イベントレポート詳細Details of an event

第53回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画
「新しい景観をつくる」

2014年12月18日(木)
講演会/セミナー


 

中崎第53回のデザインフォーラムを開催します。このフォーラムは1階で開催中の「新しい建築の楽しさ2014」と連動したもので、毎回、2組から3組の建築家を招き、それぞれのプロジェクトと共通のテーマに沿ってセッションします。今回は、藤原徹平さんと木下昌大さんをお招きし、新しい景観をつくるというテーマで進めます。まず、藤原徹平さんからお願いします。

 

 

藤原 こんばんは、藤原です。景観というテーマにつながるかどうか分かりませんが「A-School Project」についてお話しします。
深谷駅から車で10分くらいのところに、F中央病院という医療施設があり、その病院の隣に関連法人が運営する医療専門学校があります。プロジェクトのきっかけは、かつての勤務先で知り合った、この病院の理事長から「非常に困っている」という相談を受けて始まりました。その理事長は、病院を増床して拡張しようかどうか迷っていたところ、国から急に「増床を認める」との通達があったというのです。

 

病院の入院ベッド数は、地域の医療計画に縛られ、自由に増やすことができなくなっていますから、認めると言われた時に実施しないと、次の機会はいつ来るかわかりませんし、保証もありません。とはいえ、病院や病棟を休ませて新築するわけにはいかないので、その隣地にあった専門学校を別の場所へ移し、専門学校の校舎を新しい病院施設へ急いで改築する、ということを考えたわけです。

 

これが、その病院を含めた現地の写真です。外来棟と入院棟ですでにパンパンになっており、既存不適格の塊みたいになっているのですが、プロジェクトは2つがセットになっています。こちらの学校を病棟へ改修する、というのが最後にやることなのですが、その前に、この学校機能、建物をどこかへ移転しないといけないわけです。で、まず、それをやれるかどうか、つまり、最終的に学校が病院施設に変われるかどうか、という建築法規および病棟としての認可基準をクリアしないといけません。既存不適格な部分があるので、確認申請を出し直すのは難しいわけです。そこで、構造計算のやり直しをしないで済む範囲での改修、つまり主要構造部の過半をいじらずにできるかどうかが問題になります。

 

学校の主要構造部は、この平面図にある防火区画の中廊下なのです。これを半分残して病院へ変更できればいいので、最終的にはこれまでの経験を踏まえ、いろいろと頭をひねって、ナースステーションをセンターに置き回遊型のバリエーションで解けそうだ、と数週間で判断し、「こういう病院ならできそうだ」と提案しました。

 

その結果、すぐに学校を移そうということになり、「実は、深谷駅のすぐそばに学校を建てられる土地も持っている」と言われたのです。この地図のここにあるのが深谷駅です。駅を出て、市役所がここにあり、途中まで道も整備されております。この市役所まで駅前通りが伸びるような計画もあったのですが、バブルがはじけて屯在しています。しかし、ここに学校を建てる土地があり、確認申請さえ出せばいけるので、プランを考えて欲しいということでした。

 

 この敷地の情報を受け取り、事務所に戻って詳細を見ると、旧学校と大きさ(敷地)が全然違うことに気付きました。旧学校の敷地面積は1380㎡で、建築面積は773㎡、延べ床面積で2600㎡ありました。学校には文科省が定めた規定があり、専修学校に必要な要件などがあります。なお、補助金も受けてつくっているので生徒数は変更できません。

 

新しい敷地を調べてみますとマックスで敷地面積が490㎡、容積率が500%までです。だから、前と同じ2600㎡の延べ床面積を確保できないことが判明しました。「やはり、これは建てられないのではないか」とも思ったくらいです。そこで、必要な面積を削っていき、2000㎡前後まで削られれば建てられると分かり、専修学校の設置基準を参照しながら、それが可能かどうかを必死で考えました(写真と平面図で図解する)。

 

高さ制限は駅前なので幸い大丈夫だったのですが、容積が微妙でした。そこでスリム化するための工夫をいろいろ考えたわけです。まず、この図中の白い部分はパブリックゾーンなのですが、旧学校にあった食堂は廃止することにしました。また、講堂もありますが、ここは年に2回しか使わないのです。ただし専修学校の設置基準上は講堂を設けなければなりません。そこで、「講堂」を読み替えて、違う方法で代用させられないかということを考えました。講堂(として使えるスペース)は、この1階部分に持ってきて、他の機能もぎゅうぎゅうに詰めることにしました。

 

こういう敷地です。景観という観点で言うと、この写真にあるような地方都市の風景なのです。地元の人が土地は持っているけれど、それを動かせたり有効活用できないので、駐車場が多く、建つのは、こういうビジネスホテル、ペンシル型の建物だけなのです。筍みたいにニョコニョコ生えてきて、後はまばらに小さな建物が建つ、と。付随してコンビニ、ラーメン店、ファストフード店などが建っていく。
その景観の中に、機能を押し込んで建てればいいのか、ということなのですが、ある程度2000㎡の中で、学校の各スペースが持つ機能を読み替えるなどして、なんとかなりそうだ、と考えたので、そのことを当局とかなり詰めて擦り合わせをしました。例えば「図書館を分散型にしていいのか」とか、そういうことです。で、次の問題は、そういう詰め込んだようなビルが1つ建つのは深谷市にとって良くないだろうということでした。昔から地域を代表する病院の理事長・院長なので、地元の名士でもあり、地主的な感覚もあるわけです。駅前の土地に専門学校が建てば、街も元気になる、と考えている。なので「ひとつ、格好いいのをお願いしますよ」(笑)と言われるわけです。そのようにお施主さんは、単なるビルが建っただけでも喜ばれるのでしょうが、実際問題としては「それだけでは街は元気にならない」と思うので、どのような建築にしたらいいかを考え始めたのです。
(*断面図を示しながら)

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