イベントレポート詳細Details of an event

第61回 AGC studioデザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.14「学校の窓から、見えるもの。」連動セミナー
「最新の学校施設づくりについて」~これからの地域社会と学校のあり方~複合化

2015年10月21日(水)
講演会/セミナー

赤松 もう少し時間があるので、似たような複合化施設で、千葉県流山市に開校した「流山市立おおたかの森小・中学校、おおたかの森子ども図書館、おおたかの森センター(地域交流センター)」の事例も少し紹介します。流山市はつくばエキスプレスが開通して、ずいぶん発展しているところですね。この「おおたかの森」は確かにオオタカが棲息しており、そういう森と隣接した場所に小中学校が新設されました。あれだけの森があるので、この『洛中洛外図屏風』のように、樹々の間から子どもたちの活動が見え隠れするような、そんな学校ができないか、と考えました。以前、宇土市立宇土小学校でやったLの壁が1本の木に発展したような、その周りに子どもたちの活動スペースが広がるような考え方です。「木立の広がりにアクティビティが見え隠れする。風と光に応答する建築」というコンセプトです。

 

このプロジェクトは完全に設計者選定のプロポーザルコンペでした。これはその時の提案書です。そのような環境下で、小学校と中学校を併設する新築であり、そこへ地域施設が入ってくるので、明確なゾーンニングで管理しやすい計画にしました。図にあるように、道路に対して建物の配置が斜めに雁行しています。その理由は、この方向が南北軸で風の流れが4月から9月までがほぼ南北方向のどちらかから吹くのです。ここは新設校ですが、流山市で先行して建てられた学校との関係もあって、いくら新設校だからと言ってもエアコンを設置するのは難しく、普通教室はエアコンが一切入っていません。とにかく、風をしっかり取り込んで、夏は涼しく、冬は光を取り込んで暖かく、という設計にする必要がありました。それで道路に対して斜めのこういう建物配置にしました。ただ、こう斜めに雁行していくと道路に対してガタガタのラインが見えてしまい眺めとして痛々しいので、雁行しているガタガタのラインを合理的にスムージングしていき、そこを植栽で整えることにしました。こうして図面で見るとフニャフニャしている形に見えますが、これがやりたかったのではなく、南北方向の通風と採光を考慮した結果、こうなったのです。

 

これが大きな配置図です。グラウンドがあり、おおたかの森があり、住宅地がある。森と住宅地の間にある学校が緑のつながりを切ってしまわないように緑を敷地の中にも配し、つないでいます。敷地のほぼ中心を通る「風のみち」がメーンの通学動線になっており、風が抜けて行くと同時に子どもたちもここからそれぞれの建物へ入って行く計画になっています。道路に面した部分が地域の施設になっています。3階建てではありますが、敷地に高低差があり、グラウンドや森の側が高くなっています。造成するときに1層分の高低差になるように計画しています。つまり、道路側は3階建てなのですが、道路からグラウンドに向かって奥へ行くと、「風のみち」に沿って1層分上がる大階段を設置しております。だから、そこを上がるとグラウンドおよび2階の床レベルになり、グラウンドから見ると2階建てに見えるのです。道路側の1層目には、地域の人が使うおおたかの森センターが入っております。これは、地域の学習館であり、公民館的な機能を持つ、学校とはまったく別の施設になります。一方、このオレンジ色で塗ってある部分、ここに体育館やランチルームなどがあり、音楽ホールもあります。これらはすべて学校施設ですが、地域開放を前提とした学校施設になりますので、まちに対して顔をつくる必要があり、地域の人たちが使う物を前面に持ってきています

 

 一方、この緑の部分が小学校のゾーンになります。この外部の階段を上がっていったところに図書館が入っていますが、この図書館も、地域の子ども図書館と、小学校、中学校の図書室まで含めて一体的に計画されています。先の立川第一小学校の図書館と同じように司書カウンターのところで分けつつ、空間的にはつながるようになっています。流山の場合は、小学校と中学校が併設になり、加えて地域の図書館と公民館的センターと学童保育が入ってくるという複合の形態ですので、(役所の管轄で考えると)全部部署が異なる、という大変さがありました。この小学校と中学校は22,000㎡くらいありますので、かなり大きいのです。そこで、生徒たちが自分の居る場所をつかみにくいところもあると思い、少しカラーリングをしてゾーンを分かりやすくしました。ただ、あらゆるところに色をつけるのではなく、ちょっとだけ、例えば家具の天板だったり、サインの裏側に少しだけ色がついていたり、建具に少しだけ入っていたりなど、同じ色のトーンの違いが、少しずつパラパラと配置してある計画になっています。

 

*写真スライドや図面、動画で各施設、各部を細かく解説。地域への開き方の基本的考えや、それに対する設計上の工夫などについても触れる。なお、流山市は国内では少なくなった「人口および子どもが増加中の自治体」であること、将来への対応などについても言及。

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