イベントレポート詳細Details of an event

第71回 AGC studio デザインフォーラム
ガラスラボ企画vol.2「空間を魅せる光とガラス展」連動企画
「空間を魅せる光とガラス」

2016年3月10日(木)
講演会/セミナー

「ガラスのいろいろ」

平松徹也氏(AGC 旭硝子株式会社)

 

平松 旭硝子の平松と申します。今日はメーカーとしての話をさせていただきます。この画像は私どもの建築用ガラスのカタログです。このように、さまざまな種類のガラスがありますけれど、この紫の線で囲んだ製品群が、光に大きく関係するものだろうと考えています。例えば、このエコガラスなどは光をどのように取り入れるかが大事な製品ですし、これは熱線反射ガラスですね。また学校用のガラスなどは自然光の採光と大きく関係していますし、こちらにたくさん並ぶデザインガラス群やカラーガラス類も光と大きく関係してきます。ちなみに、このカタログの表紙には次のように記しています。「私たちは、最高品質のガラス技術を駆使し、新たな価値を”+(プラス)”できるパートナーとして『安心・安全・快適』を追求します」、と記してありまして、我々はエコや省エネ、リフォームやデザインなどに関する価値観を提供しようと考えているのですが、次の「何か」というものについても常に考えています。例えば最近だと「軽さ」がキーワードになっており、スマートフォンに使われている薄いガラスを建築用に使ってみようとしておりますが、その次は「明るさ」だったり、「健康・快適」「オフィスの生産性」また「情報発信」などというテーマもあります。今日は2つのパートに分けてお話ししますが、最初はガラスの魅力について話そうと思います。

 

これは、光の波長を示した図です。みなさんが目で感じているのは可視光線なのですが、ここにあるのはガラスのスペクトルと日射のスペクトルです。日射のスペクトルは300から2500ナノメートルなのですが、透明ガラスはちょうど、この日射のスペクトルを通します。バンドパスフィルター的なところなのです。もし、ガラスが可視光線を通さなければ向こう側が見えなかったわけなのですが、こういうスペクトルとの関係が面白いところだと思っています。一方で、ガラスは光を通しながら空間を仕切る、熱、湿気、雨、風、音、虫などを仕切るわけですね。もちろん、湿気や雨、虫などはきっちり通さないし、音や熱などは完全には仕切れず程度に差がありますけれど……。このような可視光や日射を通す一方で仕切れる、という便利な性質が古くから窓などに使われてきたわけですね。ローマ時代、紀元400年くらいから板ガラスを使ったという説がありますし、実際は中世以降に窓に入ったようなのですが、そこに書いてあるように壁とは違い、空間を緩やかに仕切るのがガラスの特長です。

 

これが普通の透明ガラスなのですが、そこにさまざまな技術を追加することにより、仕切りの程度を調整することができるわけです。また、空間の質感を変えるという点では、先ほど久保先生が紹介されたような話がありますし、ステンドグラスなどは非常に際立ったものといえます。それからガラスそのものの質感にもガラスの魅力があると思います。この仕切りという観点で言うと、極端な例では、このストラスブルグの駅舎のように古い歴史的な建造物全体をガラスで囲んでしまうこともできますし、こういったガラス構造物がありますけれど、これはもちろん、中の構造物が重要なわけです。ただし、ガラス自体にも重要性があり、(新国立美術館を例示して)反射や映り込みなどが起きるためにガラスが使われるわけです。また仕切りとしての使い方としてはオフィスで採用される例が多いです。オフィスでの使い方の背景として、人の繋がりを重要視しているところがあり「知的生産性」という問題があり、それを低下させずに仕切りをつくれるところに魅力があると考えます。

 

 一般に透明なガラスは日射や可視光を通すのですが、技術を用いることでガラスの色、意匠、表情、質感、視認性、拡散などの付加価値を付けることができます。先ほど久保先生の講演の中でもスネルの法則やマックスウェルの実験などに触れられましたが、基本的には電磁波としての性質で現れる現象なので、技術でそういうことを導くことができるわけです。例えばガラスそのものへ着色したり、メガネの反射防止膜と同じで光学多層膜で調整したりなどします。カラーガラスで操作したりテクスチャー散乱、屈折、反射などもあります。最近、私たちが取り組んでいるのはよりマクロな視点で、異素材との組み合わせをすることです。太陽電池であったり、LEDであったり、今回、紹介させていただくラミシャインもテクスチャーの付いた異素材とガラスの組み合わせです。

 

ガラスのもう一つの魅力は、光そのものが持つ魅力、その光を通す、という魅力です。最近は光や眺望などに関する効果を取り上げられることが多いし、研究もさかんになっています。「ノンエナジーベネフィット」と呼ばれ、例えば健康とか、快適性とか知的生産性などに着目されています。近年はガラスの断熱性や遮熱性に注目する傾向がありましたけれど、もっと他の要素も見直そうという意識が業界にもあります。日本板硝子協会が「窓の心理的効果とその魅力」などを訴えていますし、アメリカでも州として自然光の良さを見直そうという動きがあります。これはカリフォルニア州の文献です。「自然光を使ったオフィスはいい」とか「自然光を使った学校はいい」、また「自然光を使った小売店は売り上げがいい」などとアピールしています。板硝子協会が1月にまとめた「窓の生理的・心理的効果とその魅力」の前書きがありますので読み上げますと「古代文明やエジプト文明では自然光は全ての生命の源として崇拝され?」とあります。まぁ、昔は良かった、という話なのですが、20世紀の初めにおいてもそういうブームがあり、最近は設備や照明技術の向上により、自然光の利用がおざなりにされている部分があり、それを見直そうとの動きがあるわけです。

 

日本では最近、スマートウエルネスという言葉があるようです。これは健康をベースとした知的生産性の実現を意味するようですね。このあたりの話題はお金の絡んだ下世話な話になることも多いのですけれど、これは光環境や眺望の良さについて書かれた論文が非常にたくさんある、ということを示すウェブページです。例えばオフィスだと好みの席でテストを行った研究があります。この好みの席とは、景色が見えて昼光の入るところなのですが、そこでは得点が20%アップしているとか、景色の良い環境では作業性が◯%アップするとか、一方でグレアな場所、眩しい場所は効率が落ちるなどといったことも指摘されています。昼光のあるオフィスに移動したら欠席が15%減った、などというものもあります。さらに小売りについても、僕はこの調査はかなり恣意的と思うのですが、昼光を利用した店舗は、そうでない店舗より0~6%売り上げがアップするといったものもあります。

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