イベントレポート詳細Details of an event

第94回AGC Studioデザインフォーラム トークセッション
「EDIDAとガラスの緊密な関係 東京・ミラノからの最新報告」

2018年4月26日(木)
講演会/セミナー

we+が語る「コンテンポラリーデザイン」

 

佐藤:ありがとうございます。では続いて、we+さんをご紹介します。
 we+さんは、2017年の『エル・デコ』日本版のヤング・ジャパニーズ・デザイナー・タレント賞を受賞されています。また、今年のミラノサローネでも、Rossana Orlandiなど複数の会場で、作品の展示を行っていらっしゃいます。

 

安藤:we+の安藤と申します。宜しくお願いします。

 

:林と申します。宜しくお願いします。

 

安藤:まず、we+についてお話したいと思います。僕たちは“コンテンポラリーデザインスタジオ”として活動していて、よく「何やっているの?」と聞かれるのですが、「コンテンポラリーをやっています」と、お応えしています。この“コンテンポラリーデザイン”については、後ほど、ご説明いたします。
 仕事の領域は、プロダクト、空間のインスタレーション、グラフィックなど、いろいろあるのですが、いずれにしても、テクノロジーや特殊素材、或いは普段目にしているような素材を活用して、比較的実験的にモノゴトを作っています。ミラノで発表している作品もすべて、大量生産からはちょっと距離を置いたところにあり、実験的なワンオフの家具などをよく作っています。
 佐藤さんがおっしゃっていたミラノのRossana Orlandiと、パリのGallery S. Bensimonというデザインギャラリーに所属しています。こういうデザインギャラリーはざっくり言うと、アートギャラリーのデザイン版のようなものです。
 ワンオフの椅子などは日本ではあまり馴染みがないと思いますが、このような家具のコレクターはヨーロッパやアメリカのマイアミなどにけっこう多く、そういう背景もあり、ミラノ、パリという海外のギャラリーに所属しています。

 

 先程の“コンテンポラリーデザイン”について、ご説明いたします。
 この図はよく使うもので、アートとデザインを対極に置いて説明するとわかりやすいので、この二つをあえて対極に置いています。これについては、いろいろな考え方があり、アートとデザインは主従関係にあると言う人もいれば、対極と言う人もいて、また、同じだと言う人もいると思います。あくまでも説明しやすくするため、ということで、ご理解いただければと思います。
 僕らが考えているアートは、機能性を持っていないものではないか、ということです。つまり、ペインティングやスカルプチャーなどは、正直、なくても生活していけるよね、という側面があるかと思います。また、課題を世の中に対して提起していくもの、という認識を持っています。
 当然、作家性があるので、作家の内なるモチベーションからアートを作っていくわけですが、そのモチベーションのもとになるのが、社会的な某(なにがし)だったりします。また、世の中にメッセージを伝えるために、アートという手法を使っているアーティストもいると思います。
 そこで僕らは、アートを「課題提起型」と定義しています。そうすると、合理的な考え方でモノを作っていくというより、例えば、経済合理性を抜いたようなかたちで、非合理的にモノを作っていかざるを得ない。やや乱暴な言い方ではありますが、これが僕たちのアートの定義となります。

 

 一方で、デザインはその対極にあり、機能性を必ず担保しなければならない。ここで出てくるのが「課題解決型」という言葉です。
 最近、「デザインシンキング」といって、デザインで世の中の課題を解決していこう、という考え方が徐々にメジャーになってきていると思いますが、“課題を解決していくためのツール”としてのデザインが存在する。そうなると、諸々のコンディションやいろいろな要素を方程式のように紐解いていき、合理的にモノを作っていくのが、デザインのあるべき姿の一つだと思います。

 

 では、コンテンポラリーデザインの概念はというと、僕らは、アートとデザインの真ん中にあると位置づけています。つまり、アートとデザインの中間地点です。世の中に課題を提起していくアートの特徴とデザインの機能性は、最低限担保したいと思っています。

 

 この後、僕たちの作品を紹介していきますが、合理的な考え方に基づいて作っているわけではなく、“モノを作る”ということを全力で実現するための手段として、素材を使ったりしています。経済的・合理的にやっているかというと、必ずしもそうでもないかな、と思います。
 僕たちは、“デザイン軸”でモノゴトを考えています。つまり、デザインの文脈に対して、自分たちの作品をプロットしている。作品だけを見ると、「アートっぽいね」と言われることも多いのですが、アートの歴史やコンテキストを理解しているというより、あくまでもデザインの歴史上に自分たちのことをプロットしていく、という認識を持っています。よって、デザインの役割を拡張していく、という考え方で、モノをつくっています。

