イベントレポート詳細Details of an event

第52回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画
「新しい設計体制を構築する」

2014年12月10日(水)
講演会/セミナー


 

中崎 これから第52回のデザインフォーラムを開催します。これは1階で開催中の「新しい建築の楽しさ2014」と連動したフォーラムになります。毎回、2組から3組の出展者を招き、共通のテーマに沿って話します。今回は、お二人とも一般的なアトリエ事務所、例えば事務所の代表である建築家がいて、スタッフと一緒に設計を行うというかたちではなく、少し違うやり方で設計に取り組まれています。そこで、新しい設計体制を構築する、というテーマで議論したいと思っています。まず、お二人からプロジェクトについて話をしていただき、その後、フリートークを行います。では、稲垣さんの発表からお願いします。

 

 

稲垣 稲垣と申します。よろしくお願いします。まず私たちの自己紹介から始めます。

私、稲垣が属するEureka(エウレカ)は、4人のパートナーシップによる設計事務所です。それぞれの異なる専門性や経験を基に、建築を実現したい、と考えています。私、稲垣は設計の他にワークショップを通じて建築の仕組みをオープンにする取り組みや、この写真にあるように、地方のまちづくりを地域の方々とともに運営するような活動を行ってきました。

今日、会場には来ていないのですが、メンバーの佐野哲史は今回の展覧会で他に出展者も多い、隈研吾建築都市設計事務所の出身者の1人でして、多数のプロジェクトを担当してきました。また永井拓生は構造設計事務所を個人で営み、滋賀県立大学で教鞭も取っております。この写真の右下にある、竹を構造にした先進的な建築プロジェクト(竹の会所・復興の箱船)などにも取り組んでいます。4人目は堀英祐で、早稲田で教鞭をとり、都市環境工学を専門としております。普段の研究は都市環境のエネルギーなどを中心に扱っております。この4人それぞれの専門分野を活かし、統合した建築と、持続可能な地域社会づくりを目指しています。

 



それでは、今回出展したDragon Court Villageの紹介をいたします。1階のギャラリーの中で、こちらの模型がそのプロジェクトになります。2013年末に竣工して、ちょうど1年を迎えました。右手がその竣工した集合住宅で、左側の白い模型は隣地に提案している二期計画になります。Dragon Court Villageは愛知県岡崎市の郊外住宅地に建っておりまして、木造2階、9戸の賃貸集合住宅です。すべて異なる間取りのユニットが2層メゾネットで構成されており、立体的なパズルのように組み合わせて全体が構成されております。延べ床面積が500㎡、各住戸は40~60㎡程度になっています。

 

このプロジェクトを4つのテーマに沿ってご説明します。1つ目は「持続可能な住居の集合形式」、2つ目が「ポスト車社会と新しいパブリック」、3つ目は「変容するライフスタイルと空間運営」、4つ目が「マルチレイヤードフレーム」です。これは今日のテーマと関連する内容かと思います。意匠、構造、環境の重ね合わせについて、どのような実践がなされたかについて紹介できればと思います。

 

 最初のテーマ「持続可能な住居の集合形式」です。世界の中での東アジア、日本における居住の持続可能性について、大きな視点に立って計画しています。Dragon Court Village、このプロジェクトにおいては、屋外環境を積極的に生活の一部として取り込む暮らしを実現できる集合住宅をテーマに掲げました。集合住宅を通り抜ける、このような路地状の外部空間が連なり、バルコニーやテラスが立体的な関係を結べるような、そういった構成になっています。こちらは今年初めて迎えた夏の写真です。軒下に木陰ができ、風の通り抜ける涼しい場所が生まれました。できるだけこのような空間をたくさん持ちたいと、計画をしています。

 

その背景としては、次のような大きな視点に立って考えました。現在、世界各地で気温上昇の傾向、いわゆる地球温暖化という問題があります。20世紀の100年の間に、確かに各地で1℃以上の平均気温の上昇が報告されています。日本でも同様で、特に都市部ではヒートアイランド現象として現れており、例えば、2℃以上の平均気温の上昇があるとも言われます。東アジアではこれから100年かけて2~3℃の平均気温の上昇があるだろうというシナリオを、地球環境シミュレーターが予測しております。亜熱帯化する地理的、歴史的条件にあって、いかにエネルギーに頼らず快適な空間で生活できるか、そのような居住環境の持続性を考えることが重要だと考えました。

 

もう1つ気候変動に関しては、異常気象の常襲化というものもあります。こちらは、豪雨の頻度に関する統計と予測ですが、ここ30年の豪雨の頻度に対して、21世紀の終わり頃は20%も増えるだろうと予測されています。なお、この予測には局地的なゲリラ豪雨は含まれません。ちなみに、これはDragon Court Villageの敷地近辺で起きた2008年のゲリラ豪雨直後の写真です。このように擁壁が崩壊し、路盤も陥没しています。こういう事実が、今回の設計の1つのきっかけになりました。

 

今日、環境という言葉ではひとくくりにできないさまざまな社会問題が存在します。一方で、環境をポジティブに建築空間と結びつけることが求められていると考えています。そのような自然災害が繰り返し起こるのだとすれば、これまでの暮らしと異なる居住文化は、いったいどのようなものだろうか、と考えながら計画を練り行いました。考える際、重要となったのは、私がこれまで東アジアや東南アジアで行ってきた集落や都市空間のフィールドワークです。少し脱線しますが、それを紹介します。

 

*写真も使って、東アジア、東南アジアでの環境、都市、住空間、生活習慣等フィールドワークの詳細を紹介。それらの調査研究がDragon Court Villageの設計に大きく影響していることを解説。

 

 さて、Dragon Court Villageでは、軒下空間を生活の場とすべく、まず夏の卓越風に基づいてシミュレーションを行いました。風の流れを妨げ、風速を下げてしまうような建物の配置を避け、風が抜けていく軒下と外部空間のレイアウトを行っています。風が抜け、日陰を持った軒下が、先ほど紹介した写真のようにでき上がりました。集合住宅の地上部は、このようにレベル差を持ちながら、こうした軒下空間と庭は連なって貫通しています。これらの空間は時にある居住者に専有されたり、複数世帯にまたがって使われたりもします。領域が曖昧になったり、重なったりするように設計しています。こうした外部空間の住みこなしが、将来的に簡易な増築のようなことも起こってきて、更新がなされるかもしれないと考えています。Dragon Court Villageでは東アジアの来るべき居住環境を前にして、室内外の親密な関係を持って、変化を抱えるような居住空間を計画しました。これが、住居の持続可能性という1つ目のテーマになります。

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