イベントレポート詳細Details of an event

第64回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.15「新しい建築の楽しさ2015」展連動企画
「ストリート感が自走を促す」

2015年11月19日(木)
講演会/セミナー

細海 拓也氏
(細海拓也一級建築士事務所)

 

「HOUSING COMPLEX NIIGATA II」(新潟県新潟市 集合住宅)

 

細海 私が今回の展覧会で出展したのは、コンクリートブロックの塊のようなものです。これは賃貸の集合住宅で、まだ計画中の物件なのですが、今回はそれについて説明いたします。計画地は新潟市です。新潟市は北西に日本海、東南方向は山で、その二つに囲まれています。地図のこの赤いポイントが当該敷地になるのですが、山と海も見え、工場地帯や街並など風景が4方向ごとにそれぞれ異なって見える場所です。ここは新潟駅から歩いて10分くらいの場所なのですが、建物は9層を予定しており、上に行くと東西南北の各面からそれぞれに異なる風景が見えます(写真で全方向を紹介)。こちら側が新潟の工業地帯が見え、奥のほうには山が見えます。目の前の道路が、地方都市でよく見られるような、ロードサイドに様々な店がある、そういう風景です。

 

これは敷地周辺のマテリアルを映した写真です。私はいつも敷地周辺のマテリアルや既にそこに存在しているものによる時間の経過みたいなものに興味がありまして、建築もできた時ではなく、年を重ねるといい味が出るような、そんな建築を設計できればいいと思っています。これらは街中におけるマテリアルたちです。これがストリート感につながるかどうかは分かりませんが、こういった素材が経年変化でどうなっていくのかを見ながら、それを建築の中に取り込んでいけるように考えています。このような自然な素材、石や鉄などを好んでいるように思います。これらも敷地周辺で見かける床や地面、壁などを撮影したものです。

 

またこれは新潟市の海沿いに見られるマテリアルで、波消ブロックのテトラポットは、デザインや機能、コストを含めた生産性や輸送性などについて考え抜かれたものでありますよね。そういった全てのことを融合された波消ブロックに惹かれるものがありまして、こういったものを建築として考えられないだろうか、というところから設計を始めました。

 さて、今回のプロジェクトは、敷地として先ほど紹介した、海や山、工業地帯、街並などバラバラな風景がありまして、3層目くらいまで上がると、それらが全て開けるような土地だったので、シンプルな操作で4方向に開いたような建築を設計できないか? というところから入りました。ここに示すように、この同じボリュームを4方向へ回転して積層していったのです。最終的には、右下にあるように、(卍の形を)回転させて積層しています。こういった感じです。

 

プランとして1層目が十字になっていまして、これは幹線道路沿いの敷地に建つ賃貸集合住宅ということですので、極力大きな駐車スペースをとって欲しいと要望が出されていました。そこで十字にしてスペースを取り、その上に4つのボリュームを回転させながら並べていくというシンプルな操作で進めていきます。敷地が38m×22mの広さで東西南北に開いている場所だったので、真ん中に建築を配置しています。先ほどのボリュームを全て重ねて上から見ると、このように線対称のようなものとなっております。4つのボリュームの間は空隙になっているのですけれども、それらは路地的な共有スペースとして考えています。これは下のギャラリーに展示させていただいた模型の画像です。積層する際に、必ず重なる、空隙の生じない部分で構造を支持させ、かつ、そこに設備等を収める予定です。
(*画像を見せながら、言葉だけではうまく説明できない構造や空間を解説)

 

上階へいくに連れ、均質になり過ぎないよう各階に大きめのテラスのような場所を計画しておりまして、それにより、ボリュームが変化するように考えています。この大きな隙間というか、ボイド空間で面白いものが生まれるのではないか、と考えています。シンプルな操作で生じる共用廊下が、路地的な扱いを受けることができるのではないか、と考えています。

 

 私は2013年にも同じ新潟市で集合住宅を設計させていただいたことがあります。これは細長い敷地で、南側だけに開いております。南側に面して住宅を均等に配置した計56戸の9階建て集合住宅です。これはバルコニーの操作によって内外の中間領域との関係性が異なる住戸タイプを7種ほどつくっています。この時に採用したのが一般的な集合住宅の構法(壁式ラーメン構造)で、どの部屋からも同じ景色が見えるわけです。一方、今回のプロジェクトでは、いったん境界を取り除いてしまい、賃貸される方々が自由に部屋や見える景色を選べるようなことを考えています。そうすると、北側が風呂で南側がリビングであったり、東側が寝室であったり、好きな方角、好きな階数で自分の居場所を選べるようにするわけです。

 

この図に示すように、左側は完全にプライベートな場所にして、右側をパブリックなコモンスペースにする、という使い方ができる。先ほどお伝えしたような、居住者が自由に部屋の方角や階数を選ぶことで、「別荘のある集合住宅」をつくろうと最初に考えていました。例えば、リビングとトイレや風呂が別の方向、階数にあり、3階のリビングから4階の風呂へ入りにいくとか、同じ建物内で一度外へ出て、路地みたいになっているコモンスペースを通りながら、風呂へ行ったり、食事に行ったり、などを想像しながら設計します。もちろん、居住者が望めばワンフロアを借りて、移動なしで暮すことも可能です。こういった内部のところにいろいろな居住者間のアクティビティが生まれるのではないか、と。自分が考えるストリート感というのは、こうしたコモンスペースのところに制約を設けないよう考えているので、例えばイタリアのベネチアやナポリみたいに、洗濯物が干されたり、自転車が置かれたり、もしかしたらパジャマのままコモンスペースを歩くような居住者も出てくるし、そこでストリート的なものが生まれる。完全なプライベートな場所と、コモンスペースの場所で、まったく違うような空間ができるのではないか、と思います。集合住宅の一部が自分の家という感じではなくて、この建物全部が自分の家と言えるようなものを考えています。16戸くらいから56戸くらいまで可変式を考えており、来年4月の着工予定になっておりますが、まだまだ検討中な部分も残っております。

 

※関連コンテンツ: ガラスプラザPRO コラム「新しい建築の楽しさ」
Case4:「HOUSING COMPLEX NIIGATA II」 設計:細海拓也一級建築士事務所

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