イベントレポート詳細Details of an event

第65回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.15「新しい建築の楽しさ2015」展連動企画
「親和性を生み出す領域」

2015年12月3日(木)
講演会/セミナー

 

中崎 みなさんこんばんは。司会進行を担当する中崎です。今回のデザインフォーラムは「親和性を生み出す領域」というテーマで進めます。まず、3人の建築家に1階のギャラリーで展示しているプロジェクトについてそれぞれ発表をしていただきます。その後、トークセッションを展開する予定です。では、浜田晶則さんからお願いします。

 

 

浜田 出展しているプロジェクトを紹介する前に、僕が設計をする時に考えていることを話します。僕は建築に加えデジタルアートにも取り組んでおりまして、デジタルアートと今後の建築が、結びつくところがあると考えております。これはちょっと前にパリのルーブル美術館へ行ったときの写真です。この群衆の前にモナリザの絵が展示してありますが、とにかく人が多くて絵の前までたどり着けないのです。「人が邪魔だ!」と思いました(笑)。僕は、そういう、他者の存在が邪魔になるような状況を変えたいと考えています。例えば、他者がいることによってより楽しくなるとか、人が多くいることでより良い状況が生まれるような、そういった関係をつくれないかとデジタルアートの活動を通して考えています。例えばセンシングなどの技術や、その他様々なデバイスで人々が参加することができるようになった時に、他の人の存在がうれしくなる状況があると思います。今年の夏、香川県のサンポートで、花火を立体に映像化したパブリックアートのイベントを開催しました(動画で紹介)。このような夏の花火のアートイベントに多くの人が自分で花火を打ち上げて参加できる。これを独りだけで見ていたらすごく寂しい花火のイベントなのですが、都市の中で、みんなが集まっている状況をつくりたいと思うのです。インターネットによって僕らは自分から発信することができるようになったわけですが、そういう能動的に関わることができる状況をパブリックな場でつくったのですが、そういったものをテーマにして建築を考えていきたいと思っています。

 

綾瀬の基板工場のプロジェクトについて話します。場所は神奈川県の綾瀬市です。厚木基地のすぐ近くの場所で、市内には鉄道の駅が無く、車がないと不便な場所にあります。最初は「基板工場の作業場の増築をしたい」という依頼を受けました。この写真が敷地ですけれど、この前が駐車場になっており、ここに建てたいと言われていました。まず、基板製造に使う機械類のリストをいただき、それの整理をしてプランをつくっていました。しかし、設計を考えながら増築棟のあり方についてお施主さんと一緒に考えていくなかで、作業場とは異なったあり方もあるのではないかと考えるようになりました。ここは準工業地域で、住宅と工場が入り交じったエリアになります。工場と住宅の共存が特徴的なのですが、この両者の関係が断絶されているような印象を受けたのです。そこで、既存の工場と近隣の民家をうまく取り持つような建築がつくれないかと考えました。現在2棟建っているのですが、事務所機能を増築棟の2階に持っていき、空いた元の部分を倉庫や作業場にできるように配置を再編して「増築棟の1階は空っぽな空間にしませんか?」という提案をしていきました。

 


大概のオフィスは、休日に閉まっているのですが、平日も休日も稼働している状態をつくることができないだろうかと考えました。この会社は定期的に地域の清掃活動などを実施しているので、この場所を使ってもっと地域に貢献でき、集まれる場所が必要なのではないかと考えました。通常は社員食堂やショールームとして使いますが、お施主さんのネットワークやCtoCのサービスを利用して場所を貸すことを検討しています。英会話教室や電子工作の教室を開くなど、そのような活動を通して工場と住宅を取り持つような場所にしたいと、一緒に考えやビジョンを共有し発展させていくことができました。そこで、時間をこえて様々な使い方を許容できる空間を用意し、様々な種類の間仕切りや可動の外部スクリーン等で常に能動的に空間や環境を変えていくことができる仕組みを提案しました。
*CGを使ってプランをじっくり紹介。

 

 設備は床下に配置していますが、2階の設備は1階と2階の間の懐の大きな天井裏のような中間層に収めることで、設備が露出した賑わいのある1階と、設備が見えない落ち着いた雰囲気の2階という異なる空間のイメージをつくりました。

 

 このように住宅と工場という都市における異なる要素、空っぽの様々に変化する場所と事務所という建築として異なる要素を何かを犠牲にしながら綺麗に統合するのではなく、少しいびつでも互いに大事な存在として共存している、という状態をつくれないかと考えてきました。この画像は、イソギンチャクとヤドカリが互いに依存し共存している「Mutualism」と呼ばれる相利共生の状態ですが、このようにきれいな統合ではなく、いびつながらも共存している状態を目指して設計をしています。特別な用途のない「何でもない、けれど何でもありえる」という空間は日本建築における座敷のような場所ともいえるかもしれませんが、所作であったり、どのように使うかという運用までセットで考えることで、より持続的に使われる建築になるのではないかと考えています。

 

※関連コンテンツ: ガラスプラザPRO コラム 「新しい建築の楽しさ」
Case1:「町工場にメイカーズの場をつくる 綾瀬の基板工場」 浜田晶則建築設計事務所

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