そこを解決している構法が海外にあり、日本に持ち込んだわけです。

 

 以後急速に、ガラスで透明の大きな壁面を構成する建物が増えていきました。その時代に流行ったキーワードに「透明感」という言葉があり、これは当時の旭硝子の売り文句でした。
 ガラスは透明ではあるのですが、それに「感」をつけたニュアンスがポイントになったようで、建築物そのものが透明な状態を帯び、それを見せるということが注目されました。ただし、ガラスだけでそれを行うのは難しく、この建物のようにケーブルや小さな部品の支持物を使い、透明感を損なわずに造り上げている。素材だけではどうしようもない価値観を実現するため、いろいろなものを組み合わせ、その組み合わせ方を考えながら使っていった。これによって、日本の建築物に大きな変化が起きました。

 
 
「透明感」と別のキーワードとして、「映す」があります。時代の流れとしては、「映す」の後に、「透明感」が来たかたちです。
 これには、反射を強くしたガラスである、熱線反射ガラスの技術的な発達が関わっています。デザイン的には映ること、あるいは向こう側が見えないことを利用することになります。先程の「透明感」は向こう側が見える、あるいは見せることが特徴ですが、「映す」では、反射して向こう側が見えにくいから、こういうことができるという点が生まれます。技術をどう使うかに応じて、変わってくるわけです。

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