イベントレポート詳細Details of an event

第52回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画
「新しい設計体制を構築する」

2014年12月10日(水)
講演会/セミナー

 

藤村 藤村龍至です。私からは集団設計ということについて話したいと思います。ちょっとだけ自己紹介をしますと、私はこうした模型、いわゆるプロトタイピングと呼んだりしますけれど、まず、出てきた要件や入力に対して、それに反応し、形にする。そういう模型に反応して、違和感や課題等を観察し、次の模型に反映する、というようなことをやっています。

 

この写真は10坪ほどのインテリアの仕事「Shop U (UTSUWA)」(2005)なのですが、このように1個ずつ模型を作っては、ちょっとずつ問題を発見し、フィードバックしながら次の模型に反映させていく、というようなことをやってきました。その結果、でき上がったのが、これ(写真)です。この時に気がついたのは、模型を1つ作って、「ちょっとこれは違うな」とか「ここを、こうしたほうがいいな」というのをクライアントと一緒に覗き込みながら考えて、作り直していく、というやり方がすごく良かったわけです。つまり、最初からこういう形を作りたかったわけでもなく、これがいいと思っていたわけでもなく、クライアントが、ご自身の要望を完全に整理していたわけではないですが、形を出しながらちょっとずつ変更や改善をしてさらに形ができ上がっていくことについて、すごく可能性を感じたのです。

 

次(写真)の集合住宅「BUILDING K」(2008)でも、これは400坪ほどのビルだったのですが、その設計の際も、このようにちょっとずつ形を出して、(見つけた課題を)フィードバックしながら建築をつくりました。このようにやっていくと生き物のように生成していくのですが、でき上がった建物はこのような形をしており、屋上にこうした外部空間があったりします。そして、この立面図のように、こうしたメガフロアを4つのコアで支えています。2階から4階の床が、5階の空間から吊り下げられており、それにより(吊り材の)柱が非常に細くなって、柱・梁の出っ張りを室内に出さないで済むとか、1階店舗の最も賃料の高いテナントに柱を落とす必要がないとか、間口に対してフルにオープンできるなどさまざまなメリットが出ます。そういうことをやると同時にこのストラクチャーを支える中心部に設備を集約させていますので、維持管理が容易になります。

 

今、思い出しますと、この設計では設備設計に鈴木悠子さんという方、また構造設計では大野博史さんがいて、私たちはいつも3人で話し合っていたのです。この時に鈴木さんは「私は1度でいいから、最上階から最下階のピットまで真直ぐにストンと落ちる設備をやってみたい」と話していました。というのも、設備設計では必ず1階の天井裏に横引きをするので、そこでよく問題が起こっていて、集合住宅やこういう下駄履き型の建物では必ずそういう問題が起きると分かっているのに、その問題を抱えたまま設備設計をしていて「忸怩たる思いがある」と明かされたのです。その鈴木さんの夢を叶えるべく、構造と意匠が何度も知恵を絞って考えて、こういう真直ぐな設備スペースを中心に通す、というようなことをやりました。またそこは単に設備スペースというわけではなく、このように室外機を逆向きに設置し、上昇気流を発生させ、そこをオープン・エアダクトとして使うなど、いろんなことに、意匠、構造、設備が一体となって取り組みました。このやり方が街に対しても馴染むやり方ができたと思っているのですが、この時の経験が、その後の住宅の設計などにも活かされています

 

私の中で、集団設計をする、コラボレーションするイメージは、この「魚の発生過程の絵」にあるように、シンプルな卵から次第に形態が発生して全体に至る、というものです。ロバート・ヴェンチェリーが言っている「複雑な全体」というものをどうつくるかということに対して、こういうイメージを持っています。建築のつくり方も、こういう卵が分節されていき、だんだん組織化され、最後に複雑な全体ができる、というように、こういうつくり方がいいと思っているのですが、実際にやっていることは非常に単純で、ずっと同じ縮尺の模型をつくりながら、変えるところ、課題を1個だけ選ぶ、というやり方です。

 

例えば企画の段階でボリュームは出たけれども、1、2階は賃料を取るためにできる限り最大限にする、と(変遷する模型画像を見せながら解説)。で、ここでは3階から上の階で店舗は成り立たない、と言われて、住宅にしてしまった、というケースがある。そうすると誰も使えない屋上が出てきて、それを分散させてみようとします。次いで、屋上を分散させてしまうと商店街に対して圧迫感があるので、もう少し街並に合うよう崩そうとするなど、こうやっていくうちにペンシルビルが集合したような形になるのですが、これを一覧表にしたのがこの図です。この1番から40番までは、各模型の世代を示しています。またその過程でどのようなルールが導入されたかを示しています。最初のうち容積は一定なのですが、例えば構造は初期の頃に決まってきて、賃料単価の最大化を図るなど、全体にかかる大きなルールを最初のうちに決めていきます。しかし、段階が進み、最後のほうになると開口の揺らぎをなくそうとか、アスロックのモジュールを揃えようとか、そういう意匠的なルールに変わっていきます。こうして大きなものから小さなものまで設計関数を定めていくという流れがあり、その設計関数が定まった段階で最後のほうの調整をします。そういうように段階的に、政治の領域などではよくグラディアディズムとかインクリメンタリズム、漸進主義などと言われますが、大きな組織や制度などを動かす時にちょっとずつ段階的に変えていく、というやり方がありますけれど、それに近いイメージです。

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