イベントレポート詳細Details of an event

第74回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.19「新しい建築の楽しさ2016」展連動企画
「新築ではつくれない空間をつくる」

2016年11月24日(木)
講演会/セミナー

小川 博央氏
(小川博央建築都市設計事務所)

 

「クロアチア SKYSCAPEプロジェクト」(クロアチア ザグレブ)

 

小川 小川です。よろしくお願いします。自己紹介をいたしますと、1975年に四国の香川県で生まれて日本大学の生産工学部大学院を修了し、隈研吾さんの事務所に2000年に入って、2005年に独立して自分の事務所を立ち上げ現在に至っております。

 

今回、ご紹介させていただくプロジェクトの敷地は、クロアチアの首都ザグレブにある病院の屋上です。クロアチアは1991年に旧ユーゴスラビアから独立を果たして、はや25年くらい経っています。昨年9月に現地へ行かせてもらったのですが、人が温和というか、僕がゲストで行ったということもあるのでしょうが、優しい印象、親切にしてもらった印象があります。25年前は、ユーゴの内戦をニュースでやっていた記憶があり、すごく殺伐とした国ではないかという先入観がありましたけれど、そんなことはなく、ゆったりとした時間が流れているという印象を持ちました。

 

そこの病院は、がん関連の専門病院と思っているのですが、そこのドクターから連絡をいただき、屋上に病院関係者と患者のための憩いのスペースを計画してほしいとの依頼を受けたのです。「ランドスケープを考えてくれ」と。「それまでそんな場所はなかったのですか?」と聞くと「まったくない」と言われました。旧ユーゴスラビア時代からの建物で、たぶんもう40年くらいたっている建物と思います。10数年前に少し増築をかけており、ちょっと近代的な建築が横に付いていたりするのですが、それでも、今回計画する屋上についてはかなり古い建物です。外装だけは新しくされています。

 

街の中の位置づけとしては、旧市街地側のちょっと中心から外れた位置に建っており、周辺環境がゆったりとした中に建っているという印象です。屋上にはペントハウスがあって、下は病院となっています。ちなみに、こちら側に増築で新しい建物が建っています。そういった場所でランドスケープを考えてくれ、と。憩いの場である、と。ですから建築ではありません。今回のテーマである、新築ではない。建築における新築とはちょっと違う意識だったのです。

 

不思議なものでクライアントから「ランドスケープだ」と言われてしまうと、ついつい床ばかりみてしまいます。言葉の呪縛みたいに「ランド=土地」ですからね。ランドのスケープ、を考えろと言われると足元ばかり見てしまうのです。なおかつ憩いの場ということは、人が座ったり佇んだり、ちょっと会話ができたり、というところで、フロアレベルの計画をずっと考えてしまっていたのです。そうやっていくつか考えていたのですが、まったくいい案が生まれないのです。「なんでだろう?」と考え直してみました。やはり、グラウンドレベルにおいてランドスケープということになると、その他の景色、景観、外部の環境とつながっていくのがランドスケープだと思うのですが、建物の屋上になってしまった時に、そういうものとの縁が切られてしまっている、と気づいたのです。屋上は、地上とはまた違うランドなんだ、と。

 

では、この場所と何をつなげたらいいのだろうか、と考え直すと、普遍的に世界中変わらないものとして「空」とつなげる手法があるのかな、と思いました。ランドから切り離されてしまって「ランドスケープではない」ということで僕は「スカイスケープ」というコンセプトを立ててクライアントに提案しました。そうしたら何ら大きな問題はなく、この計画案で進んでしまい、もう2年前くらいに話が来て、去年、現地に行ったのですけれど、国政選挙があって政治的な絡みもあり、一時ストップしていたのですが、今年の8月に病院の担当者が日本に来て打ち合わせをしました。秋に現地の設計事務所の担当者が来日する予定でしたが、またちょっと止まっております。おいおい動くだろうと思い、ゆるーく待っております。

 

ただ一点、ザグレブの行政にはこのデザインですでに話が通っています。やはり古いヨーロッパの街並みが残るところがあるので、こういったデザインが可能かどうかを確認する必要があったのです。一応、問題ないということにはなっています。

 

さて、ランドから解き放たれた屋上が、空につながる場所になって憩いの場所としてどう考えていくか、と。この屋上の真ん中にペントハウスがあり、いままでどういう使われ方をしてきたかというと、基本的には医者たちの事務スペースになっています。で、こちらに増築された建物があるのです。こちらの建物の非常に痛いところは、患者さんの憩いの場にもしなければいけないのですが、バリアフリーをとれないのです。どうしてもとれない。こちらの建物にはエレベータがあり、こちらの建物にもエレベータがあるのですが、床を、どうしても同レベルでつなぐことができません。仕方がないので、この建物間は階段を上がってまた降りる、という形式をとっていますが、ここに関してはまだ検討の余地があると思います。患者さんは増築側から屋上に出る。一方、病院の関係者はペントハウスのほうから事務スペースを通って屋上に出てくる。一応、患者側と病院関係者側のスペースは切られています。で、ここに空調の室外機がいくつも並んでおり、ここで縁を切るようなかたちになっています。

 

詳しくはビルの四角い形状の建物から、空に向かって形態を変えていくような、床ばかり着目していたのに空に着目して解放されたとたんに、パーゴラをデザインしよう、と。パーゴラで屋上の上を覆いつくしていこう、と。それによって場を規定していこう、憩いの場所を、と考えたとたん、デザインの形が見えてきました。プラン的には四角いプランで屋上から立ち上がりを設けて、パースでいくとこういう立ち上がりを設けて、土を入れて植栽を設け、その高さ、ベンチ高さと同じレベルにデッキを張って座れる場所をその植栽の周りに用意するというものです。そこを四角くつくり、空に向かって円形のリング、構造的にもすべてが連結してバランスをとる形で、それをフラットバーでつないでいく。四角いものが丸いものへと変換していく場所を用意しました。

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