イベントレポート詳細Details of an event

第54回 AGC studio デザインフォーラム AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画 「新しい形式をつくる」

2015年1月15日(木)
講演会/セミナー

中崎 これから今年最初のデザインフォーラムを開催します。このフォーラムは1階で開催中の「新しい建築の楽しさ2014」と連動したもので、今回から後期の展示になります。フォーラムでは毎回、2組から3組の出展者を招き、それぞれのプロジェクトと共通のテーマに沿ってセッションします。今回は「新しい形式をつくる」というテーマです。講演していただくプロジェクトは「えんがわオフィス アーカイブ棟」と「東京大学総合図書館新館アカデミック・コモンズ」です。両者の間には、アーカイブ棟と図書館という共通する部分があります。まず「えんがわオフィス アーカイブ棟」のプロジェクトから講演していただきますが、このプロジェクトはそれぞれ別の事務所を構えている建築家が共同して設計をされています。伊藤暁さんと須磨一清さん、坂東幸輔さんのお三方ですが、講演は伊藤さんがなさると聞いておりますので、伊藤さんお願いします。

 



 
伊藤 こんばんは、伊藤暁です。我々、普段はそれぞれの事務所で個別に仕事をしているのですが、縁あって徳島県の神山町に集まる時は3人で仕事をしています。今日ご紹介しますのは、その神山町でやった仕事の1つなのですが「えんがわオフィス アーカイブ棟」という建物です。1階のギャラリーで模型を展示しております。

 

まず、徳島県神山町について触れますと、地図のここになります。人口が6000人弱、いわゆる過疎の中山間地域ということですが、最近、地域創生の先行事例としてメディアに取り上げられることが多く、ご存知の方も多いと思われます。航空写真で見ると、こういうところで、ほとんど山で、川沿いに集落が分散しています。「えんがわオフィス」という、古民家を改修してオフィスにする仕事を3人でやっておりまして、今日ご紹介するのは、その新棟を建てるというものです。

 

これは東京に本社を置く企業のサテライトオフィスになっており、最近、こういう働き方が増えてきておりますが、都会の1フロアに籠って仕事するだけでなく、こうした田舎の、都会とは違う環境の中で仕事をするというものです。これが、その企業が持っている敷地です。道路からちょっと引き込んだところに母屋があり、納屋や蔵がある。最初にこの3棟を改修しております。 この企業は、映像関係の業務を行っており、その映像のデータや記録媒体を保管しておくアーカイブ棟をここにつくりたいということでした。隣接する北側の土地が手に入りそうということだったので、ここをうまく使って、新旧2つの敷地にまたがるように建物を建てようと考えました。なお、その土地の境目には高さ2mくらいの石垣の段差があり、それも活かして建物を建てようと考えました。

 

下に展示してある模型が、これです。木の格子組がジャングルジムのようにあって、その中にデータを保管するスペースやサーバールームなどがあり、さらにその編集や管理をする人のワークスペースなども、そのフレームの中に収めた建物です。このように格子組のスカスカの建物なのですが、その間を縫うように動線が設定されていたり、この段差に腰掛けるような建物部分もありますので、石垣の上下両方の敷地、どちらがわの高さからもアクセスできるようになっています。図面で見るとこうなっています。着色してある部分が内部空間で、それ以外はジャングルジム状の空間です。主に1階にアーカイブやサーバールームがあり、2階にプレゼンテーションルームやワークスペースがあります。周囲の敷地へも人が出てきやすい、そういう計画をしていました。 *縁側オフィスの母屋、蔵などを含め多数の写真で紹介。

 

 実施設計までほぼ終わりそうな段階にきて、この新しい敷地が使えない、ということになりました(笑)。まぁ、建築ではよくあることですが、結局、この模型の建物は幻に終わりました(笑)。で、結果的に、その代案の建物が実はすでに竣工しております。急遽、計画を変更し、設計も新たにして母屋の裏側の広場の奥に建てました。

 

徳島なので、民族文化として阿波踊りがあり、各地域、コミュニティごとに連と呼ばれるチームがあります。この写真は神山町の連なのですが、阿波踊りの際、街を踊りながら練り歩き、その最後の場所として、えんがわオフィスのこの広場で踊ってくれた時の写真です。この母屋裏と、計画変更後のアーカイブ棟の間には、こういう広場があります。そこで、できるだけこの広場を残すように、敷地の奥まで寄せて建てることにしました。

 


できたのはこれ(写真)です。機能は最初の設計と同じなのですが、スカスカの建物ではなく、ぎゅうぎゅう詰めになりました。2階がテープやサーバー、データなどを保管するアーカイブスペースで、1階がワークスペースやプレゼンのスペースになります。2階はサーバールームなので人がいる場所ではありませんけれど、排熱、空調の問題があります。ハイスペックなデータセンターだとガンガンに空調を効かせて強制冷却するのでしょうが、ここは木造2階建てで、そういうハイグレードにはできません。そこで、外気を使って効率的な空調の仕組みを実現できないかと考えました。

 

空気の流れを考慮して、ローテクだけれどもランニングコストを抑えることに特化して設計しました。このように1階と2階の間に大きな通気層を設けました。外気で空調をする際に最も効率がいいのは床下から取り入れる手法です。この隙間から冷たい外気を入れて、サーバーラックを通過して暖まった空気を、すのこ状の屋根から抜くように考えました(立面プランと平面プランおよび竣工後の写真も見せながら詳しく解説)。

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