イベントレポート詳細Details of an event

第68回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.16「Glass on Details」連動パネルディスカッション
「インテリアガラスのデザイン表現」

2016年3月24日(木)
講演会/セミナー

基調講演「インテリアガラスのデザイン表現」 大野力氏(sinato)

 


建築家の大野力氏は、「ガラス(の建築デザイン)は得意でない」と告白しながら、自身が手掛けた作品や他の建築家の作品を紹介し、ガラス・デザインに対する姿勢や工夫、課題などを解説した。例えば、あるコンペで提案したガラスでつくるパブリックアートのプロジェクトについて、ユーモアを交えながら紹介。小さなガラスを何枚も重ね合わせ、熱加工して溶着させる計画である。隙間だらけのきれいなガラス屋根で公園の植物を粗く覆い、命を持つ植物の暴力性や自然が備える汚れと、ガラスの無機質な美しさを同居させるというものだ。最終審査で技術的な実現可能性を問われ「わからない」と正直に答えた結果、挑戦する機会を逃したという。

 

また、重い、割れやすいというガラスに刷り込まれたイメージを覆すような提案をした作品の紹介、あるいはサッシで見慣れてしまった定番のガラスのイメージを逆用し、納まりやディテールを少し工夫するだけでドキッとするガラスのデザイン空間が現れることも指摘した。さらに、中村拓志氏が手掛けたヘリンボーン柄のキャスティングガラスによるファサードを賞賛し、そのような特殊加工に興味があることを述べた。 そして大野氏自らが手掛けた作品例の解説では、納まり等で工夫する例、小口や面の反射と透明感を活かす配置の例、オープンしたばかりの新宿駅・新南エリアのガラス・デザインでの工夫と考え方について述べ、基調講演とした。

 

パネルディスカッション「ガラス加工がデザインに果たす役割」

 

木下 ここからは田中亜依さんにも加わっていただき3人でパネルディスカッションをいたします。田中亜依さんは、三芝硝材株式会社というところで主に設計事務所さん向けに技術提供的なお仕事をされています。三芝硝材さんについてご紹介しておきますと、本社が富山県の高岡にありまして、日本で一番大きなガラス加工会社さんではないかと思います。この「大きな」という意味はボリュームもそうなのですが、例えば、合わせガラスの最大のものは長さ12mくらい、高さで3mくらいのものになりますが、そのくらい大きな合わせガラスの加工機を持っておられるとか、さまざまな加工のバリエーションの広さも、おそらく日本一ではないかと思います。そのようにガラスの加工に関して本当に専門でおられまして、大野さんとも興味深いお話しをしていただけるのではないかと思います。申し遅れましたが、私は旭硝子の本社広報IR室におります木下純と申します。よろしくお願いします。

 

さて、先ほどの大野さんの講演でも「ガラスの加工は難しい」というお話しがありました。確かに我々も反省するところなのですが、ガラス加工に関する情報は決して多いとは言えないと思うのです。この情報の少なさというのが、扱いにくさにつながっているような気もします。ただ、設計者さんとデザイナーさんとガラスの加工をする方が、協力して回答を見つけると驚くようなものができるケースがあります。古い話ですけれど、倉俣史朗さんはクラッシュガラスを最初に作品として世の中に出されましたし、フォトボンドで透明ガラスをくっつけて椅子をつくられたりもしました。これらの作品は、倉俣さんのアイデアがあってこそ、なのですが、やはりガラスの加工者が親身になってフォローし、一緒につくりあげていくことで初めてああいうものが生まれるわけです。我々旭硝子は、あくまでもガラスメーカーですのでシートガラスを供給するだけの立場なのです。だから、ガラスの加工については基本的にあまりやっていません。基本的に元のガラスを供給する側です。それに対して、実質的な加工をするのが三芝さんのような会社さんです。建築では設計者と加工者ががっぷり四つに組んで、物件単位でものごとを運んでいきますので、その中ですごく濃密な加工の話になるわけで、有用な情報が拡散していかないのです。そういうことから「ガラスは扱いにくい」「加工が難しい」というイメージにつながっているのかと思います。そこでまず、実際のところ、大野さんが「ガラスに関する情報が少ない」とお感じになっているかどうか、お聞きしたいのですが。

 

大野 確かに少ないかもしれないですね。たぶん、知らないという側面が強いのでしょうね。「あんな加工も、こんな加工だってできる」ということを知らない人が多い。また、それをできると知っていたとして、どれくらい大変なのか、コストはどうなのかなどがよくわからない。他の建材だと、ものにもよりますけれど、設計事務所に営業マンがやってきて、「こんな新商品が出ました」とか「こんなこともできます」など、情報が自動的に入ってくるような実態があるのですけれど、ガラスに関しては、そうなっていない。僕自身は、いろいろとできることを最低限分かっているのですが、一番のハードルは、やはり時間とコストがイメージしにくいことです。そういう中で日々のプロジェクトが動いていると、さまざまなガラスの加工までなかなか踏み込んでいけない。そういう壁があると思います。

 

木下 確かにコストについての情報はほとんどなく「やってみなければ分からない」という側面があるように思いますね。そういう点に関して、田中さんの印象はどうですか?

 

田中 大野さんの話にもありましたが、どの設計事務所さんにうかがってもそうなんですが、やはり扱いにくいイメージがあるのかな、と思います。「割れる」とか「重い」というキーワードが出ましたし、あと「現場で加工できない」ということもあるような気がします。まぁ、ガラスにしかない重厚感や高級感をぜひ使っていただきたいと思い、営業しますけれど、設計者の方からすると強度計算なども大変だったり、割れたら危ないと、慎重に検討されているのだろうという気がします。

 

大野 そもそもガラスって、一般の人を含めて「割れやすい」「壊れやすい」「儚い」とか、そういうイメージが付きまとっている。だから、普通の建材だったら、誰もギャアギャア言わないのに、ガラスになった瞬間に言われる、ということが結構あります。例えば、ガラスを壁面に接着で施工しようとしますよね。普通、木や金物などを壁に貼る時に、その仕上げ材のところの強度を心配する人はあまりいないのですが、ガラスになったとたん「それ大丈夫か?」となってきます。実は先ほどの新宿駅のプロジェクトでも、強化ガラスを単品で使うことが出来ませんでした。必ず合わせガラスにしないといけない。かつて強化ガラスで問題が起きたことがあったらしくて、それ以来、危険防止のため必ず合わせを使うことになっているらしいのです。設計者に限らず、一般の人にもガラスに対する過剰な不安感があるのかと思います。

1 2 3 4 5