イベントレポート詳細Details of an event

第95回 AGC Studio Design Forum
Soundscape スペシャルトークイベント「ミラノデザインウィーク2018報告」

2018年6月21日(木)
講演会/セミナー

山田 ありがとうございます。グランドセイコーさんは、今回初めての展示でしたが、AGCさんは4回目の出展になられたわけですね。秋山さんにお聞きしたいのは、この4回を続けてきた蓄積や経験を、どのように感じていらっしゃるのでしょうか。

 

秋山 製造業の中でも、材料を開発してそれをビジネスにしている会社って、ヨーロッパでも特殊というか、まぁ、材料の研究というのは例えば顕微鏡で物質を覗き込むような研究です。そうなると、内向きになってしまうというか、モノを追求するあまり、その先のことを想像できなくなってしまったりする可能性があります。それは、研究現場にいる私のような者の私見かもしれませんが、そういった中でこういう展示会に出て行って、実際、それを使われるところに立ち会って、思いを馳せるというのは、すごく重要じゃないかと思います。素材メーカーだからこそ、そういった活動を活発にやっていくことが大事だと思います。

 

我々はものづくりを知っているのですが、例えば、イヤホン付きのカセットテープをつくるのではなく「ウォークマン」をつくりたいですね。便座から水やお湯が出るポンプをつくるのではなく「ウォシュレット」をつくりたい、と。歌う部屋をつくるのではなく、「カラオケ」をつくりたい。そういった文化をつくりたいと考えています。素材の製造業であったとしても、究極は、そういうところにいきたい。そうすると、モノだけ見ていてもそういうことはできませんので、自分の材料に対して、新しいデザインとしての価値観を加えていただいたものを世に出して、その反応を世に問うというのは貴重な経験なのです。それを毎年やっていくのが大事で、1回やっただけではただのお祭りですが、何度かやり続ければ変化というものを我々自身も感じることができますし、またメディアの方々も、去年はこうで、今年はこうだったという見方をされると思うので、外部からのベンチマークもできる。そういうことが展示会に毎年で続ける意味合いなのかな、と個人的には思っています。

 

山田 素材メーカーさんの多くは出展されない。そもそも家具の見本市が基本になっているので、素材を使ってつくったものを展示されています。AGCさんは、とれた野菜を持ってくるというか、それを使った料理人がデザイナーだとすると、その前段階のものをつくっておられる。で、今年はこんなにおもしろいものができた、と。毎年、そういうようなことを続けてこられたわけですね。もちろん、ここは多くのデザイナーがやってくる場所であり、デザイナーというのは常にユニークな素材を求めている。それをどう使って、どう料理していくかというところが、デザイナーとしてかき立てられる部分ではないかと思います。そういう話を聞かれましたか?

 

秋山 先ほど言ったように、素材というのは、デザインからすると、同じ物質を扱っているにもかかわらず、違うんですね。違うだけあって反応が激しいのです。かっちりはまるとすごい反応が起きるような気がして、海外のデザイナーさんがご来場いただいて、思いもかけないオファーをいただいたりしています。具体的には申し上げられないのですが、思いもかけない具体的なオファーをいただいて、それがまさにわれわれが欲しかったものだ、と。

 

山田 ガラスは今の私たちの生活と切り離せいない存在で、例えば、アップルウオッチに音の鳴るガラスが使えたら、とか、そういうことがイノベーションにつながると思います。こういう素材を使って、萬代さんや吉泉さんが、例えば、こういう使い方をしてみたい、だとか、妄想のレベルでいいのですが、お二人はどういうことをお考えになりますか。

 

萬代 ガラスなので、雨に強い。僕は建築をやっているので、屋外で使えるかどうかはすごくシビアです。でもガラスは屋外で使えるので、それはすごく重要なポイントだと思います。例えば、ショーウインドウみたいなものがあれば、そこから音が出る。また車のガラスから音が出る、とか。ガラスがあって、普通は外の音を内側に入れたくないということがありますよね。でも逆にガラスから外に音が出ちゃう、という状況を、どう楽しめるかということを想像したりしています。

 

吉泉 私はコミュニケーション的なものに使えないかと思ったんです。音って、映像がなくても、情景を浮かべられたり、記憶を呼び起こしたりできる。映像としての解像度がないはずなのに、情報が少ないはずなのに、人間のイマジネーションを引き出す力がある。そう考えた時に、音楽を再生するなどの代替にもなっていくと思うのですが、他の空間で鳴っている音を、こちらの空間とつなげてくれる、音でつなげるということがあるのじゃないかと思っていて、まったくいままでは存在していなかったけれど、そういうコミュニケーションの媒体として使えるのではないかと思いました。

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