イベントレポート詳細Details of an event

第74回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.19「新しい建築の楽しさ2016」展連動企画
「新築ではつくれない空間をつくる」

2016年11月24日(木)
講演会/セミナー

中崎 隆司氏
(建築ジャーナリスト、生活環境プロデューサー)

 

中崎 みなさんこんばんは。本日のモデレーターを務めます中崎です。今日ご紹介する3人のプロジェクトは、主に建物および建物の一部のコンバージョン、リノベーションでして、一方、次回は街区や通り、運河沿いなどといった少し規模の大きなものを対象としたリノベーション・コンバージョンを予定しています。今日はまず、神本さん、小川さん、能作さんの順でプレゼンをしていただき、その後、今回のテーマ「新築ではつくれない空間をつくる」でトークセッションをいたします。では、神本さん、よろしくお願いします。

 

神本豊秋氏
(神本豊秋建築設計事務所 再生建築研究所)

  

「品川ビル再生計画」(東京都品川区)

 

神本 みなさんこんばんは、神本豊秋です。よろしくお願いいたします。本日、発表するプロジェクトは「品川ビル再生計画」という案件なのですが、古い建物を使って、新築にはない新しい価値のある空間をつくろう、ということをしました。中崎さんが設定された今日のテーマ「新築ではつくれない空間をつくる」に、まさに事務所として取り組んだものであります。このプロジェクトは私の設計事務所と、同じく私が関わる再生建築研究所で取り組んだものです。

 

私の簡単な経歴を申し上げますと、大分県に生まれ、青木茂建築工房という、リファイニング建築、再生建築を得意とする事務所に勤務していました。古い建物を新築の7割で、新築のような空間をつくる、ということをやっていました。耐震補強をしながら古い建築に内外装を更新する設計を行っていました。基本構想や物件をいくつも担当しながら8年間勤めた後、個人の設計事務所をつくりました。

 

現在、いわゆる建築士、つまりライバルや先輩方がこの同じ市場に11万人もおられるわけですね。その中で、建築家として知られるのは一世代に5人程度しかおられません。誰でもが建築家として存分に活躍できるような状況ではなく、市場としては厳しい分野だと考えておりまして、その中で、既存建築の可能性を探る事務所をつくろうか、と考えていたところ、新築も改修も全部やりますというかたちで設計事務所を設立したのですが、仕事のすべてが古い建物の改修ということで回ってきまして、個人のオーナーさん、デベロッパー、大学、ホテル、鉄道会社、そして最後は設計事務所の方々も「一緒に仕事をしよう」というお話をいただきまして、再生建築コンサルタントという立ち位置をもって昨年、再生建築研究所という会社をつくらせてもらいました。既存の市場にある建物の不可能を可能に、ということをテーマに活動しているのですが、今回は、品川の古いビルを活用する時に、個人の設計事務所として設計に取り組みながら、再生特有のノウハウも生かしながら再生建築研究所として、二つの組織を横断して取り組んでいる案件になります。

 

これが品川ビルのサイトです。このサイトを見る際に一つ着目していただきたいところがございます。それは、既存不適格というキーワードになります。周辺が住宅地エリアとなっておりまして、2~3階建ての建物ばかりの中に建っているビルなのです。そこのエリアの中にひとつだけ6階建ての建物が建っているのですけれど、それがこの画像です。今、新築であれば、ここには3階建てまでの建物しか建てられません。もちろん、40年前の竣工当時は適法だったので、既得権益として高い建物のまま現行法規に適して建っているわけです。このような既存不適格の建物たち、新築ではもう建てられない容積を確保した建物をどのように再生していくかを、本日はお話しさせていただきます。

 

こちらが既存建物のアクソメです。上から見た図面ですが、RCの6階建ての建物、地下1階、地上5階という6層建ての建物で、ここに階段室がございます。いわゆるオフィスビルですが、半分以上の借主が退去しており、自社ビルなんですが、もう売りに出そうと考えている案件を、何とかデベロッパーさんと一緒に再生できないか、というような相談でした。ただし、多額の投資はできないので、できるだけコストを落として、耐震改修をするということでした。これが再生後の画像ですけれど、まったく外見は変わっていません。外装を大きく更新する費用はなく、耐震補強やエレベーターの更新などインフラに力を入れるだけのコスト感覚なのです。ただ、既存建物の開口部と階段室、そして屋上の3つですね、できるだけ多くの共用部を増やして、緑なども増やそうというプロジェクトになりました。

 

これは平面計画です。1つの敷地に1つの建物なのですが2つの階段室があるという建物です。その一部を共用部として居室化して、かつ、先ほど容積率が(この地域の法定の)倍以上あるとお伝えしましたけれど、その過剰の容積、オーナーさんは新築市場ではないので、「1㎡でも面積を確保してほしい」という方ではありませんでしたので、そういう部分を共用部として開放し、魅力ある、地域に貢献できるような空間をつくろうという計画です。これは、階段室が居室化しているイメージ図です。なぜ、このようなことができるのか? 閉じられた都心の中の廃墟化したオフィスビルを、都心の中の保育所に生まれ変わらせようというプロジェクトになります。保育所が求める園庭であったり、縦動線を既存建物の構成に重ね合わせながら法的な裏付けを出したりして、用途を変更していきます。保育所というのは建築基準法上でも動線が厳しいので、最上階に設けるのは非常に難しいのです。そこで、地面に接した1、2階、避難がしやすい階に保育所を設けて、3~5階は、子育て支援系の建物に変えていこうというものです。その際、最上階に屋上庭園があるのですけれど、その屋上庭園をつなげる垂直公園を確保しようというプロジェクトになります。

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