イベントレポート詳細Details of an event

第94回AGC Studioデザインフォーラム トークセッション
「EDIDAとガラスの緊密な関係 東京・ミラノからの最新報告」

2018年4月26日(木)
講演会/セミナー

【パネラー】
佐野 文彦 氏:建築家、美術家

 

we+ 安藤 北斗 氏、林 登志也 氏:コンテンポラリーデザインスタジオ

 

 

【進行】
佐藤 久美子 氏:エル・デコ編集部

 

「GLASS/EDIDA」~佐野文彦による作品解説

 

佐藤:皆様こんばんは。本日はお忙しい中、お集りいただきありがとうございます。まず、現在、AGC Studioの1階で開催している「GLASS/EDIDA」の展示概要について私からご説明し、その後に、今日のパネラーである佐野さん、we+の安藤さん、林さんのトークセッションを行います。
『エル・デコ』は世界25カ国で33エディションを発行するライフスタイル・デコレーションマガジンでして、「デザイン界のアカデミー賞」と呼ばれるEDIDA(エディーダ:エル・デコ インターナショナル・デザイン・アワード)を主催しています。2003年にスタートした祭典でして、パトリシア・ウルキオラさん、アントニオ・チッテリオさん、日本人では吉岡徳仁さん、佐藤オオキさん、深澤直人さんが受賞されていて、世界でも権威がある賞として認知されています。
その日本版のヤング・ジャパニーズ・デザイナー・タレント賞を受賞されたのが、パネラーである佐野さんとwe+さんです。

 

 今日は、EDIDAの受賞者の方々の作品と、現在、AGC Studioの1階に展示されている「GLASS/EDIDA ガラスで継ぐ伝統と未来」をテーマとする佐野さんの作品、佐藤オオキさん主催のnendoの作品などについてお話します。
 いずれも、ガラスプロダクトに対してのチャレンジングな作品となっているので、ぜひ、この機会に、皆様にご覧いただければと思っております。詳しいご説明は佐野さんのほうからお願いしたいと存じます。
 佐野さんは建築家であり、美術家であられ、中村外二工務店で数寄屋大工としてキャリアをスタートさせている方です。2014年にEDIDAを受賞されていて、建築とアートという両方の文脈を行き来するようなかたちで活躍されています。今回、佐野さんは、1階の会場構成に加えて、「KANAWA」というプロダクトを制作いただいています。それについても、佐野さんからお話いただければと思っております。
 では、佐野さん、宜しくお願いいたします。

 

佐野:こんばんは。今、ご紹介いただいた佐野です。私は、先程のお話にあったように、茶室や料亭を造るなどの数寄屋大工の修業をしまして、その後、設計事務所やデンマークでの家具作りを経て、独立しました。今は、建築をやったり、アートをやったり、デザインに取り組んだりしています。
 数寄屋とは何か、という話によくなるのですが、数寄屋は日本の建築様式の一つで、茶室が空間に取り入れられていったようなものだ、と言われています。もっと具体的に言うと、“丸太”がキーワードになり、野外に生えている皮がついているものを剥いで使うもの、北山丸太などがそうですが、「赤木」と呼ばれるもの、「白木」と呼ばれるようなものが入り混ざり、なおかつ、竹、ガマなどの草に近いものまでを空間に取り込んで材料として使う建築を「数寄屋」と呼んでいます
 代表的な建築としては、京都の妙喜庵待庵、修学院離宮、桂離宮、村野藤吾氏設計の佳水園(ウェスティン都ホテル京都 別館)などがあります。今、ご覧いただいている写真は、私が数寄屋大工の修業時代に関わった大徳寺の塔頭の一つです。また、古い茶室を修復しているだけではなく、新しい茶室の建築も行っていました。
 この写真は隈研吾さんが手がけた“現代の桂離宮”と呼ばれるもの、次のものは大徳寺真珠庵の奥にある茶室・庭玉軒です。庭玉軒は、江戸初期の茶人・金森宗和が好んだことで知られる文化財でして、私はそういう茶室の修復にも携わっていました。

 

 日本的な建築とは何か、ということを考えますと、よく言われるのが、「中・中間領域・外」という日本特有の空間領域です。こういうシームレスなつながりをどう表現するかということを、インスタレーションも含めて行っています。私の過去のキャリアを含めても、茶室をコンテンポラリーなかたちで表現していくのがいいのではないかと思い、茶室を造るプロジェクトを多数手がけています。

 

 ご覧いただいているのは、そういうプロジェクトの写真です。これがEDIDAを受賞した際の会場構成でして、一つの空間の中に屋内と屋外を造ったり、映り込むアルミの外壁材を貼った茶室を造って、その中にアワードをいただいた作品を取り込んでいったりしています。ここでは、本物の石を持ち込み、その周囲に本物の苔を植えて土をまき、毎日水をやりながら、展示を行いました。

 

