イベントレポート詳細Details of an event

第63回 AGC studioデザインフォーラム
AGC studio開設5周年記念企画 女流建築家4人によるトークイベント
「わたしたちのケンチクとガラス」

2015年10月30日(金)
講演会/セミナー

成瀬 ありがとうございました。本来の技術の効果とまた違う発見があったということを、私も面白いと感じます。三澤先生はどうお感じですか?

 

三澤 最初の「ガラスの家」には大きな本棚があり、京都の階段室にも本を出すようにしておられたので、それは外を歩く人からガラス越しに本棚が見えるということですか?

 

加茂 時間によって見える時もあるということですね。電流の量で。朝などは透明にしているので……。

 

三澤 見えていながら、本を日焼けさせないことはできないのでしょうか?

 

加茂 西日が最も強い時は完全に遮蔽していて見ることはできない。

 

三澤 西日を遮りながらでも見える、というガラスがあればいいのですけれど、このフランス製のガラスはそうできないのですよね。日本の技術でできるなら、狙い目だと思います。というのも、図書館空間がよく話題になりますけれど、本棚がズラッーと並んでいる空間はすごく素敵で、自分がワァーという気分になるのですけれど、京都の街を散策している時に、そういう光景が目に飛び込んでくると、おっ!となるので、西日が当たっている夕方でもそれが見えるなら、いいなぁと思います。また、ステンドグラスとの組み合わせについて言うと、このガラスのグラデーションは絶妙だな、と思うわけです。ぜひ、京都の現地へ行ってみたいですね。それと2軒目の事例はご自宅ですか?

 

加茂 ええ、自宅です。

三澤 「発見した」と仰ったから分かったのですが、あのお家は(打ちっぱなし内壁)寒くないですか?

 

加茂  寒いです(笑)! だいたいガラスって結露するものじゃないですか。ところが、この家のガラスは結露しません(笑)。コンクリートのほうが結露します(一同大爆笑)。それもいいと思います。「ああー」と、熱貫流率のことを身を以て知ることができる(笑)。普通はガラスのところから湿気や冷気が出てくるのですが、うちはコンクリートからバァーと冷気が落ちてくる(笑)。

 

三澤 今日、私は岐阜の森林文化アカデミーというところからここへ来たのですが、朝は東大の前先生(前真之氏/デザインフォーラム# 17参照)に講義をいただいていて、ちょうど打ち放しコンクリートについて話されていました(笑)。前先生のお話は、データも詳しく、とても勉強になりますけれど、(建築家の作品の温熱環境を)計測されますから、みなさん注意してください(笑)。

 

加茂 ええ(笑)、ただ、夏は意外と涼しいですね。やはり遮熱塗料は熱線を反射する。窓の開け方にもよると思うのですが、風が抜けていく構造になっているので未だにクーラーをかけたことがないのです。(一同驚く) まぁ、耐えている部分もあるかと思うのですが、みなさん、こう話すと驚かれます。でも、あれも感覚が変わるというか、慣れの問題で、「クーラーをつけてない」と話した瞬間に、みなさんおののかれますが、通風や扇風機だけで過ごせないことはない。とくに西側のお家とケヤキの樹のおかげで。

 

 ガラスの家の、あのガラス・ブロックは当時のフランスの発明品だと思うのですが、技術者はああいうふうに使われることを想定していなかっただろうと思います。たぶん……。それをデザイナーの目線から「これはいける!」と思う感覚が面白いなぁ、と思いますね。それと同じような感覚で、現代の新しいガラスの技術を捉えていけるはずだと思います。例えば、電流で透過率が変わるガラスとか、真空ガラスなどはちょっとメカニカルな感じがして、それをデザイン的に扱うのが難しいとの印象があります。技術が発達すればするほど扱いにくいという気分になるのですけれど、よく考えてみると、あのガラスの家をつくった時も、同じような気分というか、扱いにくかったかもしれないので、素材を見る時にまっさらな目できちんと評価し、発見するというのが重要ですね。加茂さんのお話しからそういうことを感じました。あの真空ガラスが(技術的には意図されなかった)美しい効果をつくっているかもしれない、という発見があったわけですね。

 

加茂 あれは熱環境だけを考えてやったのですが、不思議です。これ(写真)はお気に入りの時間なんです。このくらいの光が当たっている時間が……。私が窓掃除をしていないから、こうなるのか(笑)と思い、一度、拭いてみたのですが、やっぱり、このモヤモヤがふぁーんとして映るのです。朝の8時とか9時くらいですね。

 

成瀬 私は電流を流して透過率を変化させるガラスを使ったことはないのですが、遮蔽効果はかなり高いのですか?

 

加茂 高いというか、(見ている側の印象では)真っ黒になってしまうのです。ブラインドを下ろしてしまうのと同じくらいの状態になります。ただ、経年変化を考えると、本当に(室内や書籍が)日焼けしないか、というと、40%は通しているので、少しずつ焼けてくるはずなのです。でも普通なら西側開口に向けて本棚などを置くと、背表紙がまったく見えなくなるくらいに焼けてしまいますよね、そういうことにはならない、と。もちろん、本当に大事な書籍は、そこに置かないわけですね。

 

三澤 日照を遮蔽しているということなので、例えば夏の暑さについても効果はありそうですね。いま私たちが日照遮蔽というと「(物理的に)暗くする」「よしずを垂らす」などしますけれど、こういうガラスが一般化するといいですね。

 

成瀬 では次に、乾さんのお話をお願いします。

1 2 3 4 5 6 7