 

 世界で“コンテンポラリーデザイン”を名乗っているデザイナーはけっこう多いのですが、日本では、知りうる限り、僕たちだけだと思います。そのwe+の定義は、「デザインの可能性を拡張する」と「社会に対して、より新たな視座・未来を提示する」ということです。
「デザインの可能性を拡張する」ためには、機能性を絶対的な要素として捉えず、合理性を前提条件としない、という考え方で、可能性をとにかく拡張していきたいと思っています。「社会に対して、より新たな視座(パースペクティブ)・未来を提示する」ものでありたい、ということにおいては、課題解決型というより、課題を提起していき、既成概念的なもの、例えば、椅子とは何だろう、テーブルとは何だろう、と問い直す作業をしています。
 それを具体化した作品について、林のほうからご説明いたします。

 

:一つ目は「MOMENTum モメンタム」という作品でして、まず、映像をご覧いただきます。[映像 上映]
 これはローテーブルでして、テーブルのエッジから、リアルな水がコントロールされて出ています。水が一度出てしまうと、中がお椀状になっていて、水が流れるままに動いているだけとなり、水の量と出るタイミングをコントロールすることで、このような動きを見せていきます。ある程度はコントロールしますが、出てしまったら後は水が流れるままとなるので、一度として同じ動きを見られることはありません。私たちの生活の身近にある水の流れる美しさや動きをどう捉えられるか、に挑戦した作品です。
 先程、安藤が言っていたように、機能性としては、テーブルとしての機能を持たせてはいますが、モノを置くテーブルというより、“愛でるテーブル”と言えます。僕らは、よく「目置き」という言葉を使っていますが、目をずっと置いておけるモノって何なのだろう、と考えて作ったものの一つです。

 

 次は「Cuddle カドル」という名の照明です。これも映像をご覧ください。[映像 上映]
 先程のテーブルと同じように水を使った照明で、アクリル板にリアルな水が同心円状にくっついています。これは、三井化学さんとのコラボレーションで作った作品でして、同社の超親水性コーティング材「ノストラ(R)」を使っています。撥水と真逆の親水性を持っていて、水をくっつける性質を持つ透明の素材です。通常は、浴室の床面などに用いて水の流れをよくしたり、車のガラスコーティングに使われたりしています。
 水をくっつけるという要素を僕たちなりにどう表現し、昇華できればいいかと考えました。このように、影がとてもきれいに見えるので、影を落とす照明の素材として水を使ってみようということで、この作品が生まれたわけです。
 本来、水と電気は相反するものでして、まず、危ない。また、この照明は下に水がくっつくようになっているのですが、時間が経つと乾いてしまいます。そのため、実用的な照明として使えるかどうかについては、いろいろ課題がありますが、それよりも水の美しさを照明というカタチでいかに最大化できるか、を考え、落とし込んだ作品です。こういう影はなかなか出せないものでして、三井化学さんのこの素材があったからこそできた表現となります。
 このように、先程、安藤がお話した“コンテンポラリーデザイン”のリミテッドエディションで作品を作り、世の中に発表する活動を主軸としています。

 

 今年のミラノサローネにおいて、Rossana Orlandiのデザインギャラリーに出品した椅子「Swarm」をご覧いただきましょう。
 手前が構造体としての椅子でして、周囲に鉄線が見えますが、この鉄線は構造体に付けた磁石によって吸着しています。つまり、鉄線が磁力によって椅子にくっつき、このような表面をつくっている。プロセス自体は設計するわけですが、最終的な椅子のカタチは、磁力と鉄線がつくる自然現象となります。先程の水の動きもそうですが、このような自然現象はとても美しく、人知を超えたところにあると考えており、その要素をいかに作品に落とし込むかに挑戦しています。
 花瓶バージョンもありまして、椅子と同じ考え方なのですが、構造体とその周りにまとわりつく磁石を設計し、ディテールは磁力に委ねるというものです。海外のメディアには評判がよく、いろいろご紹介いただきました。

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