イベントレポート詳細Details of an event

第74回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.19「新しい建築の楽しさ2016」展連動企画
「新築ではつくれない空間をつくる」

2016年11月24日(木)
講演会/セミナー

能作 淳平氏
(能作淳平建築設計事務所)

 

「ショウワノート(株)高岡工場」(富山県高岡市)

 

能作 能作淳平です。よろしくお願いします。今回ご紹介するプロジェクトは、富山県高岡市で進行中のショウワノート(株)高岡工場です。こちらの工場では、皆さん一度は使ったことがあると思いますが、緑のフレームのデザインでおなじみの「ジャポニカ学習帳」がつくられています。しかも生産されているノートはすべてが、この高岡工場だけで作られているんです。ですので、地元の高岡では、ショウワノートさんはノートや文具の老舗メーカーとして有名です。そして今回の計画は、現在も稼働中のこの工場をリニューアルするための建て替えになります。工場の稼働ラインを止めないという条件のなかでの計画ですので、既存工場を残しつつ、それを改修したり、新築や復元をして全体をつくっていきます。そして今回のテーマが「新築ではつくれない空間をつくる」となっておりますので、新築は新築の仕事、改修は改修の仕事と分けるのではなく、なるべく関連させながらどのようにつくっていくのかという観点でお話ししたいと思います。そこで重要になってくるのは時間です。新築として関わる時は、建物の寿命の最初の時、生まれるところにかかわることになります。また改修する時は、寿命の真ん中や終盤あたりに関わることになる。建物の寿命経過の中で、どこで関わるかという視点でつくると、同じように考えられるのではないか、という仮説を立てて取り組んでいます。

 

例えば日本の住宅ですと、建物の寿命はだいたい30年から40年くらいですね。だいたいこれは新築を建てて、定年退職したくらいの時間に相当します。そうすると、リフォームをするのが次の世代が新しい家を建て替えるかどうかを考えるのが30年~40年後くらいになる。また住宅以外の建物では、コンバージョンして違う機能になるということに対応しますね。その頃に、壊すことはしないでそのまま改修して使い続けた場合、それは特定の家族とか、特定の用途を限定されないことになります。先ほどの神本さんのプロジェクトもそうですよね。コンバージョンされていて用途は変わっているけれども建物はそのままである。例えば先ほども言いましたが、30年~40年という「家族の時間」というものを超えて、建物は「モノの時間」のフェーズに入っていきます。これがさらに繰り返し進んでいくと、風景や街並みに関わる、つまり「街の時間」のフェーズに入っていきます。

 

 こういう今の流れの中で、単純計算ですが、建物は変化することが100年のうち4回くらいあります。最初は新築ですし、改修が続いていき、最終的にはたぶんそれがすごく重要なものになってきて、保存というものに段々近づいてくる。そして街や地域の時間のようになっていく。で、ショウワノートさんは、ここでいう3回目の変化にあるのではないかと思います。それは工場の建設から約45年間かけて、例えば倉庫をつくったり、作業場を増やしたり増築を繰り返してきたわけです。

 

スチュワート・ブランドの著書に「How buildings learn」という本があります。その目次が興味深いのですが、「The Low Road」「The High Road」「No Road」と書いてあり、ローロードというのは直訳すると「誰も気にしない建物」、名建築とか建築作品などではなく、好きに増築や改築をされている建物です。逆にハイロードというのは「誇り高き建物」。この写真にありますように教会だったりとか、博物館だったりとか、長い時間をかけてみんなが同じような意識を共有して使われている建物です。それらに対して「No Road」というのは、直訳すると建築雑誌的な建物です。建築家って、こういうのをつくるだろ? みたいな建物ですね。建築学科で習うと、だいたいこういうような建築になるのですが、この本ではこういうものに対して割と批判的なことが書かれているのです。どういうところが批判的かというと、The Low RoadとThe High Roadには時間の概念があるのですけれど、No Roadには時間にはあまり関係なく、自分(建築家)の図面だったり、個人の美学だったり、そういう意識の中での建築だ、と。

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