イベントレポート詳細Details of an event

第67回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.15「新しい建築の楽しさ2015」展連動企画
「文化を再編集する」

2016年2月18日(木)
講演会/セミナー

畝森 これは全体構成を示したアクソメです。東西にある通りを1階のエントランスでつなぎ、2階より上は様々な形のフロアを重ねます。先ほど動詞的な機能と言いましたが、例えば2階には子育ての相談などができる「そだてる」フロアや屋内遊具のある「あそぶ」フロア、児童図書が多い「しる・そだつ」フロアなどがあります。3階は一般図書が多い「まなぶ」フロアとキッチンスタジオやクラフト室などのある「つくる」フロア、4階には楽器の演奏や軽運動のできる「うごく・かなでる」フロアなどを配置しています。最上階の5階は会議室などの「あつまる」フロアや、須賀川出身である円谷英二さんの特撮関連の展示フロアとしています。このように動詞的に機能を分け、それらをエレベータや階段、スロープなどで回遊性をもたせながらつないでいきました。

 

また施設全体が図書館とも呼べるような計画としており、3階の「つくる」フロアや4階の「うごく・かなでる」フロアなどにも本棚を配置し、本と活動をセットで考えています。一般的に図書館は80年以上も前につくられた十進分類法(NDC)によって本の種類を分類、管理していますが、例えば「自然」というキーワードで蔵書検索をすると2類、4類、5類の本がヒットしてしまいます。つまりほとんどの図書館では「自然」に関する本は分類ごとにあちこちバラバラな場所に置かれている。「自然」について調べたり学んだりしようと思っても、分散して置かれているので限られた本にしか出会えないのが現状です。当初から探していた本は検索して見つけることができますが、それ以上の自分の知らなかった興味や知識を広げてくれる本には出会えないのです。そこで僕たちは須賀川独自の新しい分類をつくろうと考えました。「つくる」や「かなでる」など活動に合わせたテーマに本を分類し直し、活動と情報がすぐ近くにあることでお互いを補完し、新しい発見が生まれる状況を目指しています。*アクソメを使ってプランを詳しく紹介

 

 このように複数のフロアに本を配置しているので「管理が大変ではないか?」という心配もありました。そこで小さな図書カウンターを各フロアに分散させて配置しています。通常は大きなカウンターで一元的に管理をするのですが、ここでは「止まり木カウンター」と名付けた小さなカウンターを複数設置し、さらに職員がカウンターにずっと座っているのではなく担当のフロアを歩きながら気軽に市民の相談に応じる働き方を考えています。例えば本の相談を受けた時や本の修理が必要になった時に近くの「止まり木カウンター」でパッと作業ができる、そういった働き方を図書館の人たちと一緒に検討しています。

 

本が最も多い3階の「まなぶ」フロアは公民館的な活動をできるようにしています。各テーマに合わせ、囲うように本棚を配置しその中央にテーブルや展示ケースなどを置きます。例えば地域や歴史に関するスペースでは須賀川の古地図などを展示し、歴史について学んだり話し合ったりできます。4階にはガラス張りの楽器演奏をできるスペースがあり、その近くの楽譜を閲覧したり音楽CDを聞くことができます。本を借りに来た人は知りたかった情報を得るだけでなく他の人が活動している様子を見て「ここで演奏もできるんだ」とか「自分もあの楽器で練習してみよう」といった興味の可能性を広げることに繋がります。反対に演奏を目的で来た人も、音楽に関するさらに深い知識を本との出会いを通じて得ることができます。

 

これは全体の断面図です。構造は鉄骨造で、3階と4階の一部をトラス梁としています。この建築は各階の床が平面的にずれているので柱を同じ位置に通すことができません。そこで中間階にトラス梁によるメガストラクチャーを構成することで上下階の柱をずらして配置することを可能にしました。メガストラクチャーを基点に上階を支え、さらに下階の床を一部吊っています。そういった様々なスケールや機能をもつ床が集まり、お互いを支え合いながら全体をつくる構造をイメージしています。メガストラクチャーの中には空調等の機械を納めたり、また厚みを利用した吸音層としています。巨大なワンルームのように静かな場所からにぎやかな場所までを壁やガラスで遮断することなく緩やかにつながるように音響実験をしながら検討しました。

 

 また設計が始まって以降、チーム体制も考え直しました。もともとは僕たち設計者だけだったのですが、ワークショップや図書館のコンサルタントをチーム内に加え、市の側にも(縦割りの各担当部署ではなく)交流センター専属の整備室を設置してもらうよう市に提案しました。施設の使い方やプログラムを設計の段階から一緒に考える体制が必要だと思ったのです。市民ワークショップも継続的に開催し、オープン後の運営に関わってもらう市民サポーターを育てることも進めています。また交流センターのプレサイトを開設し、僕たち設計者やコンサルタント、市の職員も自由に書き込みをし、市民に向けて情報発信をするようにしています。そういった様々な取り組みを通じて市民文化をつくること、新しい交流の場をつくることを目指しています。

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