イベントレポート詳細Details of an event

第71回 AGC studio デザインフォーラム
ガラスラボ企画vol.2「空間を魅せる光とガラス展」連動企画
「空間を魅せる光とガラス」

2016年3月10日(木)
講演会/セミナー

平松 最近、このような調査結果を見ると、ストレートに費用対効果として評価する傾向が特にアメリカではあります。研究の1例を挙げると、席によって外の見え方が違うわけですね。そういう眺望のレイティング、視界に入る緑の量をレイティングして指標化し、作業性を比較する、という研究が多数あります。その結果、例えばここに書いてあるように、「水が見える景色は27%高い賃料を獲得できる」とか「自然光が入る教室では20%から26%得点があがります」とか「昼光が入る景色のいい病室では入院期間が短くなる」といった調査結果が出ています。入院期間の短縮は、個別には小さな費用削減ですがアメリカ全土で考えると非常に費用対効果が大きくなる、ということですね。さらに、このグラフはオフィスにかかるコストを調べたものですが、そのコストのほとんどは人件費にかかわるものです。ここでは80%となっています。実際に私たちが減らそうとしているのは空調や電気使用量などエネルギーコストなのですが、これにかかるコストは全体の0.8%しかない。とすると、80%を減らしたほうがいいだろうということが言えて、ずる休みをなくすためにオフィス環境をよくするとか、生産性を上げるなどという方策に行き着き、光環境が良ければ、オフィスのコストを下げることができる、と。

 

またアメリカでは4年ほど前に「バトル・フォ・ウオール」というものがありました。これはアメリカ政府と空調学会が省エネを理由に窓の開口率を小さくしようということを言い出したわけです。壁に対する開口部の比率が40%程度あるのを、30%にしよう、と。これは業界にとって一大事なので、業界側も闘ったわけです。その時に根拠にしたのは「ノンエナジーベネフィット」でした。ちなみに、何で30%という数値が出てきたのかというと、ご存知のように高効率の照明が使われるようになり、自然光を取り入れなくても(高コストでない)という意見が出たわけです。それに対して業界が訴えたのは、先に紹介したのと同じ内容で、80%がオフィスの人件費であり、エネルギー費は0.8%でしかない、と。この80%の効率に寄与しているのが自然光などであるということでした。参考までに触れますと、例えばいま日本では冷房の温度を28℃に設定するよう推奨していますが、本当にそれでいいのか、という問題です。こちらは5年前の研究ですけれど、確かに冷房温度を25℃から28℃にすると省エネ効果は上がるのですが、一方で作業効率の点で考えると損失のほうが大きい、というものもあります。体感温度には個人差がありますので一概に言えませんが、全体と個別で考えようという考え方があるのです。そのようにノンエナジーベネフィットとエナジーベネフィットは両輪として考えないといけないわけです。

 

ではここからは具体的にガラス商品の紹介を行います。まず、日射を遮りながら光を通したい、ということがあります。そこで我々はガラスに金属を添加したり、コーティングをしたりしています。特にコーティングでは銀ですね、導電性の薄膜を使うと可視光線だけを通します。そうしたLow-Eガラスの代表的なものを紹介しますと、こういう製造装置を使うと薄膜を均質に付けることができますし、材料や密度などを変化させることでいろんな製膜をすることができるわけです。ここに書いてあるように、通常のガラスは日射全体を通すわけですが、薄膜の技術を使うことで可視光線だけを通すようなガラスができます。ここに1Ag、2Ag、3Agと書いてありますが、これはガラスに付ける銀の層の数です。層の数を増やすことでこのグラフが切り立ってくる(遮熱性が向上する)わけです。我々はこういう技術を用いてさまざまなガラス製品をつくっています。みなさんはガラスの種類について詳しくないかもしれませんが、これはアジアにおけるガラス製品の展開例(グラフ)ですけれど、カタログ上にあるガラスを全て挙げただけで、これだけあります。横軸が可視光線の透過率、縦軸が日射の透過率です。これを見ても分かるように、例えば、太陽光の透過率が40%だとすると可視光線としては、あるものは20%しか入れないし、あるものは10%だったりして、非常に幅広いラインナップを揃えています。お客さまのニーズは多彩で、例えば色味や省エネに対する考え方など多様なので、それに合わせて広いレンジの製品を提供しております。なお、余談になりますけれど、先ほどガラスは光だけを通す、と話しましたが、実は電波も通すので、建物の中に居ても携帯電話が通じるわけです。そしてこの電波の吸収率(=透過率)を、光と同じような設計方法で調整することもあります。例えばETCのゲートでは電波吸収されるガラスを一部使ったりしています。

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