イベントレポート詳細Details of an event

第52回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画
「新しい設計体制を構築する」

2014年12月10日(水)
講演会/セミナー

藤村 そういうことをやってきて、それを応用した結果が今回の「つるがしまプロジェクト」なのです。

 

 鶴ヶ島という人口約7万人の場所で、1960年代に開発された住宅の脇に公共施設があります。鶴ケ島市は、生産人口が大量に流入している一方、高齢化は深刻であり、将来の財政難も予想されている。少子化で学校の統廃合は避けられないものの、その反対も起きるだろうと考えられます。その鶴ケ島市の公開情報を基に、維持可能な床面積を予測して、そこに小学校施設を学生が設計するというプロジェクトを実施しました最初にやったのは、500分の1の模型をつくることです。それを使ってワークショップを開きました。次に、その統廃合が予測されている小学校へ出向き、教室へ地域の方々を招き、パブリックミーティングも開きました。

 

この時にやったのは、とりあえずの模型をいろいろお見せしながら、投票を繰り返すということです。最初の模型なので、いろいろ不備があるわけです。さまざなイメージありますけれど、そういうイメージばかりを聞いても地域の方はよくわからない。そこで、2週間後にまた同じことをする。その間、投票のランキングの結果に従い、学生たちは設計のバージョンアップをします。そのバージョンアップした模型をまたお見せしながら検討する。それを数週間繰り返すと、ちょっとずつ中身の詰まった案ができていく。技術的な与件については一通り共有した上で、それぞれのアーキテクトの考え方の違いによって、(建物の配置・形状が)例えば分散型になったり、囲み型になったり、軸線になったり、タワーになったりしています(多数の模型の画像で紹介)。こうした建築的な違いが出てくるのですが、これを基に評価をしていく。5回くらい繰り返していると、段々、地域住民の参加者が増えてくる(市長も参加)。学生が発表して、やりとりをして評価する、と繰り返した結果、選ばれたのが彼です。彼はこの後、鶴ヶ島市役所に就職することになりました(笑)。

 

彼が設計したのは、こういう案です。派手なものではありませんが、ショッピングモール型という動線の形をしていて、そこにランチルームなどがある配置になっております。機能的にはうまくできている案ですが、建築学科の学生に評価が高かったのはこちらのものです、一方、子どもたちの評価が高かったのはこちらの案、というようにいろいろな評価軸を比較できる場をつくっていくということです。この模型を市役所に展示したり、シンポジウムを開催したりしました。

 

 こうした小学校の問題は、いわゆる「朽ちていくインフラ」問題に接続しております。アメリカでは1930年代に集中投資してつくられたインフラが1980年代になって一斉に老朽化しました。橋が落ちたり、トンネルが閉鎖されたりしたという問題を日本も30年遅れで追いかけていますね。鶴ヶ島でも34の公共施設があって、今後50年維持するなら579億円かかると試算されていますが、市で用意している建設の予算は年間4億円で50年でも計200億円しかないのです。ですから3分の1くらいに投資と維持費を圧縮しなければなりません。こうした情報についても、みんなで共有していきながら、新たな情報発信をしていくのですが、こういうことをやっていくといろいろと取り上げてもらうことにもなり、これは朝日新聞の全国版ですが、ちょうど笹子トンネルの天井板崩落事故をきっかけに、2012年の総選挙のときの争点の1つとして取り上げてくれました。その中で鶴ヶ島の取り組みを評価、報道してもらったのですが、マスメディアが鶴ヶ島にも取材に来たことで、鶴ヶ島の地域住民の方々が、自分たちの財政状況を単にネガティブに捉えるのではなく、みんなで考えていこうという雰囲気になってきているわけです。

 

そして市でも、このように住民参加型でインフラ整備に取り組んでいく動きが正式に出てきております。今年は鶴ケ島市と私ども東洋大学が相互連携協定を結んで、実際の施設再配置の議論に大学が参加させてもらうことができるようになっています。施設計画が都市計画につながっていくというのは非常に現代的なところだと思います。

 

同じような動きがいろいろなところでもありまして、「鶴ヶ島は人口7万人という小さな自治体だから、そういうこともできるのでしょう」と言う意見もあります。しかし、さいたま市のような政令指定都市でも同じような問題があり、写真のように、中心市街地の中で小学校と市役所が隣接して老朽化している例もありました。こういうところで東洋大学と東京芸大が合同課題を設定し、このように投票しながらワークショップを開催しました。やっていることは、例えば、街の開発の方向性をこういう基準容積率に近い容積率を設定するのか、それとも現況にとどめるのか、というようなことから始め、先ほど紹介したようなプログラムを示していきます。こういう模型をたくさんつくりながら、街の方向性を議論するというように、政策的な議論につなげていくようなことをしています(ワークショップ等の画像を見せながら紹介)。

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