イベントレポート詳細Details of an event

第68回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.16「Glass on Details」連動パネルディスカッション
「インテリアガラスのデザイン表現」

2016年3月24日(木)
講演会/セミナー

木下 先ほどのヘリンボーンのガラスについて、あれを作る際に、試作はどのくらい作るのですか?

 

田中 もちろん、試作を山ほどつくります。

 

木下 どのくらいの試作で決着するのですか?

 

田中 あの物件は、店舗としてはそれほど大きくなく、ファサードのあそこ一面に使って、というものでしたが、確か、試作から納品まで1年近くかかったような記憶があります。ああいうことをやりたい、というご相談をいただいてから1年後の納品という感覚でやっています。

 

木下 そんなにかかるのですか。実際に熱加工を行う技術的な蓄積があるのでしょうけれど、経験として、こういう形だったら何℃で何時間くらいとか、そういうノウハウはどうなっているのでしょうか。

 

田中 通常の曲げガラスなら、型をつくってできます。単純な形状であれば熱の回り方などは経験知がありますけれど、ああいった特殊なものは、うちも初めてというか、日本で初めてああいう板ガラスが入った事例でしたので、相談を頂いてから試作をしないとノウハウが分からない部分もあります。今後、もしそういう相談を頂けるのであれば、あの時のノウハウを活かせると思いますけれど。

 

木下 1年かけたということはかなりの費用がかかったと思いますけれど、見積もりなんかはどうなさいましたか? たとえば、基本のデザインを提示されて「こういうガラスを作りたい」と相談された時に、実現前提で取り組むとしたら、当然、見積もりを出さなければいけませんよね。

 

田中 最低限かかる型材などの費用は最初のうちに、少し余裕を持った金額で見積もっておき、途中から試作が多くなる場合は、それに応じてご相談させていただきます。ただ、弊社としても初めてのことにチャレンジするのは価値があるので、相談の上(笑)で、ですね。試作の費用をすべて取るか、というと……。

 

木下 今のお話しは、設計者側からすると、すごく心強い(笑)、言葉ですね。初めてのことはやってみたい、と。

 

大野 そうですね。やはり、そういう人たちと組みたいですよね。でも残念ながらそういう人たちばかりではない(笑)。そういう状況で、どのようにつくるか、全体をマネジメントするか、が僕らの仕事として重要になります。作り手の人たちが、各分野からの情報を積極的に発信してくれればいいのですが、なかなかそうはなっていない。それと、興味本位でお聞きしたいのですが、先ほどの一枚板の、ヘリンボーンのガラスは幅1mくらいで高さ3mくらいと思いますが、窯に入る最大サイズはどれくらいなのでしょうか?

 

田中 窯に入るサイズは、長辺が3500ミリくらいで、短辺が2000ミリくらいでしょうか。

 

大野 基本的にそのサイズであれば、加工として焼くことができる、と。

 

田中 そうです。また、ああいうガラスは「キャストガラス」と言うのですが、それをつくる専用の炉もあります。先ほど言ったように基本的には曲げガラスの製造方法と同じなので、先ほどのガラスはキャストガラスをつくる手法でやっておりますが、応用で言うと、生の曲げガラスをつくる設備としては、設備的には、ですよ、3000×5000ミリという設備があります。現実としてあのガラスをそのサイズでできるかというと、また試作しないと分かりませんが。

 

木下 あのヘリンボーンのガラスはかなり特殊な例だと思いますが、ああいうものではなく、一般的に寄せられる加工に関する質問や相談にはどういうものがありますか?

 

田中 加工全般で言うと、例えば小口の加工については問い合わせがきません。磨き加工や荒摺り加工、あるいは、それ以上の特殊な加工にしても、ガラスの小口を加工するものに関しては弊社に来ないのです。一方、このスタジオのガラスのように中間膜に色を付けるなど「色味を付けたいのだけれども、どういう方法がありますか」とか、最近多いのは「布を挟みたい」「和紙を挟みたい」などの相談です。それと印刷系も増えていますけれど……。

 

木下 布や和紙は、その素材を挟んでみてうまくいくかどうかを試してみないとよく分からないと思うのですが、それはある程度、前もって判断できるのですか?

 

田中 布や和紙であれば、それを見せてもらうだけで経験知からだいたい分かります。その素材を見て、判断してあとは試作品にしてみて、という2段階の判断になります。

 

木下 合わせガラスにすることで、色が変わってしまうとか、質感が変わってしまう、あるいはシワになるなど、マイナスになることもあると思うのですが。

 

田中 やはり、生地にも熱収縮しやすいものがあったりしますし、フィルムでも収縮したりするものがあります。素材を見れば、だいたい予測できますけれど、変色についてはあまり起こらないと思います。ただし、生地を合わせガラスに挟んだら、当初見ていたような色味ではなくなった、というものはありますね。ガラスの色も微かに入るので……。

 

大野 挟むものがガラスのサイズと同じサイズのものではなく、ポイントで何かを入れる、ということ、例えば、押し花みたいなことをするとしたら、どの程度の厚みまでできるのでしょうか

 

田中 合わせガラスを接着する時に入れる中間膜の量を増やせば、割と厚めのものまでいけるのですが、基本的に1ミリ以上の厚みは難しいと思います。0.5ミリや0.7ミリであれば中間膜を増やすことによって挟めます。

 

木下 中間膜というクッションを厚くするということですか。

 

田中 そうです。

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