イベントレポート詳細Details of an event

第94回AGC Studioデザインフォーラム トークセッション
「EDIDAとガラスの緊密な関係 東京・ミラノからの最新報告」

2018年4月26日(木)
講演会/セミナー

2組の作品に見る、素材にチャレンジしている仕事ということでの共通点

 

佐藤:この作品はどういうプロセスで出来上がったのでしょうか? Rossana Orlandiのほうから、具体的な依頼があるわけではないのでしょうか。

 

:そうですね。あらかじめ世の中に発表されているものから、Rossana Orlandiが選出するケースが多くなります。また、デザイナーに、こういうのを作ってほしい、という依頼がある場合もあるそうですが、僕たちの場合は、自分たちであらかじめ作ったものをプレゼンし、選んでいただいて展示につながるパターンです。
 次の作品は、ミラノサローネのスーパースタジオで展示したものです。ミラノサローネは本会場に加えて、街の各所にさまざまな会場があり、その中の一つに、スーパースタジオという比較的大きな会場があります。そこで発表したのが、NBCメッシュテックさんとのコラボレーションでつくった「Peep」です。同社の機能性メッシュを活用した照明とパーテーションになります。
 写真左側の黒く見える部分が細かいメッシュになっており、医療用フィルターやエアコンのフィルターなどをもっと細かくしたような素材です。1インチあたりに縦糸・横糸が約400本も入っているようなメッシュ素材でして、写真右側のように、分光やモアレを生み出し対象物を面白く見せる特質があります。
 これはパーテーションとして作ったもので、通常、パーテーションは間仕切りのために用いますが、このメッシュ素材を使うと、“奥の世界を変える”ものとなり、パーテーションの新しい在り方を提示しています。

 

佐藤:このメッシュ素材は、通常はどのような用途の素材なのですか?

 

:通常は、医療分野での血液の濾過、シルクスクリーン印刷の版の製作など、産業用資材として使われています。そのため、世の中にありふれている素材ではあるのですが、一般の人がじっくり目にする機会は少ない。通常はB to Bで扱っている素材を多くの人にいかにわかりやすく伝えられるか、という課題から、ご依頼いただいた案件です。

 

佐藤:タッチポイントになるようなモノを作る、ということですね。

 

:はい、そうです。

 

安藤:この素材はNBCメッシュテックさんの製品ですが、メーカーさん側では、当初、こういう用途や光の効果をまったく想像していなかったようです。大量のメッシュをサンプルとしていただいて、いろいろ実験をしていったなかで、たまたま、分光やモアレの現象を見つけて、これ面白いね、ということで製作を進めました。
 メーカーの皆様がまだ気づいていない特徴を見つけ、それをもとに作品を作れたのは、とても嬉しいことでした。また、興味深いことに、なぜこういう現象が起こっているかの詳細を、メーカーさんもわかっていない、ということもあります。

 

佐藤:このメッシュは、写真のように素地として青いのですか?

 

:素地は黒でして、光をあてると少し変わり、後方の世界を映すときにちょっと青っぽくなったりします。
 もう一つ、同じメッシュを使った照明も製作しました。外から見ると、写真左側のカタチとなりますが、“覗き込むライト”として製作していて、「筒を上から覗いてください」というライトです。そうすると、写真右側のような世界が広がっています。

 

安藤:内側に小さな高照度のパワーLEDが入っていて、LEDを覗き込むようになるのですが、筒の内側にメッシュを貼っていて、光を通すと、なぜか虹色に割れた側面が見える、というものです。これも、“なぜか”で、どうしてこうなるかの詳細はわかっていません。

 

:ミラノで展示している際、或る人に、「レンズがもたらす効果と似ているので、レンズの専門家だとわかるかもしれない」と言われました。光の屈折やプリズム効果などに原理としては近いらしいです。メッシュ素材でこういう効果を得られることはあまり知られていないので、展示期間中、多くの人に面白がっていただきました。

 

佐藤:今回の佐野さん、we+さんの作品とも、素材にチャレンジしている仕事ということでの共通点があると思います。佐野さんはそのあたりをどうお考えですか?

 

佐野:we+さんとは、今までも、そういったことについて話す機会がありました。素材についてもそうですし、日本にはまだ“コンテンポラリー”というカテゴリーがない状態なので、それをどう表現していくべきか、などについて話したりしています。
 どういうプロジェクトでもそうなのですが、素材を探しに行って、曲げてみたり割ってみたりなどして、素材の特徴を知ったうえでモノをつくっています。we+のお二人は、特殊素材にチャレンジされることも多いかと思うので、そういうところも面白いと思います。先程のメッシュの作品のように、その存在自体は知っているのだけれども、実際に見ることが少ないものを使って、ディテールを作っているのは、とても興味深いです。

 

佐藤:今回の佐野さんの展示「佐野やぐら」では、ガラスを柱に使っていますが、打ち合わせの段階から、けっこう大変だったのではないかと思われますが、そのあたりはいかがでしょうか?

 

佐野:はい。最初はタブー的な感じもありました(笑)。

 

佐藤:実際に進めるうえで難しかったのは、どういうところでしたか?

 

佐野:割れて倒壊しない、ということがまず前提にあります。加えて、ガラスで継ぐ伝統というコンセプトを体現していくなかで、ガラスと木のディテールのジョイント部分をどう作るかも難しかったです。

 

佐藤:we+さんは、実際に佐野さんの今回の作品をご覧になられて、どういう感想をお持ちですか。

 

安藤:最初に見たとき、これしんどいだろうな、と思いました(笑)。コンセプトが明快なストラクチャーなので、ぱっと見て、何がしたかったかがすぐわかり、それを作るうえでのしんどさも客観的に理解できました。
 加えて、別の角度で面白いな、と感じたことがあります。ガラスは積層させると、プリズムが起きて、小口の奥の世界がとても面白いな、と。例えば、アクリルでは、あのような奥の世界は見られないかな、と。ガラスの小口特有の面白さがすごくあると思いました。期せずしてそうなったのか、意図してそうなったのか、あるいは規格寸を追いかけていくと、こうなるのかな、とも考えますが、そういう面白い発見があるな、と感じました。

 

佐藤:実際には、どのように製作されているのでしょうか。

 

佐野:柱は15mmのガラスを6枚積層、KANAWAは19mmのガラスを20枚ほど積層しています。

 

佐藤:積層自体は圧着でつくるのですか?

 

佐野:KANAWAは、より透明度を出すために、UV接着という赤外線で固まる状態で積層しています。柱のほうは、万が一、地震などで横からの力がかかった際に破断してしまっても、ボキッと崩れ落ちてしまわないように、中にフィルムを入れて接着しています。

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