イベントレポート詳細Details of an event

第95回 AGC Studio Design Forum
Soundscape スペシャルトークイベント「ミラノデザインウィーク2018報告」

2018年6月21日(木)
講演会/セミナー

山田 ありがとうございます。事前に日本で行われた説明会で、秋山さんが「いい音を鳴らさないと、音を生むガラスをつくる意味がない」「いい音でなければ、わざわざこういうものを作る必要がない」と仰っておられました。で、開場してからその場にいると、いい音過ぎて、違和感がない。目の前にガラスがあって、そこから音が出ているのだと頭の中では理解しているつもりなのですが、音がいいので、どこからその音が来ているのかよくわからない。「目に見えない場所に、高性能のスピーカーを隠しているのではないか」と思ってしまうくらいなのです。それで、白いこの部屋の方へ入ると、どこにもスピーカーがないのに前からいい音が聞こえてくる。ということは、これが鳴っているんだ、と、ようやく体が理解する。それくらいきれいな音でした。萬代さん、秋山さんにお聞きしたいのですが、会場に来られた方々からはどのような反応を聞かれましたか。

 

萬代 今、山田さんが言われたのと同じで、「自然過ぎてよくわかんない」と(笑)。まぁ、音は空間の中に満ちているのですが、その音とガラスの関係を理解できない、つなげて考えられないんですね。きちんと説明してあげて、「この空間の中の音は全てガラスから出ているんですよ」とお話しすると、ものすごく驚かれる、という状況でした。それは、僕の中では「けっこううまくいった」と思っていて、つまり、今後、ガラスから音が出るという未来を考えた時に、こういう、どこが鳴っているのかよくわからないけど、なんか気持ちいいなぁ、という感触が得られた。

 

秋山 そうですね。日本のお客様に比べて、ミラノの会場に来られるお客様は、「本当に面白いなぁ」というものと「どうでもいいなぁ」というものに対して、すごく差をつけて評価されている。面白いものとそうでないものに対する反応の差がすごく大きくて、本当にいいなぁ、という反応を見せられた時はすごく嬉しい。この会場には他に数点の展示があったわけですけれど、その中でもうちの展示は行列が絶えないところで、かなりの評価を得たというか、面白さを感じていただけたのではないか、と。萬代さんもおっしゃったように、最初は理解してくれないくらい自然なものに仕上がっていて(笑)、説明をしないとわからないなぁ、というところが難しかったところです。国際展示なので、できれば非言語で全てが分かる展示にしたかったので、少し反省点もありますが、逆に言うと、それくらいできがよく、あまりに会場が自然過ぎて、しかも皆さんから「どこかにスピーカーを隠しているんでしょう?」と聞かれて、「いや、そんなことないですよ」と(笑)。

 

山田 音とガラスという、ともに目に見えないものを使った展示なので、人間の五感は記憶を基に世界を再構成するのだなぁ、というのを改めて気付いた次第です。実は、吉泉さんにもこの会場に来ていただいているのですが、吉泉さんは、どのような感想をお持ちですか?

 

吉泉 いま、お二人のお話を改めてうかがって、現地での自分のインプレッションとの差を確認しながら聞いていたんです。僕も最初、音源を探してしまったのです。スピーカーはどこだろう、と(笑)。どこだ、どこだ、と探してしまうのですが、本来、音って空気を伝うものなので、非常に空間的なものだと思うのです。であるのに、スピーカー、エンクロージャーみたいなものの存在を探してしまう、というのは、これまでの私たちの生活に染みついたある種の癖で、そういうズレを感じるからこそ、探しちゃうし、不思議な体験をしちゃったと思うのです。そこがすごくおもしろかった。一瞬、分からないので、ネガティブな部分があるのかもしれないのですが、立ち止まって深く考えてみると、非常におもしろい体感だったのではないか、と感銘を受けました。

 

山田 今日、この会場で登壇なさっていないのですが、音響空間設計を担当された堤田祐史さんとミラノでお話をする機会がありました。堤田さんによると、先ほど秋山さんがおっしゃった「面で音が鳴る」というのは、サウンドデザインの領域ではこれからのトレンドになる、と。点でなく面で音が聞こえてくるので、非常に自然な音になっている。だからこそ空間に溶け込んでいて、どこからこの音が出ているのか、まったくわからないようになっていたのか、と思うのです。

 

 話は前後しますが、ミラノ・サローネについて、少しご説明させていただきます。先ほども申し上げたように、ミラノ郊外に非常に巨大な会場があり、そこに世界中から集まった家具の見本市が開かれています。メディアで取り上げられるのは最先端のデザインですが、実際にはクラシックなデザインも含めさまざまなものが集まっています。一年おきにキッチンを中心に展示を行う「クッチーナ」と照明を中心に展示を行う「ルーチェ」が開催されるのですが、今年は「クッチーナ」の年で、厨房やキッチンの展示にも力が入っていました。それに合わせて、こちらの地図にあるように市内中心部のさまざまなところでいろいろな展示が行われています。
*ミラノ市内の地図を示し、いくつかの展示会場と展示内容を紹介。街中がデザインの見本市になること、またAGC以外の日本企業の出展、その他世界の有名ブランドの出展などについても山田氏が撮った画像も用いて触れる。

 

山田 このようにミラノのデザインウィークというのは多岐にわたる展示が行われ、企業やデザイナーが多くの可能性を探っています。その中で、今年の日本企業にはひとつの特徴があって、他国の企業は具体的にものを見せるのですが、パナソニックさんもソニーさんも体験的要素を強く打ち出しておられ、目に見えないようなものの展示をなさっている傾向がうかがえます。さて、ここで、吉泉さんからもミラノで行われた展示のご説明をいただきたいと思います。

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