イベントレポート詳細Details of an event

第75回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.19「新しい建築の楽しさ2016」展連動企画
「建築的視点を拡張する」

2016年12月15日(木)
講演会/セミナー

蘆田 一方、建屋に関しては市の事業としてやっています。この建屋は、先ほどの温泉バイナリー施設から来る熱交換を終えた温泉とごみを除去した川の水で熱交換を行い、それを道路に持っていき、融雪をします。また、この施設の前面はポケットパークのように整備する予定です。建屋の屋根も緩勾配で、ここにも融雪管を持っていっています。この建屋をどのような建物にするかを組合のみなさんと話していたところで、僕の目に留まったのは雪囲いでした。

 

雪国では建物の低層部の窓ガラスや扉などは、雪の側圧で破られてしまうので、冬になるとこういう雪囲いをかけます。だいたい、横に掛けるタイプのものが多いのですが、ひとつだけ縦に掛けたものがあったのです。この縦がいいなぁ、と思いました。だいたいこの地域の人の意識として、春になっても雪囲いを片づけないのはずぼらだと見られます。そこで、雪囲いに見えるような横の板だとずぼらな建物のように見えてしまうので、ちょっと形をかえて縦にして見え方が異なるようにしようとつくった建物がこれです。これは20㎡くらいの小さな建物ですが、普通ですと、この消雪パイプの機械室はステンレスの箱をボンと置かれるだけなのですが、それでは景観上好ましくないので、市に対してちゃんと建物としてデザインをしましょうと働きかけてつくったものです。

 

これは下階のスタジオに展示した模型です。建物としては雪囲いをつくるということが主軸となる考えとしてあったのですけれど、それ以外にも屋根に消雪管を付けるということで、この屋根の勾配をゆるくすることができました。ゆるくできるというよりも、ゆるくしたほうがいい。ここに雪がたまっている時、あまり早くお湯が流れるようでは雪を融かせない。敢えて緩勾配にすることで、いままでの雪国にあるような屋根の形とは違っています。またここが温泉街の消雪設備の肝になる建物なので、大雪の時に万が一、壊れたり機能しなくなるとまずいわけです。それだけは避けたいと思って、実際は周りも融雪するので滅多なことでは雪に埋もれることはないのですが、建物を成立させるための構造体と、外にもう一枚構造体を設けて二重の構造体にしています。ここが実は雪囲いになっています。建物内部にも通常の1.2倍の柱が入っていて、さらに外の四周で中の建物を守っている、そういう建物になっています。

 

次にやったのが街路灯なのですが、街路灯をLED化する事業に合わせて新しく照明柱をデザインしました。。これはどちらかというと土木の仕組みになります。この時も雪が積もらないような、雪との付き合い方が形に表われて風景になる、というようなことを考えて、このような尖がった鉛筆のような街路灯にしました。とにかく雪をためないことにこだわりました。今はまだ電柱と電線があるのですけれど、将来、電線の地中化を目指していて、そのことを想定した設計になっています。その次がビジターセンターの改修というプロジェクトでした。コンビニエンスストアだった建物を無理やりビジターセンターとして今まで使っていました。このイタリアンカラーぽい照明や看板なども改装して、同じような雪囲いのルーバーと、最小限、外回りを整えて、あとは中のインテリアを変えています。こういう風に一個一個、ちょっとずつやっています。

 

僕は「Techno-regionalism」というようなことを考えていて、基本的に建築も土木もエネルギーもそうなんですが、全部、技術だと思うんですね。僕ら建築家も技術者だし、基本的には技術から生まれるものがあるのですけれど、現代では、技術と地域の関わりが変わってきていると感じています。どういうことかというと、20世紀の技術というのは割と世界中どこでも同じようなことができる、というものだったのですが、これからの技術というのは、その「場所」の良さや資源を使って、そこでしかできないような価値を作れるといった可能性があると思っています。一番わかりやすいのは、この地域の温泉バイナリー発電から生まれたいろんな取り組みではないかと思います。自然エネルギーは、場所によって、温泉だったり、太陽だったり、風であったり水だったりして、使えるものがそれぞれ違う。それらを使うことで街の風景が変わっていく力があると思い、そのような地域に根ざした技術への志向をTechno-regionalismだと僕は考えています。松之山に関していうと、まだまだこれから進行していくプロジェクトであり、これからも続いていきます。

 

※関連コンテンツ: ガラスプラザPRO コラム「新しい建築の楽しさ」
Case21:「松之山温泉景観整備計画」 設計:蘆田暢人建築設計事務所

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