イベントレポート詳細Details of an event

第52回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画
「新しい設計体制を構築する」

2014年12月10日(水)
講演会/セミナー

藤村 これは1960年代にクリストファー・アレグザンダーが言っていた、かたちの合成に関する図式なのですが、「ヤカン」の形態というのはこのように21個の特別な要求というものに対して、ヤカンがどのように応えているか、ということを分解した図です。アレグザンダーはこのように要求とデザイン行為というものを、形とコンテクストのミスフィットを取り除くこと、と定義していました。つまり、形、プロトタイプをとりあえず置いて、置いた時に要求とずれているものを修正していきなさい、それを繰り返しなさい、と言ったわけです。それは都市形態や、より複雑な設計物に対して、どのように備えるかという60年代の問題でもありました。超高層ビルや巨大な飛行機などを設計する際には、とりあえずつくって試す、ということができないので、専門家が集まってコミュニケートする際にこうした設計論が盛んに議論されたようです。

 

インプットとアウトプットの関係で言うと、例えば法律や面積、温度、ストラクチャーなどの入力・要求があって、それに対して「エイヤ!」とまとめてアウトプットを出すのがデザイン行為だとすると、前半のアナリシスの部分に関しては、情報化が進み、どんどん見えるようになってきました。構造解析やモード解析もどんどんできるようになっていますけれど、それらの条件をインテグレートする行為に対しては、未だブラックボックスなのです。そこに関してはデザイナーが、エイヤ!と経験や直感に従ってつくっていくのですが、この部分を開いていきたいと考えており、私どもが行っているのは、1つの入力に対して1つの出力をする。それを反復していくということです。そのような反復をしていく中で、ちょっとずつ小さな創発を起こしていく。先ほどのビルの例で言うと、ちょっとしたメガストラクチャーがある段階で「これは吊り構造にしよう」というアイデアが出たりするなど段階的に積み上げていくのですが、形態としてはちょっとずつ統合が起こっていくわけです。そうしていくことを、私は「スーパーリニアデザイン・プロセス」「超線形的なプロセス」と呼んでいます。単なる線形とは違うところは、小さな創発を重ねていって、入力が多くなればなるほど結果が複雑かつ良好になっていくというイメージです。

 

これを、丹下健三は、かつて代々木体育館をつくるときに、3カ月という非常にタイトな期間でまとめたらしいですが、この時も非常に多くの案、神谷宏治さんの案や磯崎新さんの案などがあり、模型を使いながらそれらの案を議論していったらしいですね。私たちの世代ではCAD化が終わった後の妹島和世さんの影響が強くて、無数の模型を比較しながら選んでいくような、擬似的な淘汰プロセスをつくっています。その源流はレム・コールハースの考え方があります。当時は衝撃的だったのですが、概念を使わずに、段階的なプロトタイピングとフィードバックによって建築をつくっていけば、違いなどはたくさん出てくるのだ、と。形とコンテクストをどのように結んでいくかということについてはいろいろなやり方があるのですが、それを目指せば良いと彼は言っていました。だから、いわゆるコンセプトというものがないわけですで、このコンセプトがない、段階によってプロセス型の設計をしていくという動きが、90年代以降、建築界の主流を占めていったのですが、私はそれに厳密な形式を与えて可能性を広げたいと考えました

 

それは自分の仕事の中で進めて実感すると同時に、その後の展開の中で、それを教育に応用するという必要性も感じまして、学生にそれを教えるということをやっていった結果、例えばいい悪いを議論しない、あるいは全ての価値を肯定するという教育の仕方をできたり、チームティーチングにおいても使えるということを提案し、それを元にして「プロダクトだけでなくプロセスも評価する」ということを導入しようとしてきました。例えば、最後に選ばれた10人だけを講評するのではなくて、まず30人を選んで30人の中でどれがいいかをみんなの前で講評して選択していく。そういうことをやっていくと、どういうものがどう評価されて選ばれていくかを、みんなの前でオープンにできる。それを大学の場でやっていけば、講評会が活性化され、先生の講評を聞きながらも、みんなで投票して学生の票を並べるようなこともやっています。これは社会の縮図だと思っています。というのも、例えば、公共施設の設計を、専門家の委員たちが住民の知らないところで、いつの間にか設計者を決めている。公共施設の設計に対して市民がまったく関心を示さない、という状況が起きているわけで、そのプロセスを見えるものとして開いて、参加できる仕組みにしていけば、全体がアクティブになるわけです。

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