 一方こちらは、京都で手がけたコワーキングスペースのプロジェクトです。築120年くらいの木造3階建ての洋風建築でして、京都でも珍しいスタイルの建物なのですが、そこをコワーキングスペースとして生かす改築を行いました。
 次の写真は、パリのラッピング店のプロジェクトです。日本では折形、熨斗と言われるようなラッピングの一様式でして、それを楽しめるサロンをデザインしました。こちらは無印良品さんと組んだプロジェクト、次が東京都現代美術館に作家として出品した作品、その次がパリで写真展の構成をやらせていただいた際の作品です。
 この写真は、文化庁からお声がけいただいて進めた文化交流のプロジェクトでして、海外で現地の素材を用い、現地の人と一緒に小屋を建てて廻るというものでした。小屋は地域の風土をよく表していて、そこで採れる材料を使い、そこで造れる工法で建てている。私がその土地に赴き、日本の大工の技術を用い、設計も行って、現地の人と共に小屋を建てるという実践から何か面白いことが生まれるのでは、と思いながら行ったプロジェクトでした。
 実際に16カ国ほど行きまして、この写真はマレーシアのランカウイ島、フィリピンのネグロス島などでの実践の風景です。

 

 これは、アムステルダムのロイド・ホテルのプロジェクトです。現地でセカンドハンドの材料を探し集め、畳マットのようなものを一度つぶして畳に仕立て直す、というようなことも行いました。
 こちらは、デザインマイアミでの展示でして、デザイナーのショルテン&バーイングスと一緒に行ったものです。彼らがデザインした有田焼の器を展示するために、写真のようなノックダウン式の茶室を造りました。実際にここで茶会を開催し、たくさんの方が参加してくださいました。
 次はバリ島での事例です。バリも日本も多くの島からできているということと、イザナギ・イザナミ神話のような日本の神話的なものを表現しています。日本建築では江戸時代くらいに雁行配置という、建物をセットバックして正面をずらしながら建てる様式が出てきますが、その要素を組み込んだインスタレーションを行いました。
 こちらは鯨の骨を加工したデザインでして、『エル・デコ』にも掲載していただきました。3DモデリングしたものをCNCルーターで削っていき、その後、手で研磨したり、ノミで面をとったりして仕上げた作品です。

 

 この写真は、日本橋コレドで最近完成したプロジェクトです。デンマークのスポーツブランド、ヒュンメルのショップをデザインしており、私がデンマークで北欧家具を作っていたこともあって、アンティークものの選定まで行わせていただきました。
 また、こちらはちょうど昨日プレオープンした京都のダンデライオンチョコレートの店舗です。ビーントゥーバー・スタイルのチョコレート専門店でして、デザートバーも併設しています。京都・東山の一念坂にある、築100年以上を経た文化財指定の建物をリノベーションした仕事となります。
 今まで私が手がけてきたものを適宜、割愛しながらご紹介しました。ここから、現在、AGC Studio 1階で展示している「GLASS/EDIDA ガラスで継ぐ伝統と未来」の話に移りたいと思います。

 

 今回、『エル・デコ』さんからご依頼をいただき、ガラスの可能性を広げる展示を考えてみました。“ガラス”というと、透明かつ硬質で、すごくきれいなものというイメージがあり、一方、もろい、割れやすい、重いということがあり、幾つかプレゼンテーションしていくなかで、いろいろな問題が立ちはだかりました。
 それをどのように乗り越えるかということで、ガラスは圧縮に対してとても強い特長があるので、それを活用して柱にだけ使い、上部には木造の加工を施した構造体を造ろう、ということになりました。なおかつ、木の筋交いが入っていて、万が一何かがあって破断した際には、筋交いでもたせるということを考えました。

 

 正倉院などにもガラス製の椀などがあり、日本では千何百年前からガラスが使われていますが、ガラスと木を組み合わせた建築はとても少ない。そこで、ガラスの柱に実際に荷重を持たせ、なおかつ空間として成立させることを考え、檜のフレームとガラスの柱で継ぐ、通称「佐野やぐら」を製作しました。
 また、「KANAWA」というスツールやテーブルにもなるオブジェを製作しています。元々、継手を透明で作ってみたいというアイデアを持っていて、今回、ガラスがテーマになったので、ご提案しました。
 写真にあるように、金輪継をガラスで製作しています。本来、中側にある見えない継手や仕口は少々あそばせて仕上げるのですが、今回は、透明素材であるガラスを使うということで、中側の全部が仕上がっている必要がありました。そのため、その技術を持っている職人さんと一緒に行い、かつ、一般的にはあまり使わない440角の檜を用いたので、岐阜に赴いて、木をひくところから始まりました。
 通常の木造建築と同様に、上下とも、ほぞを差し込んでおり、基本的にはささっているだけです。ガラスそのものをピンで固定したりはできないので、ほぞにささっていて、上の荷重でもたせている状態となります。

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