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第60回 「最新の学校施設づくりについて」 その1~次世代へ繋ぐ学び舎を考える~長寿命化

2015年9月17日(木)
講演会/セミナー

第二部 「最新の学校施設づくり施策について」

 

 

縄手 文教施設協会の縄手です。今日、ここに参加いただいているのはつくり手の方、設計事務所の方、設置者の方などいろんな方々がいらっしゃいますけれど、今、いちばんの問題になっている学校建物・施設の「長寿命化」の最新の情報について共有していきたいと思います。今日のテーマは次の3つです。1つは「長寿命化対策」、また躯体の耐震化ではなく「非構造部材の耐震化」にも焦点を当てようと思います。そして、3つ目は次回フォーラムの中心テーマになっている「学校施設の複合化」についてですが、こちらは時間が許せば少し触れたいと考えております。今日はこの3つの中で、とくに1番目の「長寿命化」について手厚くお話ししたいと考えております。

 

まずは今年度の予算「公立学校施設設備費」から見ていきましょう。平成27年度は約2048億円という規模になっております。内容は、こちらに書いてある通りで「耐震性が確保されていない学校施設がまだあるから、それをきっちり遂行しよう」ということです。27年度はこのような方針で進んでおり、耐震補強がまだ多数を占めているということです。一方、来年度の概算要求額は、このようになっております。予算規模はほぼ同様の約2090億円です。しかし、内容は大きく変化し、「耐震」という表現が最初に示されていません。その「耐震」の代わりに「築後25年以上経過した、公立小中学校の保有面積が全体の約7割を占めるなど老朽化は深刻な課題になっている」と書かれており、「老朽化」の深刻さとその対策の必要性を強調しています。つまり、本日一番のテーマにあげさせていただいた「長寿命化」は老朽化対策として大切なキーワードとなります。

 

 さて、(棟数で数えると)学校は社会資本、公共施設における全体の約4割を占めています。この約4割の学校が直面している老朽化の実態が次のグラフになります。平成27年度では74.6%の学校施設が築25年以上経過しており、これは減ることがなく、年々増えています。実際、10年前に築25年以上経過している学校建物は53%でした。もちろん、古いから悪い、というわけではありません。歴史的に有名な、素晴らしい建物もたくさんありますから、古いだけで悪いということにはなりません。しかし当協会主催セミナー等で文部科学省施策担当者のご講演では老朽化による対策の必要性がいくつも指摘されています。例えば、安全面では外壁や窓枠の落下、構造体としての強度の低下など、そうした安全面での不具合が平成23年に約1万4000件起きており、小中学校2校あたりで1件発生という状況になっています。また機能面を見ますと、雨漏り、設備機器や配管の破損、トイレの衛生面とバリアフリーの不備、近年の教育内容・方法への不適応が指摘され、この不具合が約3万件(H24年)、小中学校1校当たり1件発生という状況になっています。そして環境面では省エネ化が進んでおらずエネルギーの無駄が大きい。これは窓ガラスの性能が古いままということも大きく影響しています。さらに大問題なのは、財政面に関する不安で、今後老朽施設が年々増加し、膨大な更新費用が必要、とされています。*写真で不具合の例を紹介。

 

 こうした課題について、文部科学省はどのような方針で対策を進めているのか、というと、平成25年3月に、その方向性を示す報告書「学校施設の老朽化対策について~学校施設に置ける長寿命化の推進~」が出ています。そこには計画的整備が必要だとして、「事後保全型から予防保全型へ」と管理方式の転換が示されています。また「中長期的な整備計画の策定」、つまり、しっかりしたメンテナンス計画の必要性が示されています。そして長寿命化に関して、これまでは平均約42年でスクラップ&ビルドを繰り返してきた事実を示し、それを70年~80年以上使用できるように長寿命化を図る、技術的にそれは可能だ、としています。参考として試算を示してありますが、今後30年間で必要となる更新費用が、従来の改築中心で進めると約38兆円かかり、長寿命化改修中心に転換した場合は30兆円で収まる、ということのようです。

 

 そして現在、文部科学省が進める具体的な取り組みは平成27年4月に出された「長寿命化計画策定に係る手引き」があります。この手引きの内容に関してポイントを示したのが、みなさまにお配りした資料です。図を見てください。長寿命化改良事業の補助要件の変更に関して大切なことをまとめてあります。これまで、補助制度を活用して学校施設を補修・改修していくには、「大規模改造(老朽)」と「改築」という2つの考え方がありました。このうち大規模改造は、経年により、通常発生する、学校建物の損耗・機能的化に対する復旧措置等をするものです。また、もう一つの「改築」は、構造上危険な状態にある建物や、教育を行うのに著しく不適当な建物で特別の事情があるものを改築できると。従来はこの2つのやり方しかなかったのですが、平成25年度に、その中間にある「長寿命化改良事業」という考え方ができました。建物の耐久性を高めるとともに現代の社会的要請に応じた施設へ改修する、というものです。当初、この補助制度に関しては、耐力度調査の結果、基準点以下になったものが補助要件となっていたのですが、本年度から改正されました。ここがポイントです

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