イベントレポート詳細Details of an event

第63回 AGC studioデザインフォーラム
AGC studio開設5周年記念企画 女流建築家4人によるトークイベント
「わたしたちのケンチクとガラス」

2015年10月30日(金)
講演会/セミナー

 

加茂 みかんぐみの加茂です。まず、これまでにガラス建築で印象を受けたものは、という問いに対しての答えは、単純ですけれど「ガラスの家(グラスハウス)」です。まぁ、ガラスの家というと、大学に入った時からフィリップ・ジョンソンのグラスハウスだ、という印象があります。ちなみに、うちの事務所を志望してくださる学生さんたちに、最近、ちょっとしたテストをしたところ、最近の学生さんはフィリップ・ジョンソンのグラスハウスをほとんど知らないというのが分かりました(笑)。とにかく私の学生の頃は、フィリップ・ジョンソンでした。ガラスというと、やはり透明なものだ、と。しかしピエール・シャローのこれも、名称としては「ガラスの家」なんですね。これがガラス・ブロックというイメージは分かるのですが、「ガラスの家」というイメージでは無いなと思ったことがありました。

 

その後、20年くらい前にここを見学する機会に恵まれ、初めて行った際、思ったよりコンパクトな空間であると思いました。パリの街中からこの中庭へポッと入ると、この建物が現れるのです。まずびっくりするのは、これが改修された建物であるということです。しかも3階以上は残したままで1、2階をぶち抜いている。それが1930年くらいにできているというところにも驚かされる。このガラス・ブロックが1930年ということを考えると、当時としてはすごいことをやっていたわけです。ピエール・シャローは建築家と言うよりも、家具や内装、インテリアデザインがメインなので、どこまで彼がその時代に技術のことを考えていたのかは分からないのですが、とにかくこの空間にはびっくりさせられました。生活空間は裏側にあり、緑の見える透明なガラス空間も居室として持っている一方、ここはサロンとしての空間でした。後で調べてみると、この鉄骨の柱は、支保工がそのまま残っているのだそうで、仮説的な印象もあります。ガラスは工業製品であり、その先端技術でできている空間がとても美しかったです。

 

 次に、私たちの建築におけるガラスについて話します。実は、それほどガラスを意識しないで使っているところがあります。例えば、ファサードが全部透明であったりするとか、そういうものをあまり意識してきませんでした。そういう中でも昨年できた建物があります。これ(写真)は京都大学の東側に位置する路地に建っている木造3階建ての建物です。見ての通り住宅のようにも見えるのですが、フランス国立極東学院の京都支部になります。文献などを集めた研究機関ですね。みかんぐみで設計することになったのですが、こういう住宅街の中に3階建てをつくる、ちょっとした困難さがありました。極東学院は文献資料をたくさん持っていらして、3階は図書室になっているのですが、そういう蔵書の一部を「外に見せたい」という要望がありました。そこで、階段室を本棚にして、そこで見せるというようなことを提案しました。

 

ただし、このガラス面は西面なんです。西日が非常に強いわけで、書物に対してあまり良くない環境で、施主の希望があり、私たちの提案があり、そのような相反する状況が出現した時に出てきたアイデアが、この機能ガラスです。電流を流すことにより1%から60%まで光の透過率を自在に変化させられます。朝などの直射が来ない時は透過率を上げ、日が落ちてきて薄暗くなると、もっと透明な状態、一方、西日がガンガン当たる時はグレーになって光をあまり通さないようになる、というガラスですね。そういうものがあるということで、それを採用しました。そうすると、このような外観で、それが木造のフレームの中で一面のファサードが収まっているのです。規模的にそれほど大きくないので、街の中にスッと収まりました。次の写真が、内側から見た階段室の建具です。ここにはステンドグラスを入れています。これは200年前からある工法を用いてステンドグラスはめ込んでいます。つまり、最新技術を使ったファサードの後ろにある200年前の技術、ということになります。それが共存しており、そのガラスの向こうには京都の街並が見えるようになっています。このステンドグラスのゆがみには味がありますよね。

 

 次の画像は住宅です。住宅では窓をどう考えるかが重要になります。前の建物は西日をガラスの技術で遮ろうとしましたが、ここでは隣のケヤキの樹でよける、というもくろみで、西面を大きな窓にしています。コンクリート造で表面だけを白く塗っており、内側はコンクリート打ちっぱなしです。その白い塗料が遮熱塗料なので、断熱材がなくても多少は温熱環境をよくしてくれるだろう、と考えていました。ただ、ガラスについては単板ではダメだろうと思い、ちょうど木が見える方角はフィックスの大きなペアガラスを入れていて、そのおかげで隣の樹が借景のように内側から見えます。

 

ここで面白いと思ったのは、ペアガラスが、反射率の関係からなのか、外から中が意外に見えないということです。人が外を通っていく際に、目線が気にならないのです。外から中が見えていないのだろうという気がします。自分で外から覗いてみても中が見えないことを確認できました。また、次の写真は、某メーカーの真空ガラスを使っているのですが、光の当たり具合で、白っぽい光を反射しながら木漏れ日が入ってくるのです。木漏れ日が増幅されて入ってくる印象を受けます。おそらく結露を防ぐなどの断熱目的で開発された技術なのですが、そこに新しい木漏れ日の発見、陰のでき方が面白いな、ということに気付いたわけです。部屋の中への映り込みもペアガラスの分だけ激しいのですが、場合によってはこういう関係も面白いので、こういうことで中と外を上手につなげることもできるのではないか、と思ったりもしています。

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