イベントレポート詳細Details of an event

第55回 AGC studio デザインフォーラム AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画 「人を集める」

2015年2月5日(木)
講演会/セミナー

中崎 こんばんは。第55回のデザインフォーラムを開催します。このフォーラムは1階で開催中の「新しい建築の楽しさ2014」と連動しています。毎回、2、3組の出展者を招き、それぞれの出展プロジェクトについて紹介いただき、その後、共通のテーマでトークセッションをします。今回は田辺雄之さんと三浦丈典さんが商業施設で出展されましたので、「人を集める」をテーマにしました。また、萬代基介さんは、この企画展の会場構成を担当してくださった建築家ですが、会場構成という仕事は、「人を集める」というテーマと重なりますので、萬代さんにも参加していただくことにしました。それではまず田辺さんから発表をお願いします。

 




田辺 こんばんは、田辺です。この展覧会は前期と後期に分かれており、私たちの展示は後期になりました。一方、前期のオープニングパーティーに出席して前期の展示を見ましたら、今回の会場構成が軽快で浮遊感のある、いい会場構成だな、と感じまして、後期に出展する私の模型も、その会場構成に呼応したものにしたいと考えたわけです。ちょうど去年、3Dペンという面白いツールが発売され、図面をなぞる形でこれを使うと、ペンで立体を描くことができます。こういうツールが手に入ったので、これを利用しようと考えました。3Dペンを使うと、建物が透けて見えるのです。普通の模型は中の空間や動線が見えにくくなりますが、それを可視化できます。また構造模型というものもありますが、構造だけでやはり中の空間が見えてきませんので、こうしたもので作ってみました。

 

 さて、プロジェクトはベーカリーとレストランの複合施設で、軽井沢に位置しています。軽井沢は、ご存知のように東京から新幹線で1時間程度の距離にあり、冬は寒く、夏は涼しいという気候条件になります。その軽井沢の中でも旧軽井沢というところになります。この地図に示すように、軽井沢は駅の南側にホテルやアウトレットモール、ゴルフ場などがあります。また西側に星野リゾートの温泉施設やハルニレテラスなど新たに開発されたエリアがあります。一方、北側にある旧軽井沢エリアは1800年代後半にカナダ人宣教師が別荘を建てた歴史があり、長く軽井沢らしいところとされてきましたが、現在、観光客などの人気は新しいエリアに押され、閑散としてきている現状です。

 

これが敷地です。800坪ほどで、左側の森の辺りから別荘地になっています。この辺りを、いわゆる旧軽井沢のロータリーと呼んでいるのですが、ここが昔、別荘地として歴史を刻み始めた頃に、そこに入るためのゲートがあって、この先は関係者しか入れないことになっていたそうです。その旧軽井沢の街がはじまる起点に敷地が位置します。この西側に小川が流れています。こちらが敷地の写真です。以前はパーキングとして使われ更地の状態が続いていました。その前はスーパーマーケットだったと聞いております。敷地の中には、かなり高い20メートル級の木がたくさん生えています。調査したところ、もみや楓、赤松など67本ありまして、なるべくそれを残そうと考えました。今回の建物は、敷地に生えている樹木を楽しめるような建物にしようと考え、中に入るベーカリーやレストランを利用しない人も樹木に近付けるよう、今この黄色いラインで描いてある外回廊、空中回廊と呼んでいますが、それは建物に添ったり、中に入ったりしながら2階のレベルでぐるりと建物を囲んでいます。

 

 また、オーナーさんがこの敷地の反対側で10数年前から蕎麦屋さんを開業なさっておられます。この地に思い入れがある方で、現在は20数店以上の飲食店を東京のミッドタウンや渋谷のヒカリエなどにも出店しておられますが、もう一度、彼らの出発点を元気にしたいという思いを抱いておられます。このグリーンの色の場所は、彼らが他の店を営業していたり、他の店舗のために借りていたりする敷地です。今回のプロジェクトが竣工すると、この辺り一帯を歩き回ることができるようになります。そういう狙いもあるので、ランドマークのような建物にしたい、と言われました。*平面図でプランを紹介

 

 大きく分けると南側がベーカリー、北側がレストランになります。それぞれに厨房があります。こちら側がロータリーですが、この真ん中から入ってレストランへ行くこともできますし、こちら側から入ることもできます。ベーカリーの2階にカフェがあり、ベーカリーで購入したパンと飲み物を自由に飲食できるスペースになります。これはいろいろとスタディした模型で(15種類)、木や川という環境を考慮しつつ、ロータリーを利用してオープンな建築をつくりたいという条件で検討した案です。これがロータリーから見た景色です。軽井沢には景観に関する厳しい条例があります。例えば、屋根は10分の1の勾配以上にしなければいけないとか、色使いなども決まってくるのですが、それを考慮しながら、ボリューム感を出さないよう、かなり抑えた高さにしています。一番高いこの部分でも9メートルもないくらいです。外壁材は信州の唐松を使うことになっています。こちらが外回廊から見たパース図です。右側に小川が流れており、それが外回廊と建物の間にできた中庭の部分でもつながっている。そして、このブリッジは2階でカフェゾーンとレストランゾーンを結んでいます。ここはサッシなどを使っていないのでオープンの空間で季節感や風を感じることができます。また、この2階のオープンなカフェの部分を、例えば結婚式など貸し切りで使うことも想定し、レストランの方から食事を運んだりできるよう、このブリッジを設けています。これがレストランのパースです。2階にも席はありますが、回廊なので席数は少なく、ほとんどが1階で100席くらい、提供することになります。この真ん中にバーカウンターを設けます。 *平面図と断面図、立面図を使って解説。

 

 これは今日の午前中に現場監督から送信してもらった写真です。SE工法でつくっています。このプロジェクトは3年くらい前から取りかかっており、当初は鉄骨で計画していましたが、消費税増税が絡んで見積もりが高くなってしまいました。そこで面積を縮小したり、他にも修正したりしたのですが、最終的に構造を木造に変えるという判断をしました。当然、鉄骨で考えたスパンの長さなどは変更したくないということで、こういう軽快な構造体になりました。今年の夏にはオープンしますので、近くにお越しの際は、ぜひ、お立ち寄りください。

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