イベントレポート詳細Details of an event

第61回 AGC studioデザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.14「学校の窓から、見えるもの。」連動セミナー
「最新の学校施設づくりについて」~これからの地域社会と学校のあり方~複合化

2015年10月21日(水)
講演会/セミナー

 

赤松 ご紹介いただきました赤松です。今日は、私たちが東京都立川市で設計しました立川市立第一小学校と柴崎図書館および柴崎学童保育所・学習館、という複合施設についてお話しします。その本題に入る前に、最近、我々(シーラカンスアンドアソシエイツ)が設計を進めていく中で考えていることについて少し触れます。20世紀の建築は、この図の、大きな矢印で示すように、経済成長や人口爆発、モノが増えていく世の中において、早く大量につくらなければなりませんでした。学校についていえば、基準設計というものがあり、日本全国で同じ規格の南面校舎がどこにでも建つ、つまり、ある一定の似たような性能を持ったものが簡単に素早く建つという状況がありました。それぞれの地域性に細やかに対応するのではなく、早く大量が第一義でした。そうすると、その建築における風や光、音、構造、アクティビティなどの複雑な流れや要素は単純化され、処理しやすく管理されます。それに対し、21世紀になると、この大きな矢印が微分されます。図のような、いろいろな方向を向いている小さな矢印が集まっている状況です。つまり、風や光、構造など建築に関するさまざまな要素が20世紀のようには単純化されず、複雑な流れや要素をロジカルに精密に取り扱えるようになりました。コンピュータの構造解析でもそういうことができますし、風の解析をパソコンレベルで個別にやれる時代になっています。そうすることで、それぞれの場所や地形、気候などの地域性をうまく取り込みながら最適化するような、そういうふうに建築をつくる時代になってきた、と考えています。スマートハウスというものでは、コンピュータのテクノロジーを使い、自動で明るさや温度をコントロールして快適にします、ということになってきましたが、我々はそういうテクノロジーではなく、設計する段階でテクノロジーをフル活用し、自然な風をうまく取り込んだり、プリミティブだけれども、20世紀にはできなかったような細やかな設計をすることにより、多様な建築をつくることができる、と考えています。

 

 さて、ヴィトゲンシュタインは「世界は事実の寄せ集めであって、物の寄せ集めではない」と述べています。また原広司さんは「建築は”もの”ではなく”出来事”である」と仰っています。私たちもまさに、ガラスや鉄、コンクリートなどを使って建築物というモノを組み立てていますが、つくっているものは「モノ」ではなく、そこで起こる出来事や状態、現象を、最終的につくり出している、と考えています。学校という建築についていうと、特に子どもたちの活動ですね。それが少人数、大人数を問わず、子ども1人ひとりが、先の小さな矢印のようにあらゆる方向を向いて活動をしている。その子どもたちも、ちょっとした風や光、小さな段差などに反応して、そこに居ます。いまお見せしている映像は、アクティビティシミュレーションという言い方をしていますけれど、我々が20年以上前に千葉県の打瀬小学校を設計した際につくったものです。私たちが子供たちになり切り、子どもたちの動きをコンピュータに入力した結果です。これをやることにより、我々が設計した学校の中で数百人の子どもたちがどのように動くのかを具体的に想定できました。走り回る子がいて、おとなしく隅っこで静かにしている子もいて、一緒にくっついて走り出す子もいる、というような実態を投影しています。

 

 こうした子どもたちの活動を考え、学校の建築に臨む際、さまざまな学校関係者たちに見てもらう参考資料に、有名な、このブリューゲルの絵があります。幸せそうな人も居る一方、隅のほうでちょっと恐そうなことが起こっていたり、いろいろなところでさまざまな活動や行為が起きている絵ですね。この絵と同じようなことが校舎の中や、その周辺、地域で起きている。そういう前提のもとで考えるべきで、1つのところで全員が同じ活動をしているのではなく、個人個人がそれぞれに自分の場所を見つけ、自分の好きなことをできるような、そういうことのサポートをできる空間をつくっていく、ということを説明しています。

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