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第60回 「最新の学校施設づくりについて」 その1~次世代へ繋ぐ学び舎を考える~長寿命化

2015年9月17日(木)
講演会/セミナー

 

丸野 今日は長寿命化をテーマとして次世代型の学び舎を考えるために、時間が許す限り、事例を用意しております。この長寿命化にはいろいろな定義づけがあり、図に示すように、まず建物の改修を含めた老朽化対策があると思います。構造の耐震化や、免震構造にするとか、設備やインフラの更新を行うなど、です。また新築として、将来の老朽化対策も見据えた設計をしていくという考え方もあります。キャンパスそのものを再編するというやり方の中でも、都市型や郊外型などタイプやアプローチが異なります。さらに経営や運用という面も考えないといけません。少子化や共学化、国際化などのニーズに対する長寿命化の判断もあると思います。その一方で安全や法対策という面で、例えば吊り天井を代表とする非構造部材の耐震などといった問題もあります。こういう長寿命化の事業として、弊社で取り組んでいる事業がいくつかございますので、今日は、6つの事例についてお話しいたします。

 

●鎌倉学園 中学校・高等学校(全面リニューアル 同敷地/居ながら改修/法的制約)

 

鎌倉学園中高さんの事例は全面リニューアルで、居ながら改修という取り組みをしております。現在、工事中のプロジェクトです。立地は鎌倉と北鎌倉の中間点になります。ここに建長寺があります。建長寺さんは学校の経営母体でもあり、このように隣接した敷地になります。学校としては歴史を誇り、1885年(明治18年)に建長寺さんが師弟教育のために設立した「宗学林」が前身とされ、1921年に鎌倉学園となっています。既存の建物は1962年に竣工した築53年の1期工事の建物と1967年竣工の築48年の建物で、5階建てRC構造になっております。

 

 この写真にございますように、ちょうど建長寺さんの参道の入り口から学校へ入っていくアプローチになります。レベル差のある敷地になっており、グラウンド部分がアプローチから階段で一層分上がったレベルに当たり、Vの字型で校舎が建っています。これらの校舎群を、どのような形で段階的に改築するかが与えられた課題の1つでした。グラウンドの部分に仮設校舎を計画しながら、1期工事、2期工事、3期工事と分け3カ年かけての「居ながら改修」を行う計画です。学校さんのニーズとして「安全で美しい校舎」「時代に見合った学習環境」を整えたいのですが、建物が老朽化しており、建て替えか改修かを選択しなければなりませんでした。ただ、この敷地は鎌倉の景観地区に当たり、埋蔵文化財のエリアでもあるため、15メートルの高さ制限があり、既存建物のない範囲への計画が困難な状況でした。この高さ制限に関して、既存不適格となっている校舎はすでに20メートルの高さがあります。そこで、もし、新築というかたちになると、減築をしなければいけなくなります。つまり容積が足りなくなる。また掘れば文化財が出てくる可能性もあるため、既存の建築面積以外の場所で新たな建物をつくるのは難しい状況でした。そこで学校さんと話しあった結果、既存校舎を使いながら「長寿命化」という方向で居ながら全面改修をする方向性を提案させていただきました。

 

 そうした老朽化対策を含めた改修計画では、次の6つの項目がポイントになります。1つ目は「安全性」です。耐震補強を絡めてバリアフリー化し、アスベストの撤去等もいたします。2つ目が「適法性」です。昔の建物なので既存不適格を解消していく。3番目として「利便性」があります。この改修は”居ながら工事”ですので、先生方と協働しながら合意形成を図り、設計を進めました。4番目は「機能」で、時代に見合う学習環境の拡充を図り、例えばカフェテリアや自習室、マルチスペースなどを学校の中に付加します。5番目として「メンテナンス性」にも気を配ります。長く使える、堅牢性の確保です。6つ目は「個性」で、学園に新たな顔をつくることを考え、外装を一新することにしました。
*各階の平面図と写真を見せながら、順次、具体的なプランを紹介する。

 

 このうち、利便性に関して、先生方とどのように合意形成を図っていったかというと、鎌倉学園中高さんという発注者には、理事会などのコアメンバー、教職員、生徒、父兄、受験者などの関係者がいます。一方、弊社には教育施設の専門性に特化した各部署が横串に連携した「学校教育チーム」が存在します。設計部、開発部、営業部、ITS部などがおり、それぞれに連携しながら幅広くお付き合いさせていただきました。基本的にはコアメンバーの方々と定期的に打ち合わせをし、職員会議等にも出席させていただきながら、ヒアリングやプランニングを行っていきました。弊社の開発部では、生徒さんたちと一緒につくっていこうというアプローチもさせていただきました。設計としても、通常の設計業務に加え、受験者の方々向けにもホームページで計画と工事の進捗情報をお知らせするようなこともご協力させていただきました。
*より詳細な経緯に関して多数の写真を見せながら紹介。例えば、外壁の色の決め方や、外履きと内履きの使い分けを一足制に変更したこと、ピロティだった部分にカフェテリアを設置した例などを詳しく紹介。さらに将来のICT環境への対応、長期のメンテナンスに配慮した内装や家具などについても具体的ノウハウを紹介。なお、外観に関しては建長寺、鎌倉といったイメージや価値をどのようにファサードへ反映したかについても説明された。

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