イベントレポート詳細Details of an event

第51回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画
「リノベーションは多様化する」

2014年11月20日(木)
講演会/セミナー

栗田 リノベーションの多様性というテーマに寄せて、もう1つ私が関わった事例を紹介します。

高知県の四万十市で、中村駅の設計をさせていただきました。きっかけは研究コンペで助成金をもらい1年間のリサーチを経て、そのリサーチが縁でリノベーションの依頼がありました。何をベースにリノベーションを考えたかというと、30年後に、この第三セクター鉄道(土佐くろしお鉄道)がどうなっているかというシナリオを考えて、そこから遡って今何をすべきかを考えました。現在も年間2億円の赤字が出ており、何とか地元の自治体がお金を出し合って存続させている鉄道です。しかし、そのお金を出すのが途絶えた瞬間に、この鉄道会社はつぶれてしまいます。そこで、もし、それが潰れたらどうなるのか、ということまでシミュレーションして、考えたわけです。

 

今は通学などにも使われているその公共交通が、将来なくなったと仮定します。現在、高齢化が非常に進んでおり、30年後、ほとんどの高齢者がお亡くなりになる。公共交通のないところでは子育てが難しいので、ほとんどの人が都市部へ出て行く。そうすると、この町自体がなくなるかもしれない、ということが前提になります。そういう予測のもと、できることを考えた結果、中村駅だからこそ高齢者をターゲットにした駅舎ではなく、若者をターゲットにした駅舎のリノベーションをすることにしました。これまでは年金生活の高齢者の方々が、朝からお酒を飲んでテレビを見ている、という待合室の雰囲気で、通学で使う中高生が、恐くていられない、という印象だったのです。

 

で、こういうような地方の街なので、駅を出てもカフェなどありませんし、コンビニはない、商店街は閉まっている。そういうような状況で2時間に1本しか来ない列車を乗り過ごしたりすると、もう学生たちは行くところがなく絶望的な状況になるのです。その中で、彼らに「空き空間や空き時間」をこの駅舎で使ってもらえるようにすることはできないかと考えました。結果として、リノベーションした後、学生たちには大変評判の良い駅になりました。

 

また、この駅には空きスペースがかなりあったのです。とくに駅のプラットフォームは非常に広いスペースがありました。しかし、県からの助成金では改札から外側にしかお金を使えない。そこで、私たちが考えたのは、列車の本数がこんなに少ない駅にしっかりした改札が本当に必要か、ということでした。車内検札でもいいのではないか、ということでした。そこで、改札をなくす、というか、正確に言うと改札の位置をプラットフォームのギリギリの位置へ移動するということを考えました。そうするとプラットフォームのこの辺りも改札の外側になりますから、助成金を使えるし、リノベーションの幅が広がります。かつてのプラットフォームも待合室です、という提案をさせていただきました。観光客の方に対しても、四万十檜でつくった駅舎で出迎える、ということができます。駆け足になりましたが、リノベーションの考え方として、形をどうするというよりも、気持ちや行動をどのように将来の利用につなげていくかをうまくデザインできるといいなぁ、と思っております。

 

中崎 どうもありがとうございました。この中村駅は今年のブルネル賞を受賞しています。今回の展覧会は日経BP社の「ケンプラッツ」というウェブサイトに私が連載しているものを1年間分まとめて模型展で見てもらおうというものでもあります。私が栗田さんのプロジェクトを取材したのは、水辺をどのようにリノベーションするか、ということに興味があったためです。続いて松井さんに、「みんなの別荘プロジェクト」についてお話しをいただきます。

1 2 3 4 5 6 7 8