イベントレポート詳細Details of an event

第51回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画
「リノベーションは多様化する」

2014年11月20日(木)
講演会/セミナー

 



松井 松井と申します。このプロジェクトは、僕の経験の中では”大きな箱”になります。これまで小規模なものを含めるといくつものリノベーションを手掛けてきたのですが、このプロジェクトは敷地面積3000㎡超の保養所を改修して、シェア別荘にするというものです。保養所を買い上げ、若い層をターゲットとしたシェア別荘として再構築させたい、と言うのが事業主の要望でした。5人ほどの建築家を指名してコンペ形式で、その経過を雑誌に載せながら展開していく、という企画で始まりました。

 

場所は箱根の強羅で高級別荘や企業の保養所がたくさんある土地です。ここに芦ノ湖があり、このように航空写真で見ると、ほとんどが森になっています。この森の中にある保養所だったので、ファサードがほとんどありません。道路からもまったく見えない場所にあるため、外観にはあまり力を入れてデザインがなされていません。この写真は先ほどとは逆側から見たもので、森にせり出すようなバルコニーです。写真を見るとこの建物が森に囲まれている様子が解かります。内部空間は、25年前らしいオーセンティックなイメージですが、特徴的なのは、大勢の人が集まれるように、全てが大きな領域になっていて、ソファーセットや食堂なども、このように大きなスケール感で作られています。会社の保養所として使われていたので、共用スペースの使われ方が別荘としては不向きであり、シェア別荘として再構築するには課題となります。

 

これが建物の配置図です。右側に見えるのが別荘の本体の部分です。このスライドに映っているすべての敷地内が森も含め使える状態です。この森の中にもシェア別荘として使える小さなスペースを点在させていこうという提案をしています。これが1階の平面図です。ベージュに塗られている部分が共用部で、ここをどのように使っていくかがプロジェクトの最大の焦点でした。通常は、パブリックスペースの中に、みんなで使うもの、例えば先ほどのソファーセットや食堂があったりするのですが、私たちの提案は、その逆で、この真ん中のダイアグラムに示すように、個人で使うスペースをパブリックスペースの中に押し込んでしまうというものでした。そうすると、パーソナルのスペースを完全に専有してしまってもいいですし、使う人によっては、一部をパブリックスペースにつなげてもいい、というような柔軟なシステムです。不動産的な観点からこのシステムを考えると、占有しているスペースは、箱として貸してしまっている状態と考えることができますので、不動産のサスティナビリティとしても、この考え方が許容できるのではないか、と考えています。

 



これがバルコニーとその奥の共用スペースです。以前は食堂として多くのテーブルがあったところです。(リノベーション後は)このようにたくさんの箱が並んでいて、その箱を家族単位で占拠していくようなイメージで検討しました。その箱の中は、家族それぞれで固有の使い方をしてもらいます。余白となる部分は、複数の家族が交わる場所になります。

 

これが模型です。木で作っているところが重点的に手を入れている部分です。非常に大きな建物なので、全て手を入れるのはコスト的に厳しいため、手を入れるべきところを分かりやすくこの模型では示しています。このように横から見ても新たにつくっている部分とつくっていない部分がはっきり分かります。外観は先ほど話したようにほとんど手をつけていません、もちろん、補修という意味での改修はするのですが、新しい機能を足すようなことはせずに、内側から建築をつくるということを心がけています。

 

一つ一つのパーソナルなボックスを、実設計の段階では、いろいろなキャラクターを持たせています。利用する家族が、自分の好きなスペースを見つけ出すようなことができれば、と思っています。小さな部屋、或いは、大きな家具ともいえるようなスケール感のものが、外にもはみ出てくるような状態をつくっています。使われない場所を専有スペースとして使えるようにすることで、外と内だけではない、その中間的な領域をつくることを考えています。

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