イベントレポート詳細Details of an event

第71回 AGC studio デザインフォーラム
ガラスラボ企画vol.2「空間を魅せる光とガラス展」連動企画
「空間を魅せる光とガラス」

2016年3月10日(木)
講演会/セミナー

久保 次は「虹のチャペル」という結婚式場の事例です。これが元のチャペルですが、バブル期に建てられた錫を使ったチャペルでして、当時は人気が出て、テレビドラマやコマーシャルなどに使われたらしいのです。しかし、今見ると、少しゴテゴテして装飾過剰な印象で、今の時代に合わないとの評判でお客さんがなかなか集まらないということでした。そこで運営者が替わり、大々的にリニューアルするということで私たちが関わることになりました。クライアントからは、このスペースを「自然な光を使ったナチュラルな空間にしてほしい」という要望がありました。ここにハイサイドライトが少しあり、薄い、高さの低い窓でそれほど強い光が入ってくるわけではないのですが、この光を結婚式場にふさわしい祝祭性を帯びた光にできるだろうか、と考えました。ここでは光に色味を加えることを試みました。このハイサイドライトの窓台の部分に色を付けると、太陽の光が入って来た時に、ここでバウンドして中に入るのですが、ここに塗られた色がその光に少し映り込む(溶け込む)のです。これが実物大で実験したものです。緑色に塗られた部分に光が当たってバウンドすると、このようにうっすら緑色に色づいた光ができます。こういう現象を利用して、このように窓枠から虹色の光が漏れるような設計をしました。虹は旧約聖書の中で約束の象徴として記されており、虹色の光がチャペルに入るのは祝祭性の表現でもある、と。でき上がったものがこの写真です。リブの裏の窓台が虹色に塗られており、その色を含んだ光が当たることで、リブにうっすらと虹が映り込みます。この壁面はリブを下まで落としており、こういう楕円形の平面形状は音響障害が起きやすく、音も焦点へ集まってしまうという問題もあったので、このリブは光音をさまざまな方向へ拡散させる役割も持たせています。*詳細を写真で紹介。

 

次は「船橋藤原三郵便局」の事例です。人の流れを光でコントロールできないかと考えたものです。郵便局は複雑多様な施設で、郵便物を扱う機能・スペースと、保険契約などをするスペース、預貯金の手続きをするスペースなど多様な機能が集まっており、さまざまな人がさまざまな目的で利用します。滞在時間も人それぞれですね。郵便局はそのようにコンパクトだけれどもいろいろな使われ方をしています。そのような複雑さを、光を使ってコントロールしようと考えました。まず、敷地の条件も少し特殊で、このような交差点に面していて、多くの人の流れがこの交差点から来ます。同時に、この裏側にも駐車場があり、裏側から来る人を入り口に誘導する必要もあります。そしてこの入り口は郵便局の標準仕様として1つしかつくれない条件だったのです。そこで、この角に入り口を設け、この奥と手前の両方から人の流れを誘導しなければなりません(*平面図で敷地環境等を紹介)。こういう敷地環境の条件と、内側のプログラム(目的や滞在時間の多様性)などを処理するために、このように窓の大きさを変化させながら外壁の色にもグラデーションを付けて変化させました。この入り口部分を最も明るくし、外部からの人の流れをつくり出していきます。一方、中へ入ると、この裏返しになり、入り口付近にある郵便窓口は人が短時間で入れ替わる空間であり、大きな窓から入る外光が多く、明るい空間になっていて、入ってすぐそれと分かる場所になっています。そこから奥へ行くほど開口からの光を絞って落ち着けるスペース、ゆっくり相談をする空間になっており、外光からの明るさでグラデーションをつくり、居心地の操作をしています。床の色も少しずつ濃くしていくような操作を行い、光の当て方だけでなく、当たる面自体も工夫してデザインしました。このように光や開口で人の流れと居心地をつくれるのではないかと思っています。*写真で外観、内観を紹介

 

次は「伊勢町公衆トイレ」(群馬県中之条市)のプロジェクトです。ここでは清潔感をつくることを考えました。私はいろいろなプロジェクトに対して視察を行います。温泉の仕事が来た時には、全国各地の温泉を回って、半分くらいは旅行気分で視察ができて良かったのですが、公衆トイレの視察では、行く度に「陰気なトイレばかりだなぁー」と感じていました。そのようにトイレを見て回っているうちにひとつ気付いたことがありました。今、多目的トイレなど標準として四角いトイレが多いわけです。そういうトイレでは、角や隅が薄暗さを生じさせて陰湿な雰囲気につながっている、と分かったのです。そういう隅を掃除してないトイレだと、そこに蜘蛛の巣があったり、ゴミや汚れが溜まったりしていますし、光が当たらずに陰ができることによって薄暗さや汚さを強調してしまっているのではないか、と気付きました。そこで、角、隅のないトイレをデザインすれば明るくて清潔感のあるトイレになるのではないか、と考えました。このように円弧状の部屋にして、敷地の条件が、このように道路側からのアプローチと、駐車場側からのアプローチの両方に配慮しなければならず、こういうS字型のプランを考えました(*平面図で解説)。このトイレがある中之条はビエンナーレを開催しているまちで、2年に1度アートの大イベントを開催しており、「普通のトイレではなくアートのまちにふさわしいトイレに」という要望もありました。でき上がったのがこちらです(写真)。ここにトップライトがあり、そこから光を取り込みます。それをこの曲面の壁に当てることによって部屋全体に光を拡散させます。そうすることで薄暗さのない開放感のあるトイレになるだろう、と考えたプロジェクトでした。

 

次は太陽の自然光が入らないところで、照明の光を使って空間をつくったレストランの例です。このように既存の内装を解体した時にすごく厚い壁が出てきたので、その壁を活かすために明るいスペースと暗いスペースを分離してつくりました。明るいところでは仲間とにぎやかに会食でき、一方の暗いスペースではカップルや夫婦でゆっくりと飲食する、という設計です(写真で紹介)。またこちらも照明を使ったマンションのリノベーション例です。マンションというのは採光条件により、表と裏がどうしても生じてしまうと思っております。こういうベランダのある窓から光が入ってくる一方、その裏側の共用部に面したところからは自然光を採ることができなかったりします。そこで、こういった構造体の梁と壁を少しずらして隙間をつくり、トップライトのような人工光をそこから落とす、ということを考えました(写真で解説)。トップライトは多くの建築家が住宅で採用しており、「建築家はすぐトップライトを付けたがる」「トップライトがあると暑くてたまらない」という話もよく聞くのですが、トップライトも、そこから入ってくる光をうまく拡散させて部屋に充満させるという視点が非常に重要だと思っています。ただ単にトップライトがあるだけなら、太陽の直射と暑さだけが入ってくることになりかねないので、いかにして快適な住環境にするかを考えねばなりません。光に対するそういう視点が大切です。

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