イベントレポート詳細Details of an event

第56回 AGC studio デザインフォーラム AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画 「居場所をつくる」

2015年2月19日(木)
講演会/セミナー



菅原 配置平面図を見て頂くとわかるとおり、東側のバス通りには工場や倉庫といった、スケールの大きな施設が並んでいます。そちら側の壁面にガルバニューム後半の壁面を採用していて、無機質な表面のあり方でその街並みに溶け込ませています。一方、園庭がある北西側は、細やかなスケールの住宅街となっています。園内の植栽は住宅街の庭と連続し、幼稚園の内部空間もこれに向かって大きく開いています。また、この点線部分は既存園舎の位置を示しています。建て替えによって、園舎と園庭がちょうど反転するような配置計画となりました。
屋根のある庭と名づけた園舎の北側にあるのが静の庭です。3月の中旬に芝張りのワークショップを開催する予定です。ここでは園庭の真ん中に遊具や樹木が点在しています。将来は遊びの雑木林になってくれることを願っています。残りの平原のように開けた場所が動の庭です。

 

3歳から5歳に至るまでの間、それぞれの(走る)スピードや(体躯による)衝撃が違うので、下手に交わると大けがにつながることがあります。そこで、静の庭から動の庭に面するように、年少、年中、年長の教室を配置し、緩やかに分節しています。一方、全教室の中心に遊戯室を配置することで、お互いの視線や遊びが滲みだしてきます。年少が、年中年長の行為を見て、新しい遊びや礼儀などを学んでいく。逆に、年長者が年少者を支援するという、分節と交流が同時に存在する空間構成としています。当然、この遊戯室は雨の日には、屋根の掛かった庭としても機能します。

 

 視覚的な連続性だけでなく、屋内外を繋ぐボーダレスな温熱環境も計画しています。天窓、ブラインド、遊戯室の空調機、そして基礎コンクリートを利用した蓄熱暖房を採用しています。中間期では、天窓とブラインドによる日射と風の調整で外部環境と連続しつつも、過ごしやすい快適な環境を目指しています。冬は、基礎部を蓄熱体として利用していて、夜間電力で蓄熱した熱をゆるやかに放熱します。輻射熱なので、ドアを開閉しても、温かさは常に感じることが出来ます。極寒期に至っては、遊戯室での大型空調機による暖気を取り込む計画としています。一方、極暑期は遊戯室の空調機で冷やされた冷気を、各保育室に行き渡らせるようにしています。これによって、温熱環境の極端な断絶をなくし、屋内外の子どもの遊びを繋げようとしています。
*写真を紹介しながら細かく説明

 

 展示模型についてですが、既にご覧になった方はお気づきになったと思いますが、この模型には、これでもかというくらい引き出し線を使ってここに立ち現れる様々な現象を説明しています。それはすごくシンプルな構成であるにもかかわらず、多様な現象が同時多発的に発生していることを示したいという考えからです。

 

 最後に。僕は常々「居場所」という言葉をよく使いますが、本計画で目指したことが3つあります。1つ目は、各園児が動物的に場所を五感で検索し、最適な場所を自分で定義するような居場所群のあり方。2つ目は、異なる身体性によって、ゆるやかに分節したり結合したりする居場所。この場合、学年間に限らず、大人と子どもも含めた異なる身体性を分節し、結合する居場所という意味でもあります。3つ目は、強い形式によって許容性と冗長性をもつ居場所です。ここでは、これは山並み壁や鏡面天井という非常シンプルで強い形式を採用しました。それによって、遊具や家具の置き方、部屋の使い方などが変わっても、クライアントやその場所との対話で見つけ出した目指すべき空間の質は、変わらずに継承されます。つまり、強い形式を持つことで、同時にいろんなものブレを許容し、教育のあり方と共に見出されたあるべき空間像は、常に主軸として存在する居場所を意識しました

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