イベントレポート詳細Details of an event

第94回AGC Studioデザインフォーラム トークセッション
「EDIDAとガラスの緊密な関係 東京・ミラノからの最新報告」

2018年4月26日(木)
講演会/セミナー

2018年のEDIDA AWARD 受賞者発表「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」

 

佐藤:ここで、今年のEDIDAの受賞者についての話に移りたいと思います。
 毎年、ミラノサローネの際にEDIDAの発表がありまして、今年も先々週、2018年のアワード受賞者が発表されました。通常は『エル・デコ』の最新号に速報をレポートするのですが、今年はこのセッションでの発表が、日本では初となります。
 今年のデザイナー・オブ・ザ・イヤーは、オランダを拠点に活動する男性二人組みのフォルマファンタズマが受賞しました。佐野さん、we+さんの活動とリンクする部分があると思うのですが、今年はとても象徴的な受賞でして、彼らの作品がデザインか否かというのは、やや難しいところではあるかと感じます。

 

安藤:つまり、アートにも寄ってきているということですね。

 

佐藤:そうですね。佐野さんもwe+さんの活動もコミッションワークが多めで、マスプロダクションとはちょっと違うところで、デザインを手がけていらっしゃると思いますが、フォルマファンタズマも、同様なアプローチをされています。この受賞に関して、感想をお伺いできればと思います。

 

:すごく嬉しいな、と思います。ミラノサローネに出品するデザイナーの中には、何十年も第一線でやっている方々が多く、もちろん偉大ではあるのですが、その人たちのフィールドがとても大きいというところがある。若者がどのように活躍するか、ということにおいては、自分たちも今後、どう進んでいくか、という気持ちはあります。

 

佐藤:フォルマファンタズマの二人は、we+さんと同世代ですよね。

 

:はい、ほぼ同世代です。フォルマファンタズマも、今までのデザインのフィールドを拡張している一組みかな、と感じています。デザインの可能性がドンドン広がっていくことを体現している彼らが、『エル・デコ』に評価されるのは、大きな流れとして、こういう世界もあるということを伝えるという意味で、とても面白いと思います。

 

安藤:ミラノサローネの本会場に、サローネサテリテという35歳未満の若手デザイナーの展示場があり、nendoの佐藤オオキさんなども、そこでの展示をきっかけに注目され始めました。そのサローネサテリテを去年、今年と続けて見ている人が言っていたのは、「大量生産型のインダストリアルな椅子ではなく、1点モノのアートっぽい椅子、これは椅子としては成立しないだろうという概念的な椅子などが、デザイナーの作品として増えてきている」ということです。
 デザイン業界、あるいは建築業界もそうかも知れませんが、この大きな流れにはアート的な要素が関わり、今までの既存の建築・インテリア・プロダクト・家具などの概念がドンドン崩れてきていて、ボーダレスになっている、という印象があります。その最たるものが、フォルマファンタズマの受賞だったのかなと思います。

 

佐野:フォルマファンタズマはここ数年のデザインシーンによく登場していて、魚の皮のバッグや溶岩を研磨した鏡などを発表していて、すごいなと思っていました。僕が冒頭で述べた、鯨の骨をCNCルーターで削って加工したモノは裏面を磨いて鏡にしているのですが、いわゆる通常の鏡にはならない。モノを普通に映す鏡にはなりえないけれども、概念としての鏡、素材そのものをどう見せるか、ということでモノを作っている。ずっと前から面白いなと思っていて、今回の受賞で、よりメインストリームに来ているな、と感じます。

 

佐藤:そうですね。アートの文脈を踏まえてデザインをされていて、そこからマスプロダクションに入ってきたという、通常の流れと逆のベクトルと言いますか、そういう雰囲気を感じさせるかと思います。

 

安藤:以前、デザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞しているnendoの佐藤オオキさんも、インダストリアルな分野やメーカーさんとのコラボレーションなどが得意な方かと思いますが、そういう方々が受賞者として名を連ねているなかで、フォルマファンタズマの受賞は、彗星のように現れたという感もあります。

 

佐野:そうですね。ただ、吉岡徳仁さんなどは、フォルマファンタズマのほうに近いかもしれない。ビッグメーカーと一緒にやり始めても、まだまだ独自のやり方で輝いている、という感じがします。

 

佐藤:ビッグブランドがマスプロダクションを作るなかで、工業的なモノを作っていても、もはやビジネスの展開が難しい部分もあるとは思います。人の手がかかり、モノを持つ喜びがあり、誰とも同じものではない、というような。そういうモノを提供できないと、なかなか生き残ってはいけないのでは、とも思います。

 

:フォルマファンタズマが作るものは、作品それぞれに背景のストーリーがあり、それがとても明確に出てきている気がします。これまでのデザインは意匠性と言いますか、カタチを追い求めるのが中心だった。それらがもう飽和しているので、その背景にどういうストーリーがあり、それをどうアウトプットするのかが大切になってきている。それを重要視する人が増えている、という印象があります。

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